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2012年11月17日 (土)

根源的認識の理解、免疫系に見る

異種のカイメン細胞をまぜ合わせておくと、同種細胞どうしが別々に集合し異種細胞どうしは集合しません。この免疫系には、マクロファージだけでなく既にリンパ球の出現を感じます。動物の進化にともない、「近い非自己」を検知して排除し、その結果として体内に自己だけの存在を許すような役割を専門に分業する細胞、すなわちリンパ球が出現してくる…。

リンパ球といえば、ミミズ(環形動物)とヒトデ(棘皮動物)では、異種あるいは同種他個体から移植された皮膚に対して拒絶反応をおこすので、このあたりから進化してきたのではないかといわれているようですが、このリンパ球ですら、自己と非自己の認識については、マクロファージ的な認識方法をとっているようです。リンパ球の中のT細胞(特にヘルパーT細胞)について。(以下は多田富雄の『免疫の意味論』から抜粋です。少し長くなりますが…)
(結論的には多田富雄も、「自己と非自己」という捉え方はおかしい、「あいまいな自己」とか超システムとしての複雑系をとなえているようです…)

>T細胞は、直接的には「非自己」なる異物を発見し、それと反応することはできない。「非自己」には見向きもしない。「非自己」は「自己」の中に入り込み、「自己」を「非自己」化するらしい。…異物が入る。マクロファージが異物を取り込む。マクロファージの細胞表面にあるHLA抗原の一部(クラスⅡ抗原)は、特殊なやり方で細胞内に入り込み、ふたたび細胞表面に出て行く。マクロファージに取り込まれ部分的に分解された小さな断片がこのHLA抗原に結びつき、HLA抗原が表面に出る際にいっしょになってマクロファージの表面に浮かび上がる。これを「抗原レセプター」という分子で「非自己」として認識する。あるいはクラス1抗原の場合は、細胞内で合成される時に、例えばウイルスタンパクの断片はHLA抗原にくっついて、細胞の表面に出てくる。<

>何も結合していないHLA抗原だったら、「自己」と認めて無関心のT細胞が、異物が結合したHLAを見つけると、直ちに反応を開始する。このHLAに結合した異物の断片を認識するのは、T細胞表面のアンテナ「抗原レセプター(TcR)」という分子である。このレセプターは、異物の断片が取り付いた「自己」のHLA抗原を発見する。すなわち自己のマークであったHLAが、異物によって「非自己」化したのを認識するのである。<

つまり、「非自己」は常に「自己」というコンテキスト(文脈)の上で認識される。免疫は、『非自己』に対する反応系として捉えるよりは、『自己』の全一性を保障するために存在するという考えがでてくる…多田自身はそれだけでは語れないと思っているようですが。恐らく、どんどん(他の生命体。他の情報)取り入れて利用していく中で、生命体自らが秩序崩壊を起こす限界が生じたのだと思います。だから、より厳密に生命体内部の同一性を重んじるようになったのでしょう。しかしだからと言ってT細胞は他者を認識して排除の指令を出しているわけではない。つまり、T細胞の認識は同類が違うものに変わったことを認識して排除の指令をだすわけです。その意味では、同類(仲間)認識が第一であるというのはまさに根源的な認識として免疫系においても塗り重ねられていると思います。

この排除システムとしてはある意味では不完全な免疫であるが、それほど生命体にとって仲間組織(協同組織)が重要であったと言うことではないかと思います。その不完全さゆえにさまざまなウィルスの攻撃にさらされ現在困難な状況を生み出していますが、しかしまた乳酸菌や納豆菌などあるいはほとんどの大腸菌ですら人類は取り入れて利用し協同体をつくってきたという事実も重要ではないかと思います。それほど受け入れ戦略は根源的であるということ、そのための認識が根源にあるということ。

吉国幹雄

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