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2012年11月14日 (水)

「同類」を認識することが生物にとっては根源的

 >特に動物は、外部世界に対する認識機能を発達させていくが、かなり早い段階で同類他者を識別する機能が備わっている。<

 ほぼ同意見なのですが、同種(=仲間)の認識について、そのような機能に特化したとも言える免疫細胞の系譜から考えてみます。

 脊椎動物の免疫系細胞には、たぶんご存知でしょうが、異物を取り込んで消化・分解してしまう大型の食細胞である『マクロファージ』、自分の細胞の異変や発達未熟なものを見つけて破壊する『ナチュラルキラー細胞』、侵入物ごとに多彩な抗体をつくる『リンパ球(T細胞・B細胞)』の三つがあります。この中でマクロファージは、石野さんも例に挙げられているカイメンにも、鞭毛を失った食機能に特化した個虫として存在しています。免疫系細胞の出発点は、このマクロファージと考えるのが有力でしょう。

 マクロファージの起源は、旺盛な食機能を持ったアメーバ(単細胞真核生物)に求めることができるし、さらに遡れば、エネルギー効率を高めた好気性のバクテリア(真正細菌)がその前身と考えられます。

 次にマクロファージの『自他認識機能』ですが、同種か否かを認識するレベルで、「個体特異性」の認識レベルには到達していません。それどころか、同種や近縁種以外の粒子状の物体は、無差別にすべて攻撃します。このことから、マクロファージは、正確には同種だけを識別し、それ以外のものは厳密には識別したとは言い難いような乱暴な方法で攻撃対象と認識していることがわかります。

 したがって、「他者」という概念は、マクロファージ(つまり原始生命)にはふさわしくないように感じます。生命にとっては、もちろんまず自然環境を認識するのが第一ですが、「同類他者」ではなく、「同類」又は「同種」ないしは「仲間」の認識が最も根源的であると表現するのが適切だと思います。

 一方、同じく石野さんが例示されている2種類のカイメンの細胞をバラバラにした実験から、カイメンには「同類他者」を識別する機能も備わっていることがわかります。カイメンにはまだナチュラルキラー細胞もリンパ球も存在しませんから、この「同類他者」の識別は体細胞が主要に担っていることになります。「同類他者」を識別するということは、「個体」を識別したうえで(敢えて言えば「個体」を原点として)、「同類他者」を、そしてそれ以外の「異種」を認識するということだとも解釈できるのですが、生物にとっては「個体」よりも「種」が重要だ(又は先だ)という意見が多いようですし、私もその通りだと思います。

 確かにこの実験は、カイメンのような初期の多細胞生物の段階で、すでに一定の個体間格差が登場していることを示していますが、それは当然で、有性生殖がカイメンの少し前の原生動物あたりから始まっているので、有性生殖による個体特異性の発現を前提にした「同類他者」の識別機能もそれに伴って発達したはずです。やはり、発生論的には「同類他者」の識別は、「同類」の識別ほどは基底的でないということになります。ただ、その後の脊椎動物の進化では、「個体特異性」の認識の重要性が飛躍的に高まっていったということは言えると思います。このことは、逆説的には、性の格差も大きくなる方向で進化は進んだ可能性も示唆しています。

土山惣一郎

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