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2013年1月19日 (土)

セロトニンの不思議

日経サイエンス別冊の「進化する脳」で紹介されている記事です。

「ローリらは、セロトニンが霊長類の世界で、社会的地位と密接な関係があることを示した。群れ(社会集団)の中の雄のベルベットモンキーを研究したところ、5-HIAAというセロトニン代謝産物が低レベルのサルは地位が低いことが分かった。驚くべきことに、シナプス間のセロトニン濃度を高めるような薬をサルに与えたところ、そのサルの社会的地位にも影響を及ぼした。」

「数週間続いた一連の実験の間、雄の地位が変わる前には、決まって雌ザルとの付き合い方に変化が見られた。セロトニンを増やす薬を与えられた雄ザルは、雌ザルとのグルーミングによる交流がより頻繁になり、それに続いて、雌からの支持を得て、地位が高くなった。逆にセロトニンを減らす薬を与えられた雄ザルは、…(上記の反対で、引用者による省略)。地位の低い従属的なサルは興奮しやすく、他のサルに殴りかかることも多かった。」

要は、セロトニンが多いサルは社会(もちろんまず雌)に受け入れられて上位に立つが、そうでないサルは反社会的行動をおこしやすいということなのですが…。この手の報告には絶えず注意が必要で、サルがどのような環境(外部・内部)にあるのか、他の種のサルではどうであったのかなどなどの問題と、観察者の価値観(固定観念)の投影の問題がありますから。

ただ、この実験を一応現象的に認めるとして、また前回のセロトニンの基本的な働き「安定化(秩序化)ホルモン」であると考えた場合に、セロトニンの不足が活性状態(興奮状態)を作り出すことは予想されることです。セロトニンによる調節力が弱まれば、刺激が強くなり、危険と好機の両方に対する感受性がたかまる。

そして、感受性が強まると、不安やストレスなどを引き起こし、現代病といわれる、抑うつなどの気分傷害に繋がるのでしょう。おそらく、うつ状態とそう状態はセロトニン分泌の減少の程度によると私は思います。これは、一種のホメオスタシスではないかと思います。抑制物質が極端に少ないとそれを増やそうと興奮(活性)物質一気に増える。そんな関係ではないかと思います。

見方を変えれば、危機状況に対してはアドレナリン系の活性物質が働くと思いますが、それを誘導するのがセロトニンの減少ではないでしょうか。おそらく、これほどに古くから存在し現存する動物でも中枢で作動する根源的なホルモンであるセロトニン。
いまだ働いているということからも、進化と直結する働き、安定と活性に深く関わってきたのでしょう。そうすると、集団や社会の危機状況にあっては、集団としても個体としても、総体としてセロトニンが減少してくるというのは容易に予測されます。

そう考えれば、現代病は個体としては幼児期の親和欠損など子育ての問題によるところに原因を求められるかもしれませんが、種として見た時に、これほど、現代人が「うつ気質」になっていることは、まさに危機状況に瀕しているからと捉えられるのではないでしょうか。
だから、この現代病の現象からは、あとは危機逃避の回路が開くのを待つばかりということなのですが…。種々の問題はあるでしょうが、私はパラダイムシフトの期は熟してきたように思えます。

吉国幹雄

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