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2013年3月29日 (金)

嗅覚とフェロモン(2)哺乳類の性と縄張り

胎児では、生殖内分泌系の司令ニューロンが、まず鼻の原器に現れ、発生が進むとともに脳内に移動し、視床下部に落ち着く。このことは嗅覚と生殖の深い関わりを象徴しているように思われる。

哺乳類のフェロモンは無臭のものが多く、臭いが嗅覚細胞の刺激によって感じられるのに対して、鋤鼻器官という組織で受け取る。嗅覚細胞が受け取った情報は皮質領域に伝達されるのに対して、鋤鼻系の情報は大脳辺縁系や視床下部に直接伝えられ、本能領域で処理されている。

哺乳類にとって、意識化される臭いは食べ物や外敵にかかわる臭いであり、臭いとして感じられないフェロモンは性や育児という生殖行動の方に深く関わっている。

吉国さんの紹介にもあったように、交尾後の雌マウスが異なる雄のフェロモンに触れると流産する。交配相手の雄の尿にもこのフェロモンはあるが、雌はこれを記憶することで一緒に過ごしても流産は起こらない。

フェロモンによって縄張りを明示しているともいえるし、縄張りが確保できない雄の子孫は積極的に淘汰されるという徹底ぶりであるともいえる。多くの種の哺乳動物が行う尿による縄張りの告知もこれに由来するのであろう。

>淘汰過程が成体後に引き延ばされ、成体の淘汰を激化する必要から、哺乳類は性闘争=縄張り闘争の本能を著しく強化していった。実際、性闘争を強化した種の方が適応力が高くなるので、性闘争の弱い種は次第に駆逐されてゆく。かくして哺乳類は、性闘争を極端に激化させた動物と成っていった。(実現論 第一部前史 哺乳類時代の性闘争本能)

同類との情報交換のために使われたフェロモンは、哺乳類が先端収束した性闘争=縄張り闘争によって、生殖に特化されることとなった。鋤鼻器官は、それ以外には使われないために爬虫類よりは小さくなり、聴覚や視覚の発達にその境域を譲って行くことになったのではなかろうか。
 

石野潤

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