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2013年3月14日 (木)

哺乳類の外識機能と嗅覚

味覚や触覚が直接的な接触による感覚なのに対して、嗅覚、聴覚、視覚は離れた対象を認識する感覚である。自然環境の変化や有害物質からの回避、食べ物の選択や捕食者に対する防御、同類他者の発見や異性の誘引のためには、これらの感覚の発達が不可欠である。

視覚は光を捕らえ聴覚は空気の振動を捕らえるのに対して、においは空気中に揮発した分子そのものの刺激である。その意味では、接触感覚に近いとも言えるし、最も始原的な感覚器に近いのかもしれない。また、嫌な臭いも良い匂いも聴覚や視覚以上に強い印象を与え、深い記憶として存在する。

同じ化学物質の刺激である味覚と嗅覚は水中の無脊椎度物の段階では区別がなく、鳥類や昆虫類など視覚の発達した動物ほど嗅覚の発達が悪い。逆に、地上の哺乳類(特に夜行性)の動物にとって、嗅覚は大切な感覚器である。

特に、初期哺乳類の性闘争=縄張り闘争が、縄張りの宣言のための匂いづけや同類他者の侵入の察知、異性の発見という必要から発達してきたのではないだろうか。これに対して、霊長類はその生存の可能性を共認に委ねている。互いに相手を注視し続ける必要が、霊長類に特徴的に視覚を発達させることになる。

一説には、人間は10万のにおいを識別できると言われているが、においそのものを言葉にするのは困難をともなう。一方、「鼻につく」など人間関係の感情表現として(特に日本人は)良く使う。縄張り闘争由来の感覚なのかもしれない。

嗅覚と味覚は大脳辺縁系を通って大脳皮質に入る道と、視覚や聴覚と同じように視床を経て新皮質に至る道がある。前者が潜在意識の雰囲気を決定し、後者が顕在意識化される経路となっているようである。

人類にとって、観念が脳回路の先端機能であるように、視覚や聴覚が感覚の先端的な機能を担っており、言語中枢はその両者を結びつける位置に存在する。一方、古い感覚ともいえる嗅覚などは、直接的に視覚や聴覚と付き合わされてもいるが、より始原的な情動に深く関わっているようである。

石野潤

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