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2013年4月

2013年4月28日 (日)

性分化のパラドックス、その3(Yの淘汰)

性分化の意味は、既にこの会議室でも過去議論したところですが、簡単には「たえず、変動するため」であり、見方を変えれば集団(種)の維持(ひいては個体の維持)ということでしょう。生物学的な性の営みは受精(あるいは接合、あるいは融合・接触)ということであり、その性の営みを支えるための機能的な細胞が生殖細胞であり、個体の維持を支えるのが体細胞ということですが、この関係は不分離の関係(つまり一体の関係・協同の関係)であるという視点が、現在の進化論者や生物学者に欠けているのではないかと思います。

人間の場合は、Yだけでは生存できない、Yがあると男性型になるということと、Yが精巣を作るということはイコールではない。つまり、事実から言えることは、YとXがあって精巣が作られるということであり、XとXがあって卵巣が作られるということ。この共通なXがどのように両者に関わっているかは言及されていない!

少なくとも、遺伝子やホルモン(様物質)の働きが次々と明らかになるにつれ、すべて単独で存在しているのではなく、協同作業(相互作用・フィードバック・フィードフォワード・淘汰関係すべてを含んで使っていますが)を行ったり、カスケードを形成している事がわかります。さらに、遺伝子だけで決定されるのではなく、細胞内の基質の影響をも受けていることは明らかです。にも関わらず、Yがオス(精子を生み出す)を決定するかのような主張そのものが、究めて一面的な見方ではないでしょうか。その証拠に、なぜ卵巣を作るのにXが二つ必要か、について解明されていません。当然のことながら、このXがメス(卵子を生み出す)を決定するわけではありません。逆にいえば、次のようなことになると思います。

【人間において、XとYを別々に取り出してオス・メスを決定できないぐらいに、性は集団の維持・個体の維持と不可分である】

この不可分性に関連するのではないかと私が感じている現象があります。

「卵子の第二減数分裂が完了していないうちに排卵が起こるため、卵子の染色体数は23本ではなくその2倍の46本なのである。射精は精子の完成後(吉国注:精子の完成は思春期)に起こるのに対し、排卵は卵子の完成される以前に起こる。ではいつ卵子の第二減数分裂が完了するかというと、意外なことに、卵子が精子を受け入れた受精の時である。すなわち、精子が卵子を囲む顆粒細胞と透明体を破り、ついに卵子の細胞膜に届いたその瞬間、第二減数分裂を完了させるシグナルが発生するのだ(『生殖革命』生田哲:東京書籍)」

つまり、受精した瞬間には、精子は通常の半分の23本の染色体(常染色体22本と性染色体がXorYの1本)であるのに対して、卵子は22×2+XXで待ち受けているということです。受精を見届けてから、卵子の23本の染色体は極体として捨てられるというわけです。ぎりぎりまで、X単独にはならないということであり、一方精子の方はどうかというと、完成した精子は単独で存在しているのではなく、実は厳密には多角細胞として細胞膜融合を起してお互いに手を繋いでいるわけです。射精の段階で、ばらばらになり(つまり完全に性染色体一つになり)協同で卵めがけて必死(つまり、死を賭けて)に進むわけです。

それほどまでに、【XorYが単独で存在することが人類ではできなくなっている】ことを示しているのではないでしょうか。

しかし、またそれゆえに「Y」だけが、一時的にせよ単独になることに、決定的な意味があると私は思います。「Y」を含む精子は必然的に選択されるということ。つまり、「Y]が淘汰されるということであり、それは、「あいまいに選択」されるのではなく、億という単位の精子の協同作業によって、実現される淘汰適応そのものということに注目する必要があります。

【遺伝的性はYの淘汰によって実現される】

吉国幹雄

2013年4月25日 (木)

性分化のパラドックス、その1

性分化(オスメス分化)の適応戦略については、F因子なども含めてこの会議室でも議論したテーマですが、中々興味が尽きないですね、皆さん。実現論に以下のような記述があります。

>生物が雌雄に分化したのはかなり古く、生物史の初期段階とも言える藻類の段階である。それ以降、雌雄に分化した系統の生物は著しい進化を遂げて節足動物や脊椎動物を生み出し、更に両生類や哺乳類を生み出した。しかし、それ以前の、雌雄に分化しなかった系統の生物は、今も無数に存在しているが、その多くは未だにバクテリアの段階に留まっている。これは、雌雄に分化した方がDNAの変異がより多様化するので、環境の変化に対する適応可能性が大きくなり、それ故に急速な進化が可能だったからである。<(実現論1_2_00

ところが、

>人の脳においては、女性から男性へ分化するということですが、女性から男性への分化って、何のためなのだろう?と思ってしまいました。<(25196、長谷川さん)

人間の脳(体)は本来は女であるようになっていて、男性ホルモンであるアンドロゲンのシャワーによって女性脳が男性脳に転換するというような記述を見ると、まるで、オスはたまたまオスになってしまった付け足しのような…。雌雄の分化は必然であるが、♂の分化は♀の上に塗り重ねられている??

さらに、

>オスは、おそらく、淘汰される性なのです。肉体も行動も個体差が大きく、病気に弱い。オスは平均的にメスより脳下垂体前葉が大きく、もっぱら男性ホルモン(テストステロンなど)の作用でメスより攻撃性が高いといわれています。<(25213、蘆原さん)
 
人間のオス性を示す性染色体Yは本当に小さいですからね。Xに比べて遺伝子の数もうんと少ないようです。「オスは淘汰される性」とは、悲しいですね。オスはメスや集団を守るために淘汰される存在。まるでオスは死ぬために生まれたような…。片方の淘汰を持って、オスメス分化は必然??

やはり、何か性分化についての認識が間違っている、あるいは言葉足らずのように思います。まるで、性分化のパラドックス!!。


まずは、人間の性分化についてしっかりと状況を認識する必要があると思います。

「性染色体(XX,XY)の性別は受精のときに決定してしまうが、その他の性腺、内性器、外性器などの違いは、少なくとも個体発生の初期には男女どちらの方向にも分化しうる未分化型のものがどの個体にもあり、それが発生の段階で男性型か女性型かに分化してゆくことによって男女の違いができあがる。」(『脳と性』下河内稔:朝倉書店)

私はそもそも未分化の状態(A)をメスと捉えることが間違っているのではないかと思います。A→♂or♀であって、♀→♂or♀ではないことを、まず認識すべきでしょう。これは直観的に捉えて、「個体発生は系統発生を繰り返す」という点に関連させても、あるいは「生命体は進化積層態である」ことからも、メスを初めに置くと論理的にもおかしくなります。人間だけの問題ではありませんしね。

次回この点についてをもう少し詳細に述べたいと思います。


吉国幹雄 

2013年4月22日 (月)

雌雄分化の根源性

>またさらに複雑化したカタツムリも雌雄両方の機能を備えています。そして、私が一番気になったのは、わずかに触れられているだけでしたが、魚のことに関してです。確かに魚類は、後に両生類、爬虫類、哺乳類へと進化する前段階ですが、実に面白い種が多数存在しているカテゴリーでもあります。(25284本田さん)

生物において、栄養物の獲得と繁殖が適応を考える際に重要な要素であろうと思います。ゾウリムシなどの単細胞生物の有性生殖は、殆どは栄養条件に起因しています。栄養条件が良ければそのまま適応できるのに対して、適応不足が生じると有性生殖に可能性収束することになります。

また、サーモプラズマは栄養条件が悪くなると融合を始めます。粘菌性細胞は、栄養条件が悪くなると多細胞の移動体を形成します。そして、形成された多細胞で特徴的に分化しているものが生殖細胞です。これは、ボルボックスの群体における細胞の役割分化においても同様です。

単細胞生物の次代への可能性が有性生殖に委ねられ、原始的な多細胞生物の役割分化が生殖細胞であることが、最も深い位置での役割分化を示しています。単細胞の同類他者との協働も、細胞集団内での役割分化も生殖のために行われています。

>「魚のメスは卵を産み落とすだけで子育てなどしない」とありましたが、これは半分間違っています。魚でも子育てをする種はあります。ただしその場合はオスが多いです。また、魚は雌雄転換する種もいくつかあります。この性転換に関しても、メスからオスになるもの、オスからメスになるもの、あるいは両方など、種により異なります。メスがハーレムを作るものもあります。

魚類の例外的な事例でも、雌雄転換よりも卵胎生の魚類を探す方が簡単です。例えば、マンボウが2億8000万もの卵を産むのに対して、ニシンは10万で海草に付着させます。アイナメは6000の卵のかたまりを親魚が守り、ウミタナゴは30の卵をお腹の中でかえして大きくなってから産みます。

また、産卵数との関係は、当然のことながら生存確率の増大→親の生殖負担の増大傾向と一致しています。そして、これらの生殖負担は一般には雌が負っているといっても良いのではないでしょうか。

鮫はその字のごとく、交尾することで体内受精し受精卵を産卵するか、またはふ化させてから出産します。後者の方は、子宮内における共食いが知られており、母親の胎内で淘汰されます。(哺乳類とは異なる淘汰様式です。)

生物では一般的な形態や機能に対して例外は多々存在します。しかし、魚類から両生類、爬虫類と進化してゆく過程での意味を考える際には、特殊な条件下における多様な存在よりも、一般的な共通項と塗り重ねられた機能の方が、まずは重要ではないでしょうか。哺乳類以降の雌に、生殖負担が極端に大きくなっているという指摘はその通りかと思いますが。


石野潤

2013年4月19日 (金)

進化原理としての「性」

大江さんが言われる「お互いの特性」とは、「性」の中味のことを指しているものと解しました。(個性というのは個人の属性ですから、性を論じる際には不適と思います。)

「性」には本能としての側面と、(社会動物ならではの)共認や規範といった側面があります。そして、「性」の意味や本質を知るためには本来、生物史を遡って本能、あるいは進化原理としての「性」を考える必要があると思います。

生物が誕生してすぐ雌雄分化がはじまったと云われていますから、「性」は約35億年にわたり、「生殖」という生物原理の基盤であり続けています。簡単に言ってしまえば、藻のような単細胞生物が人類にまで進化したのは「性」、つまり有性生殖によるDNAの無数の組み替えがあったからです。

すなわち「性」は、生物(もちろん人類も含まれます)にとって、セックスや妊娠出産といった意味に留まらず、人類が人類となるため根底的な役割を担ってきたのです。そういった意味に於いても、「性差による差別」を言い立てて、ことさら「性」をタブー視する風潮は生物原理に反している、と云わざるを得ません。

ところで、「人間には知性や理性がある」として、本能をあたかもそれらと対立するもの、悪しきものであるが如く云う場合がありますが、「生殖」をはじめ、人類の極めて複雑な身体機能を制御・統合している本能を否定することの矛盾や欺瞞には注意する必要があると思います。

なお、本能としての性については、蘆原さんの投稿(17452)を参考にされると良いと思います。


鈴木隆史 

2013年4月16日 (火)

進化論としての性の問題

>私は、「個性は大事」とずっと言われてきたにも関わらず「人間皆平等、男女同権、性別では区別してはいけない」と言われ続けてきました。しかし、先日「男女は最大の個性」という言葉を聞き、まさしくそうだと思ったんです。(Msg:24750大江さん)

「自由」「平等」「個人」など近代思想が作り出した概念は、いたるところで矛盾と欺瞞を生み出していると思います。そして、一見価値観を排除したかのような学術分野にも大きな影響を及ぼしています。

進化論上では、性に関わる様々な問題に、コストや損得というような経済学的なアプローチをする学者が殆どです。市場原理という近代固有の尺度を生物史に当てはめて解釈しようという訳です。

その結果、有性生殖の進化がなぜ起こるのかが、未解決の難題となってしまいました。コストから考えれば、有性生殖が進化する理由がないのです。有性生殖の意義そのものを解決できないならば、始めに設定した経済学的アプローチの誤りや限界である事は自明です。

しかし、殆どの学者がそのように考えられない理由はただ一つです。市場原理を無前提に、かつ普遍的な原理であるかのように考えてしまっていること。その背後の、「自由」「平等」「個人」など概念に何の疑問も感じていないどころか、その価値観を肯定し研究に投影させているからです。

実現論にあるような雌雄分化の史実の中にこそ、「女性だからこそ持っている素晴らしい特性」も見出すことができるのではないでしょうか。

以下、実現論1_2_01より

生物が雌雄に分化したのはかなり古く、生物史の初期段階とも言える藻類の段階である。それ以降、雌雄に分化した系統の生物は著しい進化を遂げて節足動物や脊椎動物を生み出し、更に両生類や哺乳類を生み出した。

しかし、それ以前の、雌雄に分化しなかった系統の生物は、今も無数に存在しているが、その多くは未だにバクテリアの段階に留まっている。これは、雌雄に分化した方がDNAの変異がより多様化するので、環境の変化に対する適応可能性が大きくなり、それ故に急速な進化が可能だったからである。

従って雌雄に分化した生物は、適応可能性に導かれて進化すればするほど、必然的に雌いの雄の差異が大きくなってゆく。それは、雌雄が同じ役割のままでいるよりも、オスは闘争・メスは生殖という風に役割分担を進めた方が、より種としての環境適応力が高くなるからである。事実、生物は雌雄の差別化をより推進してゆく方向で進化してきた。

例えば脊椎動物の系統では、魚のメスは卵を産み落とすだけで子育てなどしないが、爬虫類になると卵を温めて孵化させる種が現れ、更に哺乳類になると胎内保育をし、その上かなり長期間子育てに携わる様になる。つまり、進化するにつれてメスの生殖負担がどんどん大きくなってゆき、そのぶん闘争負担は小さくなってゆく。他方のオスは、それにつれて生殖負担が小さくなり、そのぶん闘争負担が大きくなってゆく。

例えば哺乳類は、一般に内雌外雄の集団編成を取っているが、これは外敵には闘争存在たるオスが対応し、その集団(オスたち)に守られて生殖存在たるメスと子供が存在するという、外圧に対する二段編成の構造(=同心円の構造)である。だから、オスが子育てをする哺乳類など、殆どいない。

石野潤

2013年4月13日 (土)

『差異化統合』と『共認統合』と『概念化』

サルの『共認統合』は、吉国さんの言われる『同一化統合』や『差異化統合』をフル稼働させた果てに、その限界を超えて根源的適応欠乏が生起したのは『実現論』にあるとおりですが、原猿の共認の母胎である同一視が、それまでの最先端機能である『差異化統合』のさらに延長線上に開花したというのは、ちょっとおもしろい感じがします。

 おそらくサル・人類は、同一であることを認識するためにも、まずはとことん対象の差異を探索したうえで、初めて同一であると認定するようにできていると思われます。つまり、もともと本能にセットされたカテゴリー区分どおりに同一視するのではなく、同一と見なす最適のカテゴリー区分を発見することができるようになったということです。これらの探索過程で対象化された情報は一般哺乳類の比ではないほど多様で膨大でしょうが、これらが記憶回路に蓄積され、次に感覚器が捉えた新しい情報とつき合わせることで、『共認統合』の生命線とも言える共認内容の組替え(≒私たちが一般に呼ぶ『概念化』作業=新しいカテゴリー区分の措定)を可能にしているのではないでしょうか。

 真猿の『プラス統合』も皮膚感覚のプラス快感に連動したドーパミン系神経群の助けを借りながら、やはり探索機能の高度化の産物としての闘争系の課題(=同類圧力)を対象化するところから始まっており、種間闘争や序列闘争などの新しい集団様式をプラス(≒充足対象)として認識できるようになったことが『実現論』で提起されています。確かに、原猿ではあまり大きくなっていない大脳が真猿で飛躍的に巨大化していったのも、闘争系の課題を次々に見い出してはプラスの色を塗り込んでいくための記憶容量の大幅なアップが、絶対の条件になることも容易に想像がつきます。

 ところで、チンパンジーの大脳とネズミイルカの大脳を比べると、体重比ではネズミイルカの方がチンパンジーを上回っているのですが、大脳新皮質の構成要素である出力細胞・内在細胞・求心線維のユニット(コラムと呼ばれる)とその階層構造は、チンパンジーが膨大な数のコラムを明瞭に構成しているのに対して、ネズミイルカは未分化なままであるという報告があります。

 霊長類に至る大脳進化のポイントは、このコラム数とコラムの集合したフレームの階層構造の豊かさであり、一部の海生哺乳類を除けば大脳の大きさにも概ね比例しているようです。チンパンジーの大脳の特徴は、このコラム数の飛躍的増加以上に、階層間のシグナルのやりとりの活性化(≒『概念化』)が、それ以前の哺乳類の大脳容量との差の内実だそうです。


土山惣一郎 

2013年4月10日 (水)

哺乳類までの大脳進化と『概念化』or『差異化統合』

『概念化』と『意識の統合様式』の話、そしてその前の『捨てること』など、吉国さんの一連の投稿を興味深く読ませていただきました。そこで、哺乳類以前、サル、そして人類の順に、認識統合の進化について思うところを投稿します。

 概念についてですが、1800年代後半のリヒトハイムの中枢神経の言語処理モデル(言語障害の症例研究で提起されたもの)があります。

●聴性入力→【A:聴性入力分析中枢】→【B:概念中枢】→【M:音声出力発生中枢】→運動出力
 (【A】→【M】という経路もリヒトハイムは想定している)

 このモデルは脳の機能局在性に着目して想定されたものですが、『概念化』の過程に特別の中枢機能の存在を示唆しています。ところが、実際の言語障害は、上記の各中枢やその間を結ぶ経路の障害に対して、失語症パターンが1対1対応をする訳ではありません。特に、彼が想定した【B:概念中枢】の障害例と他の【A】などに障害をもつ例とで、ほとんど同じ症状を呈するものも少なくありませんし、【B】と位置付けられている部位の障害があるにもかかわらず、聴性入力理解=概念の理解は正確にできいるが、言語(主に名詞)が呼び起こせないという失語症のカテゴリーもあります。したがって、このリヒトハイムのモデルで言えば、【B】だけではなく【A】も【M】も『概念化』の機能を担っているし、大脳全体が『概念化』のための装置になっていると見る方が妥当だと思われます。

 『概念化』という機能を統合様式に置き換えると、吉国さんの言われるように、主に『差異化統合』だという認識はここで重要な意味をもつと思います。脳(特に大脳)の進化の要請とは『差異化統合』を推し進めることが適応していくために必須だったと言い換える方が正確かもしれません。

 『差異化統合』の前に『同一化統合』があるというのは、以前「進化論カテ」で免疫細胞(マクロファージ)の話題の際にも、自己同一性のみをマクロファージは認識して、その認識の埒外にあるものは無差別に攻撃するという事実から、単細胞段階でも『同一化統合』に近い認識スタイルは細胞膜の情報伝達機能として登場していたと言えると思います。

 個人的には、脳(≒大脳)の進化を最初に促したのは、この『差異化統合』ないしは『概念化』機能の高度化の要請だったのではないかと考えています。【概念化】≒【差異化統合】≒【大脳の発達】という捉え方は、脊椎動物の記憶容量の増大が、『同一化統合』では捨て去っていた細部を付き合わせる(シュミレーションする)ために必要だったからだと理解すればしっくり来ますし、もともとの山田さんのMsg23610の疑問に対するひとつの見解としては、哺乳類に限らず大脳を持った魚類にも、広義に捉えた概念らしきものは存在すると言ってもいいと思います(もっとも魚類や両生類のあたりは『同一化統合』を極限まで進化させることが大脳の役割のすべてだった可能性も否定しきれるものではないのですが・・)。

 さらに、爬虫類や哺乳類の『差異化統合』は、適応上重要な感覚器(爬虫類なら粘膜外皮、哺乳類なら臭覚など)の感受性と多様性を発達させることと、その感覚器が捉えた情報を記憶に留めシュミレーション能力を向上させることが具体的なポイントだと思います。つまり、探索機能や判断機能(これも吉国さんがすでに示唆されていますが・・)を高度化することで、縄張りや食料確保や外敵からの防衛などに対応するために、持っている本能行動の中からどれを選択するかを指令する必要が少なからずあったのでしょう。

 特に哺乳類では、塗り重ねられた様々な本能の発現を『差異化統合』という探索機能が司るしくみは、小型爬虫類に常に狙われる圧倒的弱者が適応していくという観点から、やはり不可欠であったであろうと推測されます。これが哺乳類一般(特にペット動物など)の学習能力の高さの母胎なのだと思われます。


土山惣一郎

2013年4月 7日 (日)

男女:本能より

この間の流れを見ていて、議論について一つ提案させていただきます。

まず、「婚姻形態を具体的にどうするか」といった議論は、人間(男と女)の本質をもっと掘り下げてから扱った方がいいような気がします。

人間の本能的な性というものの性質、共認や観念の及ぼす影響。人類の歴史約500万年(600万年?)の間、婚姻形態はどのようなものであったと推測されるか。その1%に満たない最近数千年の間に、婚姻形態はどのように変遷してきたのか。その変遷を促してきた集団・社会・経済的な背景は何なのか。それにより、人々の価値観や、セックスの充足がどんな影響を受けてきた可能性があるのか。

こういったことを、まずは押さえていった方がいいような気がします。

今の段階で、例えば将来の婚姻形態のあるべき姿などを話題にすると、現在持っているそれぞれ方の価値観に基づく主張の対立にしかならないような気がします。特に性にまつわる価値観の対立は感情論に発展しやすいような気がしますし。とにかく、結論を急ぐのはやめましょう。



まず、生物としての本能を押さえなおしてみます。動物は人間と違って下等なので関係ない、なんて言わないでくださいね(^_^;)。ベースとなる性本能を押さえて、そのうえに積み重なっている(積層構造)人間固有の部分を順に明らかにしていきましょう。

18696「具体的婚姻形態より本能の普遍性の抽出が先では?」にさわりだけ展開しています。

><オスについて>
>①メスよりオスの方が性欲が強い。種を複数のメスにばらまこうとする本能がある。
>②群での優位性(性行為の主導権)をめぐって、他のオスと競争する。
 群で暮らさない生物も、潜在的に他のオスとの競合関係にある。

これに、思いつく限り加えてみましょう。
 ③一般に、個体差がメスよりも大きい(例えば強い個体と弱い個体の差がメスよりも大きい)。行動様式についても、メスよりもバリエーションに富んでいる(いわゆる冒険志向から安全志向までいろいろな個体が同じ親からでもでてくるらしい)。
 ④幼少期の個体の死亡率が、一般にメスよりも大きい。ウィルス・バクテリアなどの病原菌にもメスよりも弱く、老化もメスより早い。要するに、免疫学的にも生命力からも、オスは死にやすい。
*③④は、いずれもマウスなどを使った実験で確認されています。
 


><メスについて>
>①メスは強い(生命力がある)と感じられるオスに収束する。
  - 要するに、オス同士の闘いに勝った個体に収束する傾向がある。
>したがって、それは一時的なもので、メスにとってもっと魅力のあるオスが現れたら、そちらに収束する。
  - 生涯固定は極めて例外的。
>②発情期があり、それ以外の時期は一般にオスを受け入れない。(チンパンジーとボノボは例外らしい)

 ③個体差が小さい傾向がある。行動もオスに比べ安定している。安全志向の傾向。
 ④生命力が一般にオスより強い。免疫学的にもオスより強い。しぶとい(^^;)。

蘆原健吾

2013年4月 4日 (木)

嗅覚はやはり特別です

>さて,ヒトではどうだろうか?

>ヒトの皮膚から抽出された物質があり,ボメロフェリン(Vomeropherin)と命名された。いくつかのタイプがあることがわかり,最近になってこれらの物質のひとつについて,構造が明らかにされた。PDDである。いわゆるプレグネノロン(ステロイドホルモンの生合成経路における重要な中間体)に大変よく似ている。PDDは今では合成されて,その機能は鋤鼻器の活動電位を誘起し,自律機能や脳波に影響を与えると報告されている。最近このボメロフェリンが入っているという香水が売り出されている。

>ヒトの鋤鼻系は胎児期には存在するが,大人では退化してしまって,存在したとしても痕跡程度であるとされている。ところが最近になって,ヒトでは鋤鼻器の存在はほぼ確かになってきた。しかし,鋤鼻器からの神経路が明確になっていない。とくに副嗅球が存在しない。したがって,これらの物質が,鋤鼻器で受容されたとしても,脳の神経路を経由して反応が引き起こされるのかいまだ不明確である。アンドロステノンやPDDなど,ステロイド系の物質が鼻腔などから直接血中に入り,その効果が表れる可能性も否定されていない。

>一方,ヒトでフェロモンが関与していることを示している生理学的証拠は「寮効果」である。女子学生が寮で共同生活をしていると月経期間が同期してくる現象で,これには彼女らが放出するフェロモンがかかわっているといわれている。さらに,月経周期を延長するフェロモンと短縮するフェロモンが腋嗅の中に存在することが明らかにされた。

>鋤鼻系神経路は高次機能を司る大脳皮質への情報の出力はなく,フェロモン情報のほとんどは,いわゆる本能行動をつかさどる視床下部へ送られる。したがって,仮に鋤鼻系が機能しているとしてもヒトはその感覚を匂いとしては知覚できず,“気づかないうちに”生理機能や行動が支配されることになる。

>社会生活のなかで,フェロモンによりヒトが無意識のうちに行動を操られているかもしれないと想像することは,何か恐ろしいような気もする。(中略)一方,最近,多くの消臭剤や脱臭剤を見かける。自分の体臭や口臭を気にしてのこと,また他人に迷惑を掛けないようにとの気配りからとも思われる。学問上はまだ不明であるが,もしヒトがフェロモンをケミカル・コミュニケーションとして利用しているならば,消臭剤等の使用はゆゆしき問題となる。男女間のみならず,母子間あるいは同性間のコミュニケーション,つまりは社会行動がうまくゆかなくなる可能性がある。(参照終り)

長くなりましたが,人工的なフェロモンシャワーの恐ろしさはヒトの根源的な共認機能を破壊してしまう可能性があるということです。人工的なフェロモン物質に頼らなくても,本来はヒトに備わった誘因物質があるはずです。その機能を阻害してしまっているのは,人間の観念ではないでしょうか。

仙元清嗣

2013年4月 1日 (月)

嗅覚はやはり特別です

フェロモンといえば、ホルモン進化というテーマでこの会議室でも追求してきているので、同じレベルでおくが深いかもしれません。が、私は臭覚から性行動・性回路の方に議論を少しずつ展開してみたいと思います。

石野さんや、村田さんが紹介されている嗅覚二つの処理系統があるようですが、匂いについてはいずれも視床を通らないのではないでしょうか。つまり、匂いを除くすべての感覚(もちろん外部)情報は、まず視床(適切な皮質領域と結ぶステーションのようなもの:すべての感覚情報は皮質に伝達される:)に向かうのに対して、匂いは直接的に大脳辺縁系や視床下部への直行ルートだと思います。脳の情動中枢(一種の欠乏中枢)に直行するため、匂いによって感情的な記憶がよみがえりやすいのでしょう。

なぜ、嗅覚は視床で色づけ(修飾)されないのか、という問題は既に話題にされたように、哺乳類にとって嗅覚が外識の生命線であり、これを発達させていったのが終脳(嗅脳)→大脳です。また、生命体にとって嗅覚は極めて根源的な感覚器です。それゆえに、嗅覚という外識がそのまま土台になっているからだと思われます。

また、匂い(→ホルモン信号)が食と性に直結するというのは当たり前のように思います。特にサルの場合の性行動は臭覚系が最大の発信源になっているようです。オスザルは発情期のメスザルの発するフェロモン(匂い)に反応する形で性情動が起こると言われています。あるいは性情動が起こっても、メスが発情しなければセックスに至らない。

ただし、サルの場合は他の哺乳類と違い、学習しないとセックスできないとも言われています。未体験のオス・メスをいっしょにするとメスの発情にあわせてオスも興奮するが、右往左往するだけで、どうしていいかわからない…。性的衝動や性行為中は他の哺乳類と同じく、サル・人類においても大脳辺縁系(視床下部)が活性化しているのが見られるのですが、このことは上位の大脳皮質や新皮質の制御と修飾を受けていることを示します。

次回から、オスメスの性回路・性行動についてもう少し詳しく触れたいと思います。
 

吉国幹雄

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