« 男女:本能より | トップページ | 『差異化統合』と『共認統合』と『概念化』 »

2013年4月10日 (水)

哺乳類までの大脳進化と『概念化』or『差異化統合』

『概念化』と『意識の統合様式』の話、そしてその前の『捨てること』など、吉国さんの一連の投稿を興味深く読ませていただきました。そこで、哺乳類以前、サル、そして人類の順に、認識統合の進化について思うところを投稿します。

 概念についてですが、1800年代後半のリヒトハイムの中枢神経の言語処理モデル(言語障害の症例研究で提起されたもの)があります。

●聴性入力→【A:聴性入力分析中枢】→【B:概念中枢】→【M:音声出力発生中枢】→運動出力
 (【A】→【M】という経路もリヒトハイムは想定している)

 このモデルは脳の機能局在性に着目して想定されたものですが、『概念化』の過程に特別の中枢機能の存在を示唆しています。ところが、実際の言語障害は、上記の各中枢やその間を結ぶ経路の障害に対して、失語症パターンが1対1対応をする訳ではありません。特に、彼が想定した【B:概念中枢】の障害例と他の【A】などに障害をもつ例とで、ほとんど同じ症状を呈するものも少なくありませんし、【B】と位置付けられている部位の障害があるにもかかわらず、聴性入力理解=概念の理解は正確にできいるが、言語(主に名詞)が呼び起こせないという失語症のカテゴリーもあります。したがって、このリヒトハイムのモデルで言えば、【B】だけではなく【A】も【M】も『概念化』の機能を担っているし、大脳全体が『概念化』のための装置になっていると見る方が妥当だと思われます。

 『概念化』という機能を統合様式に置き換えると、吉国さんの言われるように、主に『差異化統合』だという認識はここで重要な意味をもつと思います。脳(特に大脳)の進化の要請とは『差異化統合』を推し進めることが適応していくために必須だったと言い換える方が正確かもしれません。

 『差異化統合』の前に『同一化統合』があるというのは、以前「進化論カテ」で免疫細胞(マクロファージ)の話題の際にも、自己同一性のみをマクロファージは認識して、その認識の埒外にあるものは無差別に攻撃するという事実から、単細胞段階でも『同一化統合』に近い認識スタイルは細胞膜の情報伝達機能として登場していたと言えると思います。

 個人的には、脳(≒大脳)の進化を最初に促したのは、この『差異化統合』ないしは『概念化』機能の高度化の要請だったのではないかと考えています。【概念化】≒【差異化統合】≒【大脳の発達】という捉え方は、脊椎動物の記憶容量の増大が、『同一化統合』では捨て去っていた細部を付き合わせる(シュミレーションする)ために必要だったからだと理解すればしっくり来ますし、もともとの山田さんのMsg23610の疑問に対するひとつの見解としては、哺乳類に限らず大脳を持った魚類にも、広義に捉えた概念らしきものは存在すると言ってもいいと思います(もっとも魚類や両生類のあたりは『同一化統合』を極限まで進化させることが大脳の役割のすべてだった可能性も否定しきれるものではないのですが・・)。

 さらに、爬虫類や哺乳類の『差異化統合』は、適応上重要な感覚器(爬虫類なら粘膜外皮、哺乳類なら臭覚など)の感受性と多様性を発達させることと、その感覚器が捉えた情報を記憶に留めシュミレーション能力を向上させることが具体的なポイントだと思います。つまり、探索機能や判断機能(これも吉国さんがすでに示唆されていますが・・)を高度化することで、縄張りや食料確保や外敵からの防衛などに対応するために、持っている本能行動の中からどれを選択するかを指令する必要が少なからずあったのでしょう。

 特に哺乳類では、塗り重ねられた様々な本能の発現を『差異化統合』という探索機能が司るしくみは、小型爬虫類に常に狙われる圧倒的弱者が適応していくという観点から、やはり不可欠であったであろうと推測されます。これが哺乳類一般(特にペット動物など)の学習能力の高さの母胎なのだと思われます。


土山惣一郎

« 男女:本能より | トップページ | 『差異化統合』と『共認統合』と『概念化』 »

コメント

コメントを書く

(ウェブ上には掲載しません)

トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 哺乳類までの大脳進化と『概念化』or『差異化統合』:

« 男女:本能より | トップページ | 『差異化統合』と『共認統合』と『概念化』 »

Ranking

  • にほんブログ村 科学ブログ 生物学・生物科学へ お勧めサイトランキングへ
2020年8月
            1
2 3 4 5 6 7 8
9 10 11 12 13 14 15
16 17 18 19 20 21 22
23 24 25 26 27 28 29
30 31          

カウンター

最近のトラックバック

無料ブログはココログ