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2013年4月28日 (日)

性分化のパラドックス、その3(Yの淘汰)

性分化の意味は、既にこの会議室でも過去議論したところですが、簡単には「たえず、変動するため」であり、見方を変えれば集団(種)の維持(ひいては個体の維持)ということでしょう。生物学的な性の営みは受精(あるいは接合、あるいは融合・接触)ということであり、その性の営みを支えるための機能的な細胞が生殖細胞であり、個体の維持を支えるのが体細胞ということですが、この関係は不分離の関係(つまり一体の関係・協同の関係)であるという視点が、現在の進化論者や生物学者に欠けているのではないかと思います。

人間の場合は、Yだけでは生存できない、Yがあると男性型になるということと、Yが精巣を作るということはイコールではない。つまり、事実から言えることは、YとXがあって精巣が作られるということであり、XとXがあって卵巣が作られるということ。この共通なXがどのように両者に関わっているかは言及されていない!

少なくとも、遺伝子やホルモン(様物質)の働きが次々と明らかになるにつれ、すべて単独で存在しているのではなく、協同作業(相互作用・フィードバック・フィードフォワード・淘汰関係すべてを含んで使っていますが)を行ったり、カスケードを形成している事がわかります。さらに、遺伝子だけで決定されるのではなく、細胞内の基質の影響をも受けていることは明らかです。にも関わらず、Yがオス(精子を生み出す)を決定するかのような主張そのものが、究めて一面的な見方ではないでしょうか。その証拠に、なぜ卵巣を作るのにXが二つ必要か、について解明されていません。当然のことながら、このXがメス(卵子を生み出す)を決定するわけではありません。逆にいえば、次のようなことになると思います。

【人間において、XとYを別々に取り出してオス・メスを決定できないぐらいに、性は集団の維持・個体の維持と不可分である】

この不可分性に関連するのではないかと私が感じている現象があります。

「卵子の第二減数分裂が完了していないうちに排卵が起こるため、卵子の染色体数は23本ではなくその2倍の46本なのである。射精は精子の完成後(吉国注:精子の完成は思春期)に起こるのに対し、排卵は卵子の完成される以前に起こる。ではいつ卵子の第二減数分裂が完了するかというと、意外なことに、卵子が精子を受け入れた受精の時である。すなわち、精子が卵子を囲む顆粒細胞と透明体を破り、ついに卵子の細胞膜に届いたその瞬間、第二減数分裂を完了させるシグナルが発生するのだ(『生殖革命』生田哲:東京書籍)」

つまり、受精した瞬間には、精子は通常の半分の23本の染色体(常染色体22本と性染色体がXorYの1本)であるのに対して、卵子は22×2+XXで待ち受けているということです。受精を見届けてから、卵子の23本の染色体は極体として捨てられるというわけです。ぎりぎりまで、X単独にはならないということであり、一方精子の方はどうかというと、完成した精子は単独で存在しているのではなく、実は厳密には多角細胞として細胞膜融合を起してお互いに手を繋いでいるわけです。射精の段階で、ばらばらになり(つまり完全に性染色体一つになり)協同で卵めがけて必死(つまり、死を賭けて)に進むわけです。

それほどまでに、【XorYが単独で存在することが人類ではできなくなっている】ことを示しているのではないでしょうか。

しかし、またそれゆえに「Y」だけが、一時的にせよ単独になることに、決定的な意味があると私は思います。「Y」を含む精子は必然的に選択されるということ。つまり、「Y]が淘汰されるということであり、それは、「あいまいに選択」されるのではなく、億という単位の精子の協同作業によって、実現される淘汰適応そのものということに注目する必要があります。

【遺伝的性はYの淘汰によって実現される】

吉国幹雄

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