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2013年5月31日 (金)

生物多様性のなぞ、その実現構造1

蘆原さんの、徹底した「オスは悲しき弱体生物?」シリーズの最後の内容にも関するところですが、以前「可能性の蓄積をめぐる問題点」(28445)で提示した問題「生物多様性のなぞ」について。 

>オスの役目は、遺伝子の多様性のインキュベーターとしての機能(2887828903)+危険な時or病気でメスの代わりに死ぬこと(内雌外雄本能、遺伝病で死ぬことにより遺伝病因子を集団内に一定以上上昇させない)+オス同士の競争でメスに選択されたもののみ子孫を残せるということにより環境変化への適応スピードを上げること。ざくっと言うと、生を賭けた実験で新たな適応可能性を拓いていく、そんな風に捉えられます(メスはどっしりと安定して現状の適応状態を守る?)。<(28981、蘆原さん)

上記内容は、「性システム」と「性闘争(淘汰)」さらに「種という生物学的構造」に見られる、二つの相反する機能(多様性と同一性。あるいは活性と安定。)を示唆しています。「活性と安定」については、安定化のためには絶えず揺動(変異)する必然があると、過去何回か触れましたが、多様性と同一性についてはもう少し検討する必要があると思います。

例えば「性システム」。通常の有性生殖やF因子などにも見られるように、確かに「遺伝子組み合わせ」による多様化(へテロ化)が実現されます。しかし、このシステムは蘆原さんも指摘しているように、修復機能や再生機能という側面も非常に大きいわけです。その意味においては、「性システム」は種というレベルで捉えると「種の同一性を維持するためのシステム」、という意味が極めて強いわけです。種の秩序維持システムとして性システムがあるといえます。だから、現存する生物・種を観察すると「性のシステム」は極めて変動しにくいものとなっています。

それならば、多様な生物が生まれるためには、遺伝子(群)そのものが多様に変異すれば、その中で適応的なものだけが生き残り、多様な生物を生み出したのではないか、という考えがすぐに浮かびます。カンブリア紀の生物の多様性と、それ以前の多様な遺伝子変異はその正しさを予想させます…。が、細胞についての以下のような観察事実に注目する必要があります。

「培養によって人為的に細胞を増殖させると、本来細胞が持っていた染色体構成(染色体の数や形態)と異なる構成をもつ細胞集団が生じてくる。また、動物の細胞培養で本来の染色体を完全に維持している細胞株(クローン)が作られたとしても、一定の分裂回数に達するとクローン全体が死滅する。逆に、植物の細胞などは培養条件下で増殖だけを繰り返す細胞株を得ることができるが、『分化』する能力を既に失っている。

上記の解釈の詳細はここではおいて置くとして、バイオテクノロジーの基礎技術では、染色体の変化が集積するのを回避する方法として、細胞の組織化と再分化を早めに行わせることが取られているようです。つまり、培養条件下においても「組織化された状態」は、細胞の染色体がさまざまに変化するのを防ぐわけです。この状態を同一性(保存)と呼んでもよいし、個体や種の維持と捉えてもよいのですが、明らかなことは、生物が増殖されていくためには、細胞の分裂(複製)では完結せず、個体や種というレベルで初めて成立している。」(『進化1』東京大学出版会 4章.生物階層構造:山元皓二)

つまり、染色体(DMA)は絶えず変異しようとしているが、個体や種というレベルで同一性維持のために制御されているということでしょう。もしそうであれば、遺伝子変異による多様性は、個体や集団(組織)によって制御されるということになります。しかし、カンブリア紀における多様性は、どうも遺伝子変異の方が組織(個体・集団・種)変異よりも先に起こっているらしい。これをどのように説明するのか。


吉国幹雄

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