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2013年6月27日 (木)

生命の上陸作戦からのメッセージ、その1(「あわさ」)

村田さんの生命の地上への進出に関する三つの問題提起(31122)に対して、個間闘争圧力=活力について(31217)で前回述べさせていただいた。この「海から陸へ」という進化の流れは、系統発生上も個体発生上も自明のことであるが、確かに村田さんの仮説にも関連するが、この問題は、適応論上あるいは可能性収束論上も見直してみる必要があるように思われる。

さらに、この問題「海から陸へ」の進化は、生命体から捉えれば生物学的構造を変えて、あるいは旧機能に新しい機能を塗り重ねていって、新ニッチを獲得したということだが、生命圏という階層から捉え直せば、「海」という構造(海生圏)をきっかけにして、「陸」という新構造(陸生圏)が生み出されてきたわけで、現存の地球生命圏の登場という画期的な位置にある。

村上さん、山本さん、山名さんも意見を述べられているが、私の注目したいのはこの二つの構造を結び付ける「あわさ」の部分を巡ってである。

まず、植物史を大きく単純化すれば、藻類→コケ植物→シダ植物→裸子植物→被子植物という図式が描かれるが、4億年前、初めて陸地に進出したのは藻類、あるいはコケ植物(地衣類)であろう。村田さんの指摘する通り、現生種から古生種へとそのままスライドできないが、しかし現生種がより適応的であったことから考えれば、多くの重要なヒントを与えてくれる。

スギナに似たシャジクモという藻類がいる。海底に根らしきもので支え、水中で直立できるので、(海といっても大地は続いているので)、そのまま陸上へと進したという仮説を聞いたことがあるが、残念ながらこの説は陸生できる体へと進化した証が見つからないため否定されているようだ。ただ、このシャジクモは淡水藻である。

陸上への進化において、「淡水」ということは注目すべき点である。陸上の水はすべて淡水という当たり前のこともさることながら、現実に直接の上陸のきっかけと考えられる地衣類であるゼニゴケやスギゴケ。この現生種はすべて淡水生であり、海水生のものはない! 初期の植物の化石はいずれもかつて水辺であった所で見つかっており、それは「塩分濃度の高い海」ではなく「塩分濃度がゼロに近い淡水域」なのである。

次に脊椎動物史。大きく単純化すれば、魚類→両生類→爬虫類→(鳥類・哺乳類)という図式が描かれるが、3億年前陸上進出を成し遂げたものはもちろん両生類である。魚類から進化したと考えられるが、その過程を推察するのに最適の生きた化石として肺魚がいる。

肺魚の生息地は、湖や湿地帯であったり、いわゆる汽水域(海の水と川の水が交わるところ=海水と淡水の「あわさ」)であったりである。肺魚と言えば、食道の一部が膨らんだ原始的な肺を持っていることで有名であるが、この膨らみが陸上動物では複雑な血管で酸素を吸収しやすくした本格的な肺に進化し、魚たちは、空気の量を変化させて、浮力を調節する浮き袋へと改造していったと言われている。その意味で進化論上重要な魚であるが、…この肺魚は決して海水で生存しているのではない。

現存する化石や進化途中の現生種からいえることは、植物も、脊椎動物も海から直接上陸したわけではないようだ。その「海水と淡水のあわさ」の領域である「汽水域」を経て、あるいは「淡水と陸とのあわさ」の領域である「淡水域(塩濃度が極めて低い地域)」から上陸していったのである。

思うに、海から陸への適応条件(乾燥防衛、肺呼吸、対重力のための体を支える仕組み、温度変化、有毒物質アンモニアの処理)などなどを考えると、実にさまざまな困難課題が横たわっており、この海生圏と陸生圏とでは生命体にとってはまさにパラダイム転換(構造転換)であり、生殖構造も含めた新しい生命維持システムの転換が要求されただろう。

しかし、その転換は「あわさ」という海生圏と陸生圏の混濁した緩衝帯を通して行われているのである。つまり、【構造転換は決して不連続線なのではなく、それは連続した積層進化を遂げている。しかし、そのためには二つの構造の重なり合った「あわさ」を突破しなければならない】、それが生命の上陸作戦の第一のメッセージである。

参考資料:『生命40億年はるかな旅』(NHK出版)、『生命進化40億年の風景』中村運(化学同人)
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吉国幹雄

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