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2013年6月 6日 (木)

性システムと生殖構造との関係

>つまり、生殖過程での「卵」に対しても、全く違う適応圧力が加わってくると思います。<(29753、村田さん)

この点は同意です。ありとあらゆる生命体が適応態である限りにおいて、「卵」も当然自然圧力から種間圧力へという変動場に晒されるわけですから。

>何かと言いますと、「より大きな幼体で生まれる方が有利になる」ということです。
捕食、被捕食の関係は、単純化すれば、大きな動物が小さな動物を食べるという関係ですから、新しく生まれる幼体が大きければ大きい程、生存できる可能性が高まります。<(29753、村田さん)

この点がどうもすっきりしません。種間闘争の制覇力が(力の論理に基づいて)、「体の大きさに可能性収束する」というのは、生物の進化史を通して一般に言える事です。その根源的動因は真核生物に特徴的な機能である食作用でしょう。他の生物を「膜」を通して捕食するにはサイズが大きい方がよい、大きなサイズになるためには幼体は大きいだろう、というのは分かるのですが…。

幼体が大きければ大きいほど生きる可能性が高いというのは、短絡しすぎではないでしょうか。種間圧力が主圧力となっているわけですから、対敵闘争力の劣る幼体で、しかも体が大きいということは、逆に栄養豊富な餌になる可能性が高くなるのではないでしょうか。

人工飼育という特殊条件下の話にはなりますが、熱帯魚を私は飼っているのですが、エンゼルフィッシュが卵を産むときには、メスの回りには他のエンゼルフィッシュたちが待ち構えているのです。藻に卵を産み付けたとたんに、我先にと争ってその卵を食べます。他の熱帯魚は遠巻きにチャンスを伺っている感じです。おそらく、それでも淘汰されて生き残るものが(運も含めて?)強い卵として生存していくのでしょうが。体外受精においては、大きいということは目立つことであり、敵に見つかりやすい。だから、大きな卵の誕生はカンブリア紀から約3億年後の爬虫類誕生(体内受精という機能を獲得した)以降の話だと思います。

卵に殻を持たせ、卵自らの適応機能を高め(爬虫類)、さらにそれだけでは種間闘争に負けるので、親が関わるようになっていくという流れでしょう。親が育てるには大きすぎても大変(鳥類)、体内保育ではさらに小さくする必要がある(哺乳類)、という流れでしょうか。爬虫類の多様化の説明は、村田さんの話でかなりすっきりいくと思いますが。

>カンブリア紀の大爆発は、単に種の多様性をもたらしたのではなく、成体の生殖構造(雌の生殖負担増大)、そして幼体を庇護する「子育て構造」をも可能性(収束先)として成立させたといえます。<(29753、村田さん)

生殖構造が変化するという点は、生殖が種の存続に関わる根源的機能であるので、種(生物学的構造)が変わるためには、生殖構造・子育て構造が変化したから可能になったという指摘は正しいでしょう。また、一気に変わるためには、生殖においてもその変異可能性はすでに蓄積されていた、ということも十分に考えられます。ただ、「性システム」と「生殖構造」とを分けて押さえておいた方がよいと思います。

真核生物の出現は21億年前。多細胞生物の誕生が10億年前。カンブリア紀が5.9億年前。その起源はこの会議室でも議論したところですが、現在の哺乳類に通じる「性システム」は多細胞生物の出現、藻類において見られる「有性生殖」からでしょうか。

この遺伝子組み替えのシステムは変わることなく続いています。

性とは、単純化すれば遺伝子組換えの為のメカニズムであり、同一性を保持し、多様性を蓄積し生み出すシステムです。一方、生殖は新しい個体を作り出す事であり、性とは直接は関係なしクローンを生み出すことも含みます。たとえば、大腸菌でも、ある個体から別の個体へ性繊毛を介して遺伝子を送る事ができますが、この遺伝子伝達は生殖とは関係がないわけです。そして、この「性」と「生殖」とが合体したのが有性生殖です。性システムと生殖の二つの構造が合体して新しい「有性構造」を生み出したわけです。

もっとも、村田さんが指摘されるように、「生殖構造」の方は「場」に合わせて新しい付加構造を作ったり転換構造を作っていきます。しかし、生物史を見る限り、性システムの方は絶えずその生殖構造から離れることはありません。だから、「性システム」の方が生命体にとってより根源的な位置にあるといえるのではないかと思います。


吉国幹雄

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