« 2013年7月 | トップページ | 2013年9月 »

2013年8月

2013年8月30日 (金)

問題はそんな単純ではない>抗体受け渡し

「進化論」の会議室の大きなテーマは、生物の適応戦略や適応機能を進化的に明らかにすることで、現在の閉塞状況を突破するための何らかのヒントや答え(構造認識)を提示することにある、と私は思っています。

「免疫系の学習と獲得」(前回39816)は「免疫システムの遺伝と免疫系の連続性と多様性」を焦点に当てて、学習と獲得という視点で免疫系を捉え直しました。もともとは、個体における免疫系はなぜ遅れて(つまり、生まれてから)発達していく必然が進化的にあるのか、という問題から出発しています。従って、母乳に含まれる抗体と子どもの免疫の関係については、(細かい物質名に触れざるを得ないこともあって)、簡単にしか扱っておりません。

母乳と生まれてくる子どもの抗体関係(免疫発達)については、以下のサイトが分かりやすいと思います。

リンク

アレルギーに関する投稿も続いており、この問題は環境破壊(→肉体破壊・精神破壊)に直結する重要な現実的な問題だと思いますので、「科学論」の方で「アレルギー」問題を扱ったらどうでしょう。ただ、以下の言説についてのみ、若干意見と感想を述べさせていただきます。

>母子間における免疫受け渡し機構についてなんですが、もはや国民病と呼ばれるアレルギーを引き起こす抗体、あるいはアナフィラキシーを誘発する抗体までもが受け渡されるのでしょうか。仮に受け渡されるとすれば、その時期を特定すれば回避し得る問題だということになります。<(39918、水船さん)

まず、アレルギー問題を「どのように回避すればよいか」(方法論)に走ることは、問題の原因追求に蓋をした表層的な捉え方ではないでしょうか。なぜ「アレルギー」が起こるのか、なぜ近年それが大多数の人間の抱える疾患となったのか…。石野さんが(39960)で大きな問題として捉えた「免疫機能の暴走か?文明の暴走か?」という問題なのか。(直観レベルでは、自律神経などの免疫系のコントロールが狂ってきた。その原因が現在の統合不全によるところが大きいと思いますが)

また、アレルギーを引き起こす抗体IgEは胎盤を通して受け渡されるIgGの1万分の一しか存在しないと言われますが、そもそもIgGは進化的にどのような意味(役割)があったのか。アナフィラジー(即時型過敏症)がなぜ引き起こされるのか。ヒスタミンやセロトニンという毒性の強いアミン系物質が皮膚や鼻粘膜・血管で即時的に放出されるのは進化的に一体意味のないことだったのか。なぜ、それが現在問題になってしまったのか。(直観レベルでは、内外の圧力環境の変化→無菌化が一番大きいと思いますが)

いずれにしろ、これらの問題を仮説も含めて追求することこそが、まずは重要だと思います。


吉国

2013年8月27日 (火)

事実関係や当事者の格闘を参考にしてみて下さい(乳児アトピー)

やはり乳児の免疫疾患(アレルギー)は、発生しているようです。
これに対峙する方法は、母体側の努力(現在の豊かな食生活をぐっと我慢する)か代用ミルクを使用するか、2つしかありませんね。
(男のやや無責任な発言ですが、皆さんご容赦を)

乳児のアレルギーについては、気になったので、幾つかのサイトを調べて見ました。
2つの典型的なサイトを見つけましたので、参考にして下さい。

母乳育児と乳児アレルギーで格闘された
ナスフミヨさんのホームページURL
リンク

次男が、3ヶ月からアトピーを発現、かなり激しい「食物除去療法」をされた、格闘記です。

私が一番感心したのは、食物除去療法の経験を生かした「十勝発安心豆パウダー」という企画をされ、商品まで開発し、販売を始めた事です。
(私の娘も乳幼児の時、牛乳アレルギーで豆乳ミルクでしたが。)

もう一つのサイトは、ダイオキシンによる母乳汚染について、事実関係として疑問視しているサイトです。

ダイオキシンによる健康被害?!
リンク
「母乳育児への誘い」の中の長いコメントです。
リンク

Ⅱダイオキシンとアトピーの部分です。

環境派の先入観念から、調査データを一方的に解釈して、母乳育児の方が、人工ミルク育児よりアトピー発生率が高いと決め付けたというのが、経緯のようです。

ただ、明らかに母体汚染、母乳汚染は昔に比べ進んでいるでしょうから、ナスフミヨさんのような苦行になってしまう訳です。


村田貞雄

2013年8月24日 (土)

それは免疫機能の暴走か?文明の暴走か?

>母乳が乳児に成長に必要な栄養素を与えるという点、かつその中には初乳後数十日間経つと殆ど母乳に含まれなくなる成分もあるという点は留意すべきだと思います。むしろ、私は過剰反応する抗体を伝えないための乳母の必要性を感じます。
皮肉な話ですが、これからは多様化し暴走しだしたとも取れる免疫機能をどの様に抑えていくかが医療面での焦点になるのではないでしょうか。(msg39918水船さん)

乳母の必要性の前に、なぜ母親から抗体が受け渡されるのかを考える必要があるのではないでしょうか。胎児や生まれたばかりの乳児には、抗体を作る能力がありません。免疫系を持つのに生後6ヶ月から1年を要するといいます。

胎児は胎盤を通して母親から抗体をもらいます。乳児には母乳を通してということになりますが、初乳の時期を過ぎた母乳の抗菌活性は低いといいますから、初乳に含まれる抗体は重要です。

アレルギーに関わる抗体を排除することを考えても、初乳の乳母という想定は非現実的ですし、胎児期の影響は排除できません。それ以上に、抗体を作る能力のない胎児や乳児に母親からの抗体の供給を停止することは、自殺行為のようにも思えます。

免疫系は自分の体や自分の体に必要なものに対して抗体を作らないような仕組み(免疫寛容)をもっています。食べ物に対するアレルギーなども、この仕組みが上手く働かないために、食べ物に対して過剰な抗体を作ってしまう結果です。

免疫反応は、体を構成する細胞や物質、取り込むべき栄養を認識して、それ以外を敵として攻撃する仕組みです。アレルギー問題の根本は、免疫系の仲間の細胞や必要な物質を認識する能力の破綻の方にあるのではないでしょうか。

単細胞の段階から有している同類や栄養を認識する機能の上に、多細胞への道が開かれ、免疫系が構築されてきたとすれば、その認識機能の崩壊は生物として致命的な問題です。

そして、それらが農薬や薬品、溶剤などの人工物質に深く関わっており、プラスチックス製の器具や住環境などの快適さや利便性と不可分だとすれば、化学反応としての原因解明やその物質の排除にとどまらず、現代文明を導いた「豊かさ追求」の総括にも及ぶ問題です。


石野潤

2013年8月21日 (水)

母乳! 免疫系の学習と獲得

この間の「進化論」あるいは「科学論」の議論で、種々の「システム遺伝」と「学習の必要性」については共認された事項ですね。しかし、「免疫」については、生物(特に哺乳類)にとっては極めて重要な防御システムでありながら、【免疫系は個体発生後に完成される】。この進化論的意味を明らかにしたいと思っての前回39713の投稿でした。「免疫系」が個体発生後に完成する必然の根拠を探りながら、しかしどうも納得できない何か(システムを駆動させる中間項のようなもの)が抜けていた感じがしていたのですが、母乳ですね。

>例えば、母乳の中には、その集団内に棲息する細菌に対して生成した、抗原・抗体機反応の成果物・グロブリン等が含まれている。乳児に母乳を与えることで、この最終武器を受け渡し、乳児側の安全率を高めている。
そして、母乳の免疫成果物が徐々に減って行き、乳児自身の免疫システムの発現、学習が始動する。<(39790、村田さん)

免疫系の発現は遺伝的には以下のようにまとめられるでしょうか。

1.母体から胎児へ「免疫システム(免疫機能)」の遺伝。母体の免疫環境の遺伝。

母親の胎盤を通して受け渡される抗体の一部は、胎児を取り巻く内部環境物質となっており、それは母親の免疫系からの攻撃をも免れている。ということは、既にそれは胎児の先行免疫として作動していることになります。また、当然のことながら、母体は母体内部に免疫環境を形成しているわけだから、胎盤を通過する前にほとんどのウィルスや異物質は排除されていることになる。つまり、胎児は母体の免疫環境の中で守られているわけです。

2.出産後、母体から胎児へ母乳を通じて母体の獲得免疫物質が継承(遺伝)。胎児の「免疫系」の「学習」機能の発現。

赤ん坊は、1年間は風邪をひかない、とは昔から言われていることですが、これは母親の獲得した免疫物質を使って、「免疫系(環境)」が作動しているからです。この期間は母親から伝えられた免疫物質を使って、赤ん坊のおそらく胸腺で「免疫発現」を学習する期間と言えます。だから、学習が不十分であると、体の弱い子になってしまうのでしょう。

*人間だけでなく、先だってパンダ(超ミニサイズです)の出産でも母乳を受けなければウィルスに対する赤ん坊の免疫が作動しない様子をテレビで放映していました。母乳は形質遺伝・システム発現に本当に欠かせないものです。哺乳類にとっては、「出産後に伝える(遺伝)」というこの「哺乳システム」こそが、他の生物の持つ「遺伝システム」を越えた適応戦略と言えます。

*現在、『現代板の幼少青壮老』の方で、母親と育児のテーマが扱われていますが、集団の免疫システムを高める上では、必ずしも「生みの親」の母乳が外圧適応上よいかどうかは疑問です。「遺伝子組み替え」の多様性が「性システム」の本質であることを考えれば、「免疫システム」を母親から受け継いだ後の学習過程においては、他の母親からの学習のための免疫物質を引き継ぐことは、「多様性の戦略」としては優れたものになると思われるからです。

3.子どもの「免疫系」の「獲得」免疫の発現。子ども自身が内部に侵入してきた学習してきたことのない外敵・異物質に対して免疫システムを作動させる。

人間のすごいところは、「学習」に留まらず「獲得」することにあります。「学習」とは多様性から個別具体事例を選び出して定着させるという演繹性が生命ですが、「獲得」とは多様性から自ら普遍性を見つける機能性に価値があると私は思います。簡単には「創発」するということ。子どもの内部環境において、多種多様な抗体を試行錯誤的に作り出して、最適の「免疫物質」を獲得していく。そして、それをまた子孫に伝えていく、まさに「免疫の連続性」を感じます。


吉国

2013年8月18日 (日)

免疫システムを継承システム・学習システムととらえたらどうか

胎内での成長という生殖・発生機構を始めた「哺乳類」の免疫システムの進化についての試論を興味深く拝見しました。

胎内成長を行う哺乳類の発生過程と免疫システムの基本構造は以下の通りですね。

①細胞という超ミクロなレベルで見ると、母体の細胞タイプはA1タイプ、胎児の細胞タイプはA2タイプ(同じ種に属するので、Aタイプではあるが、厳密には同一ではない)。親子なので、A1とA2は共通性も高く、他人になるに従ってA30タイプとか、距離が離れていくと思ったらいいですね。(輸血の場合に、提供者を家族、親族に求めるのは、細胞タイプが近い可能性が高いからです。)

②免疫システムは、細胞レベルで、Aタイプとは全く違うDタイプ(細菌)とかZタイプ(ウイルス)とかを、敵・異物として認識し排除しようとする防衛機構である。そして、高度に発現するとA1タイプさえ、敵として排除してしまう。
これを、母体と胎児の関係で見ると、母体側から胎児を異物として排除しようとするシステムが稼動している事になりますね。

③これでは、胎児は発生していけないので、以下のようなステップを踏みます。
先ず、受精卵は子宮内で、独立して細胞分裂を進める。母体の子宮細胞とは直接繋がっていない(繋がると免疫システムの攻撃を受ける)。発生過程での呼称は「胎胚期」です。
次いで、胎胚の細胞数が飛躍的に増加して、機能分化を始め、胎盤を形成する。この胎盤によって、母体と直接接し、母体からの栄養補給、酸素補給を受けるようになる。(呼称は胎芽期)

この胎盤を形成する段階で、胎児側から母体の免疫システムをブロックする機能が胎盤(母体・胎児間)に形成される。
母体側には免疫機構の組替えとして跳ね返ってくるので、現象的にはツワリという細胞レベルの不全時期となります。

このような発生過程での現実から見ると、確かに胎児側の免疫システムが高度に発現してしまうと、胎児が母体を攻撃する危険があるので、胎児の免疫システムは、原基構造だけを作り込み、具体的な発現は、胎盤から離れる出生後となる。

「免疫系は個体発生後に完成される」の意味ですね。

胎児にとっての出産(胎盤から離れる)は、免疫系だけでなく、呼吸系、栄養系、神経系の全てのシステムを転換させる必要があります。
例えば、呼吸系では「肺呼吸」を直ぐに始めなければなりません。消化器系では、胃から栄養吸収に切替えなければいけません。
多分、神経・脳系でも、本格的な外界認識、神経ネットワークの関係形成、編成固定を本格的にスタートさせ、切り替えているはずです。

ですから、「免疫システムが出産後本格稼動する」「細胞レベルのシステムが、胎内と出産後とでは局面が違う」というのは、当然と言えば当然のような気がします。

それよりは、免疫システムは、敵(細菌・抗原)がいて、それに打ち勝つ事で免疫が固定する。(免疫システムの発現過程がスピードアップして、2度目には簡単に同じ細菌・抗原を排除できる。)
この、対象があって、細胞レベルの戦いがあって、その成果が固定するという「学習機能」が最も重要な事ではないでしょうか。

つまり、免疫システムが先ず立ち向かうのは、その集団内(集団の棲息する自然、動物、植物、そして同種自身)に存在する「細菌」である。免疫システムの学習と高度化は、所属する集団を基盤にしてを進めていくのです。

例えば、母乳の中には、その集団内に棲息する細菌に対して生成した、抗原・抗体機反応の成果物・グロブリン等が含まれている。乳児に母乳を与えることで、この最終武器を受け渡し、乳児側の安全率を高めている。
そして、母乳の免疫成果物が徐々に減って行き、乳児自身の免疫システムの発現、学習が始動する。
(だから、細菌感染による発熱は、乳児・幼児の免疫システムが反応し、学習している事になりますので、抗生物質で外在的に鎮静させることは、免疫機構の発現力を削ぐ危険性があります。)

哺乳類の免疫システムは、胎児・乳児の学習システムとも言えますし、集団・群れとしての経験継承システムとも言えると思います。

村田

2013年8月14日 (水)

生物の「柔軟性」ということ

「(役割)分化」によって「柔軟性」が失われる…「社会性昆虫」の行動、現在の人類社会に見られる専門分化の結果。…規制が強くなり自由度が下がり、膠着する…。なるほどと思いながら、でも何か少し妙な引っ掛かりを覚えました。

>役割分化という点からいくと、多細胞生物に比べ未分化ゆえの柔軟性のせいではないかと考えます。 複雑な機構を持つ(役割分化)ってことは、未分化ゆえの柔軟性との引き換えのような気がします。 <(39090、長谷川さん)

私は、「柔軟である」とは、外圧適応態として外部環境の変動要因に対して、「適応力が高い」ということが一番重要だと思います。

確かに、バクテリアの中には高温や高塩水で生存できるものがいます。しかし、彼らは環境が変われば生存できません。分化が進んだ鳥類や哺乳類は恒温性という体温維持システム構築することで、温度変化に対して他の変温動物や微生物よりも柔軟に対応できます。これは、日光についても同じで、ミドリムシは光情報の変化に対して反応しますが、(恒常的な)光に対して常時向いているわけではありません。ところが、多細胞生物となると日光に向かっていきます。植物の成長はまさにそうです。

つまり、いずれも「分化」によって獲得した高度な「統合機能」をもって、適応力を高めています。これは無限定とも思える環境変化に対して、柔軟に対応していると言えると思います。結局、生物は柔軟に適応するように進化していっているのではないでしょうか。

さらに、機能という観点から見れば、

分化前と分化後では獲得機能(適応)が異なるので、まず単純に個体の自由度(形態的変異可能性とか行動の許容度)が高いほうがよいとは言えないでしょうね。また、役割分化した細胞から捉えると、それぞれの細胞が担った特定の課題や部分的機能ではあっても、「生命現象においては、個の合算が必ずしも全体にならぬ」ように、統合されて生まれた機能が、分化される前の合算値以上の付加された機能を帯びている可能性は十分にあるわけです。分化統合されることで全体として機能的にも柔軟性が上昇する場合が多いのではないでしょうか。

上記の全体という視点に再度注目すれば、

私は進化の主体は集団(種)として捉えていますが、柔軟性は個体としてどうかという視点よりも、集団(種)としてどうかという視点も重要だと思います。冒頭の社会性昆虫の例えばハチやアリ。それぞれの個体は生まれた時から役割が決まって生涯固定でも、彼らを集団として見た場合は、環境変化に対する適応性は極めて高く、優れた柔軟性を持った社会だと思います。

生物進化をさらに大きな視点で捉えれば、

多細胞生物は最初の役割分化として生殖分化を行いました。さらに個体を越えて(個体差として)オス・メス分化を実現しました。オス・メス分化からさらに哺乳類においては、性闘争(個間闘争)という圧力場(活力場)を種(集団)内部に生み出しました。オスとメスの役割分化を進める方向で進化は進み、そのことが種(集団)としての統合力と適応柔軟性を一段と増していった。性分化を巡る、そんな進化の方向性が見えてきます。


吉国

2013年8月11日 (日)

多細胞における役割分化は、まずは生殖分化から

>単細胞が多細胞になって、更に各細胞が役割分化していった、しくみと理由がよくわかりません(DNA的に)。<(39028、中野さん)

超基本的で、かつ難しい質問です。単細胞から多細胞へについては、この会議室の(525952635395)などを参考にされたらよいと思います。単細胞生物→細胞集合(群体)・細胞融合→多細胞生物という大雑把な多細胞化の流れを頭に入れた上で、問題の細胞の役割分化について(DNAについては後述)。

【生殖細胞の分化】
群体から多細胞生物へ進化するときに、最初に生殖部が機能分化しています。つまり栄養部と生殖部の分化(生殖細胞と体細胞への分化)です。カイウミヒドラや粘菌(52935921参照)などはその代表ですが、群体のボルボックスにも生殖専用の細胞が分化しているのが見られます。多細胞化したとは、生物学的構造的には生殖構造が分化した、と言ってもいいと思います。

*細胞進化と多細胞化とはイコールではありません。ゾウリムシ(5825)は、単細胞生物であるにも関わらず、細胞内器官(細胞内機能分化)を最大に発達させています。もちろん、DNA量も多細胞並に多くなっているのですが、適応上必要な器官を一気に発現させるための限界点(組織論で言えば規模限界=統合限界に近いもの)、であるとも言えます。細胞自体を役割分化することによって、統合限界を突破したのが多細胞化の理由の一つになっているのでしょう。

なぜ、生殖分化したのかについては、「死の戦略」としてこの会議室でも議論してきたことですが、簡単には「遺伝」つまり、「種の保存=生の連続性」の実現ということが一番大きいと思います。栄養部(外圧先端の適応態)は死んでも、生殖部(近未来の適応態)を残すという生殖システムを作り上げたわけです。

【内外適応分化】
単細胞の時は、当然細胞は自然外圧を直接受けますが、多細胞化するということは直接外圧を受けない(最外側細胞によって守られる)細胞が出てきます。つまり、外部環境と内部環境とが分離されます。内部環境が安定する(圧力変動が少なくなる、あるいは安定した環境を維持できる=安定した化学反応の系が成立する)ことによって、重要な生殖部分を保持したり、代謝系の効率を上げたりすることが出来ます。内外適応分化によって、種々の内部機能を発達(分化・分業)させることが可能になったわけです。

また、多細胞化する=体が大きくなると、一般には種間闘争上は闘争態として有利になります。しかし、その大きな体を動かす活性化エネルギーは増大するわけですから、先ほどの内部機能の発達を促すことになります。また体が大きくなると(多細胞化が進むと)、各細胞間を結び統合するための情報伝達系・物質移送系の発達(分化・分業)も必要となるわけです。

また外圧に注目すると、体が大きくなるということは、重力に逆らったり、一気に水分を補給したり、適応するための必要な形態的要求も強くなりますので、(例えば植物で言えば、根・茎・葉の発達・分業化)、結果的には多細胞化によって形態の発達(形態進化)が進むことになります。

吉国

2013年8月 8日 (木)

再統合のために遺伝子は組み換えられた。

この遺伝子の多様化において、次に問題になるのは何故新しい遺伝子が登場する時期の特徴=何故新しい遺伝子を登場させる必要があったのか、である。

真核生物が登場する過程(②)では古細菌系統の菌類に真正細菌(バクテリア)が飲み込まれることから起こっている。その後も真核細胞は真正細菌を捕食し、あるものはミトコンドリアのようにこれを共生器官とし、独特のハイブリッドゲノムへと進化してきた。つまり一つの生命体の中に古細菌由来の遺伝子と真正細菌由来の遺伝子が混住するという事態を経ているはずである。つまり異なるものが混在し、それを再統合する必要から新たな遺伝子が作られていると類推できる。そしてその次の段階で、核、ミトコンドリア・小胞体・ゴルジ体などの異なる各機能を統合する必要が登場し、更に新たな遺伝子群を登場させたたということなのではないか?

また多細胞化(③)に伴う遺伝子の多様化も同様である。カイメンは多細胞とはいっても各細胞間の役割分化もない極めて原始的な多細胞生物である。そこで細胞間のシグナル伝達系の遺伝子が急速に発達したことから考えて、やはり多細胞間を統合する必要上登場したと類推される。

脊椎動物(④)については各組織・器官の独立性を高める必要、かつ各組織間の統合を図るという必要からほぼ機能的・構造的にほぼ同種の遺伝子を組織依存的に使えるように新生させたということなのではないだろうか。

いずれも大きく言えば多様化(分化的要素の登場・必要)に伴う統合のためと考えられる。(免疫系⑤だけは同じ原理で説明できるか、別の原理となるのかは、改めて考えたい)

次の投稿では、遺伝子の多様化(活性化)と機能的進化の発現の関係を、分子的仕組みという面から考えたい。
 
北村浩二

2013年8月 5日 (月)

機能進化は遺伝子の変化に直結していない。

本能進化と共認機能の関係が議論されている。少し遠回りになるがもともとは、サルにおけるアミノ酸置換のスピードの違いから始まった問題でもあり、分子生物学の基礎的事実から押さえていこうと思う。

近年の分子生物学(遺伝子の解析)によれば、生物史において新たな遺伝子が生まれる、あるいは多様化した時期(当然DNA変異も激しいと思われる)は特定の時期に偏っており、それは過去5回ある。
そして結論から言えば、その時期と生物の形態(種)の多様化=新機能の発現の時期は大きく異なっている。

まずは以下に遺伝子の生成や多様化の時期と形態変化の時期(新種の登場)の関係を示す。

①細胞の維持に必須な遺伝子(ハウスキーピング遺伝子)は真正細菌、古細菌、真核生物が分岐する以前に形成されており、すでに遺伝子重複によって多様化している。

②最古の真核生物が登場した約20億年前の前後に真核生物固有の遺伝子が形成され多様化している。その後約10億年間に渡り、真核生物は多様化してきたが、その間ほとんどこの類の遺伝子は新しく登場していない。

③動物固有の遺伝子は、最古の多細胞生物(カイメン)が登場する以前(約10億年前後)に多様化している。主要に細胞間のシグナル伝達系や形態形成に関わる遺伝子群である。多様化は約1億年間で完了し、その後カンブリア大爆発が6~7億年前に起こり節足動物が登場するなど生物界は一気に多様な種が登場するが、カンブリア大爆発の時期にはほとんど新しい遺伝子は作られていない。

④その後、組織特異的遺伝子(遺伝子系のサブファミリーに属し、機能的にも構造的にもほとんど同じだが、働いている組織が違うだけの遺伝子)の多様化が円口類(最も原始的な)と魚類が分岐する時期のあたりで急速に起こる(4~5億年前)。その後脊椎動物は多様に進化するが遺伝子の多様化はあまり起こっていない。

⑤脊椎動物でその後新しい遺伝子が作られたのは、血管やリンパ球内で働く免疫系の遺伝子のみである。(その時期はまだ明らかではないが、鳥類や哺乳類などの恒温動物が登場する頃と推測される)

以上の事実はまず、驚くべきことに遺伝子の多様化と形態変化(種の進化)が直接的に連関するものでは決してないことを示している。つまり本能進化においては、用いられる遺伝子は殆ど同じものを使っているがその発現の仕方(使われ方が)違うだけであるということを意味する。
>そこで次の仮説は、変異スピードの遅いDNA依存の進化の前に、解読システム変更による暫定適応の進化があるのではないかというものです。(本田さん38176

それが解読システムと呼ぶべきものであるかどうかはさておき、生物の形態変化は、遺伝子の変化によらないことがむしろ一般的なようである。つまり既存の遺伝子をさまざまな形で使う=「発現させる」(しかもおそらく試行錯誤的に)ことで生命体は急速な変化に対する適応を可能にしてきたのではないだろうか?

北村浩司

2013年8月 2日 (金)

本能・共認・観念が整合する地平

発達した脊椎動物においては、多数の細胞同士のネットワークを総合的に統合する役割を持つのが「脳」です。脳の発達が生物の適応可能性を格段に広げたといえるでしょう(DNAに違いがなくとも、外圧を知覚してホルモン状態→DNAの発現状態や、様々な生理機能の働く程度や、行動様式などを変えることで適応できる可能性が大きく開かれたという意味において)。

以前も何度か触れたことがありますが(17452など)、脳・精神と肉体の生理現象との深いかかわりについて、あらためて考えてみます。

脳全体は、脊髄から延髄・橋・中脳・間脳という軸をつくっています。さらに、間脳を取り巻くようにして、大脳皮質が存在するのですが、その内訳が前の投稿で触れた、「旧い脳(皮質)」と「新しい脳(皮質)」に分類されています。
(参考:人間の脳 リンク


魚や蛙などでは、旧い皮質がほとんどで、新しい皮質はヘビあたりからはっきり観察できるようになります。ちなみに人間では、新しい皮質が約90%を占めています。(「個体発生は系統発生を繰り返す」という生物学者ヘッケルの有名な言葉がありますが、脳の発生過程はまさにその通りという感じがします。リンク

旧い皮質は、大きくは食欲・性欲・群れる欲求などの本能的欲求、そしてその欲求が満たされた時の快感、満たされないときの不快感、そして恐怖や怒りなど、さらに記憶(「海馬」16225 長谷川さん)など、生命維持のための行動に欠かせない基本的な情動を司っています。これに伴う生理反応は、さらに奥にある間脳の視床下部と連動して創り出されます。

間脳の視床下部は、内蔵の機能をコントロールする自律神経やホルモンなど全身の生理機能を統合しています(38128)。

さらにそれより奥にある脳幹では、呼吸器や心臓、唾液などの分泌、筋肉の制御に関わっています。

間脳より下位にある中脳から延髄にかけて、脳幹網様態賦活系という組織が横たわっており、内臓やその他の感覚器官からの情報を、視床を通じて新しい皮質へ、視床下部を通じて旧い皮質へと経由しています。

意識・無意識に関わらず、強い欠乏や情動のほとんどは、これら全身・脊髄・脳幹~間脳(せいぜい大脳辺縁系、旧い脳)より湧き上がってきます。

哺乳類以降に著しい発達をみせるのが、新しい皮質。中でもサル・人類に著しく発達しているのが前頭葉ですが、ここが人間的な知性、思考、判断、意志、情操、創造などを主に司っているとされています(共認機能は、「旧い皮質」から「新しい皮質」にまたがって形成された機能と考えられます)。

実際に全身・脊髄・脳幹~間脳・大脳(旧い皮質・新しい皮質)は、互いに互いの情報をフィードバックし影響を及ぼし合っています。したがって人間の場合、本能から完全に自由な観念などありませんし、観念内容から完全に無縁な情動や生理状態もありえません。

「実現論」でも強調されていますが(実現論1_1_02)、人類の適応には、旧い適応形態の時代から貫徹されている本能と、共認や観念 が矛盾なく整合した状態が不可欠です。本能(サル・人類においては、加えて「共認機能」)の存在という事実を無視した、頭の先だけの観念(例えばキリスト教などの宗教や、現在の支配観念)が現在、人類の適応にとって大きな弊害になっている状況を見るにつけ、これら根源的な本能・共認レベルの事実を解明してそれを元にした上で構築された新しい認識(観念)がぜひとも必要だという思いがあらたになります。

蘆原健吾

« 2013年7月 | トップページ | 2013年9月 »

Ranking

  • にほんブログ村 科学ブログ 生物学・生物科学へ お勧めサイトランキングへ
2019年12月
1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30 31        

カウンター

最近のトラックバック

無料ブログはココログ