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2013年8月 5日 (月)

機能進化は遺伝子の変化に直結していない。

本能進化と共認機能の関係が議論されている。少し遠回りになるがもともとは、サルにおけるアミノ酸置換のスピードの違いから始まった問題でもあり、分子生物学の基礎的事実から押さえていこうと思う。

近年の分子生物学(遺伝子の解析)によれば、生物史において新たな遺伝子が生まれる、あるいは多様化した時期(当然DNA変異も激しいと思われる)は特定の時期に偏っており、それは過去5回ある。
そして結論から言えば、その時期と生物の形態(種)の多様化=新機能の発現の時期は大きく異なっている。

まずは以下に遺伝子の生成や多様化の時期と形態変化の時期(新種の登場)の関係を示す。

①細胞の維持に必須な遺伝子(ハウスキーピング遺伝子)は真正細菌、古細菌、真核生物が分岐する以前に形成されており、すでに遺伝子重複によって多様化している。

②最古の真核生物が登場した約20億年前の前後に真核生物固有の遺伝子が形成され多様化している。その後約10億年間に渡り、真核生物は多様化してきたが、その間ほとんどこの類の遺伝子は新しく登場していない。

③動物固有の遺伝子は、最古の多細胞生物(カイメン)が登場する以前(約10億年前後)に多様化している。主要に細胞間のシグナル伝達系や形態形成に関わる遺伝子群である。多様化は約1億年間で完了し、その後カンブリア大爆発が6~7億年前に起こり節足動物が登場するなど生物界は一気に多様な種が登場するが、カンブリア大爆発の時期にはほとんど新しい遺伝子は作られていない。

④その後、組織特異的遺伝子(遺伝子系のサブファミリーに属し、機能的にも構造的にもほとんど同じだが、働いている組織が違うだけの遺伝子)の多様化が円口類(最も原始的な)と魚類が分岐する時期のあたりで急速に起こる(4~5億年前)。その後脊椎動物は多様に進化するが遺伝子の多様化はあまり起こっていない。

⑤脊椎動物でその後新しい遺伝子が作られたのは、血管やリンパ球内で働く免疫系の遺伝子のみである。(その時期はまだ明らかではないが、鳥類や哺乳類などの恒温動物が登場する頃と推測される)

以上の事実はまず、驚くべきことに遺伝子の多様化と形態変化(種の進化)が直接的に連関するものでは決してないことを示している。つまり本能進化においては、用いられる遺伝子は殆ど同じものを使っているがその発現の仕方(使われ方が)違うだけであるということを意味する。
>そこで次の仮説は、変異スピードの遅いDNA依存の進化の前に、解読システム変更による暫定適応の進化があるのではないかというものです。(本田さん38176

それが解読システムと呼ぶべきものであるかどうかはさておき、生物の形態変化は、遺伝子の変化によらないことがむしろ一般的なようである。つまり既存の遺伝子をさまざまな形で使う=「発現させる」(しかもおそらく試行錯誤的に)ことで生命体は急速な変化に対する適応を可能にしてきたのではないだろうか?

北村浩司

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