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2013年9月22日 (日)

「免疫寛容」を通しての免疫の更なる意味

精神破壊と免疫不全と食性の変化ですか、村田さん。

>この50年ほどで、食性が大変化してしまいました。危機は、精神破壊と共に食性破壊ともなっていると思います。<

ところで、「自己免疫」は自らが引き起こす「同類圧力場」という意味合いが強いのではないかと述べましたが、免疫の不思議のもう一つの現象に「免疫寛容」があります。【免疫寛容】特異抗原に対して免疫反応を起こさなくなる現象。

「免疫寛容」と密接な関係があると思われる「経口トレランス」という療法があります。自己免疫疾患やアレルギー性疾患に対する最近の一つの治療法です。抗原を飲食すると、過剰な免疫反応を防げるという一種の逆療法です。

例えば、マウスに、ニワトリの卵白からとったアルブミンを千分の一mgを注射すると、アレルギー反応を起こす。ところが、数ミリグラムの卵白アルブミンを前もって飲ませておくだけで、同じアルブミンに対して体は免疫反応を起こさなくなる。マウスはアルブミンを異物と認めなくなるわけです。免疫寛容となる。どうやら「消化管」が何か特殊な働きをするらしい…食性問題とも繋がるところかと思います。

考えてみれば、雑食動物である人間。すごい雑多な種類の食物をとっているにも拘らず、人間の血液中には食物中の抗原に対する抗体はほとんど流れていません。現在食べ物に対するアレルギー問題が起こっていますが、それでも多くの人はアレルギーを起こしません。しかし、それは血液中に抗原が入ってこないのではなく、抗体が作られなくなっているのです。極めて寛容です。直接的には、消化管付属のリンパ管において、免疫を抑制するサプレッサーT細胞を刺激して増加させているようです。

ところで、抗体には五つの種類があるのは、この会議室でも何回か紹介されたとおりなのですが、抗体の総重量を比べた場合に一番多いのは、血液中のIgGや村田さんも紹介された魚類などの初期の抗体と言われるIgMではなく、圧倒的にIgAが多い(IgGの100倍)です。(ただし、IgAは血液中にはほとんどない)。IgAは今の消化管粘膜や生殖器の分泌液・涙・唾液・乳汁など、外界と接する管の粘膜に張り巡らされた抗体です。
その働きは、大量に存在する有害な抗原を中和し細菌が過剰に増えるのを押さえることにあるようです。

人間も含めて多細胞生物は消化管を中心軸に進化していった生物です。この消化管は一種の外界です。外の世界と直接に繋がります。様々な微生物や異物が集まってきます。種間闘争圧力が高くなっている場といってもいいと思います。それゆえに免疫系も神経系も、この消化管を中心軸に高度化して適応機能を高めていったと思われます。

免疫寛容、そして粘膜のIgAの存在と働き。それは、排除し拒絶するには圧倒的な多種多様な敵の多さであったから、生物はやむなく中和(協定)という妥協戦略をとらざるを得なかった、という見方も成立するかもしれません。しかし、無菌飼育動物では免疫系の発達が遅れ、抗体濃度も低いというだけでなく、消化管そのものの発達が阻害されるそうです。消化系の構造を作り出すには、現存する生物にとってはこれらの微生物は必須であったと言わざるを得ないのです。つまり、進化において、生命を脅かす異物は速やかに排除するが、しかしよりその他多くの微生物を共存させて協同者とする柔軟な戦略をとった者が生き残り、適応進化してきたと言えるのではないでしょうか。

だから、免疫とは非自己(異物)を排除するという意味だけでなく、他者を積極的に受け入れ協働者にするという重要な意味があるのではないでしょうか。そして、村田さんが言われる「食性が大きく変わった」とは、抗原が多様化したのではなく、適応(共存も排除も)不能の異質の人口抗原が増えてきたということと、無菌化の流れの中でむしろ抗原減少により、免疫の意味が失われてきたということではないでしょうか。

そしてそれは、結果的に消化系・免疫系・神経系の発達を遅らせるという悪循環におちいってしまっていると思われます。
吉国幹雄

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