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2013年9月 4日 (水)

アレルギー発症の根本原因の追求(環境要因、その1)

40177)で少し触れた「環境要因」について考察します。私は、環境要因といっても、三つの(大きくは二つの)異なる位相を孕むと思います。

1.人工物質(人工抗原)の増大
2.環境ホルモンの影響
3.奇妙な内外環境

まず、1.2(まとめると化学物質の影響)について考察します。


1.【人工物質(人工抗原)の増大】

生命体は自然環境に存在する外敵(有機体)に適応するために、生命体の表面及び内部の免疫系を発達させてきました。最初の多細胞レベルから備わっていると思われる自然免疫(例えばマクロファージの食作用)も、進化と共に、特に脊椎動物以降備わった獲得免疫(例えば、抗原抗体反応)も、全て自然の営みの中で生み出されてきた微生物(生命体)を対象化して獲得された適応機能の一つです。自然環境に存在する非生命体(化学物質)に対しては、例えば嫌気性生物が酸素を避けて生存しようとするように、本来はそれぞれに最適なニッチを求めて移動(逃避)したり、すみ分けていったと思われます。つまり、免疫系とはそもそも、生命に影響を与える非生命体に対して、それを取り込んで適応できるような機能としては発達していないのです。

ところが、「近代科学」の発達以降、人類は生命体が創出できない化学物質を身の回りに作り出してしまった。あるいは、大気汚染に代表されるように自然環境そのものを人工環境に変えてしまった。あるいは、ブナ林を伐採し杉林に変え自然の生態系を変えてしまった。人類を取り巻く自然外圧は、今や人類自らが生み出した人工外圧と言ってもいいような環境に変化しつつあり、(外敵もどきの)人工抗原を多量に生み出してしまったのです。

人類の体は、過去の生命体が塗り重ね進化させてきた免疫適応機能をフルに使って、わけのわからない微生物に適応できるように出来ています。しかし、この人工抗原は人類にとって逃げようにも逃げられないわけのわからない非生命体です。人工抗原に免疫適応しようと免疫系は活性化するが、十分に適応できずにいる、それがアレルギー発症の環境要因の一つの位相です。


2.【環境ホルモンの影響】

人工的な化学物質(特に環境ホルモンと呼ばれる性ホルモン様物質)が、免疫系そのものの機能を低下させている疑いが濃厚です。代表的なところで、ダイオキシンや有機塩素系殺虫剤・ビスフェノールAなどがあります。

詳細な仕組みは、私には、(というか環境ホルモンが生命体に悪い影響を与えるということが漸く最近になって科学者も政治家も認めたという状況ですので、そのメカニズムの解明など遅々として進んでいないのでしょうが)、よくわかりません。しかし、これらのホルモン様物質が生命の適応機能を攪乱するというのは容易に誰にでもわかることです。我々の体における認識機構は、免疫系も神経系も消化系も全て、サイトカインなどのホルモン様物質を認識(情報)物質として使っているからです。細胞や組織を興奮させたり抑制したりと、ありとあらゆるところでホルモン様物質が使われているのですから。

特に、性ホルモンと免疫系の発達とはかなり密接な関係があると思われます。論理的にはやや遠いところからの、傍証事例かもしれませんが、「胸腺」の発達と退縮があります。

胸腺は最近になって免疫学では特に脚光を浴びている器官です。詳細は省略しますが、代表的なところでその働きは、T細胞の教育(つまり、生まれてきたT細胞を淘汰して免疫適応できるT細胞を送り出すこと)に関係する器官です。ところが、胸腺は思春期の十代をピークに、どんどん年をとるにつれ退縮して脂肪の固まりとなっていきます。(もちろん、完全になくなることはありませんが…)。老人に新しい胸腺を移植すると、一時的に免疫機能を回復することも知られています。免疫系と切っても切れない関係のある極めて重要な器官なのです。

この胸腺は人間だけでなく、多くの生物において、性成熟とともに退縮していくようです。おそらく性成熟の頃に免疫系の基本システムが完成するのではないかと思います。(「進化論」会議室で問題提起した(39689)の「人間の性成熟年齢の遅延」とも関係あるのではないかと私は思います。つまり、人類の場合は他の動物よりも免疫系の基本システムの完成に時間がかかるというのが、性成熟を遅らせている一つの理由ではないでしょうか。)

このことは、直接的には性ホルモンの分泌によって免疫系の発達が押さえられることを意味します。だから、幼児期や思春期に性ホルモン様物質が体内に吸収されると、システムの誤作動を起し、免疫系が十分に発達しないまま終わってしまうという危険性があるのではないでしょうか。

環境ホルモンによる免系そのものの発達の攪乱、これが第二の環境要因の位相です。

吉国幹雄

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