« クジラ目への進化の第一歩は、生存闘争の敗退から始まった。 | トップページ | クジラもやはり逆境で進化している »

2014年4月 6日 (日)

海に還った哺乳類(1)

1.海生哺乳類進化の2系統
哺乳類の海への回帰は、これまで大きくは2度起こったと考えられる。一つは、クジラ類(クジラ、イルカ、シャチなど)のグループ。もう一つは鰭脚類(アザラシ、アシカ、オットセイ、トド、セイウチなど)のグループ。このことは、次のような違いから推定される。

①骨格の違い:現存するクジラ類の尾びれは尻尾が変化したものであるのに対し、鰭脚類の尾びれは後ろ足が変化したものである。
②化石年代の違い:クジラ類の最古の祖先または海生への中間形と考えられる化石は、約5千万年前の地層から、鰭脚類の最古の祖先と考えられる化石は、約3千万年前の地層から発見されている。
③出土場所の違い:上記化石は、前者はパキスタンやエジプトで多数発見され、後者は北米で主に発見されている。
つまり、約5千万年前にクジラ類の祖先が南方で海に回帰し、次いで約2千万年後に鰭脚類の祖先が北方で海に回帰した、ということになる。

※他にゾウの仲間と考えられている海牛類(ジュゴン、マナティ)があるが、祖先の化石年代は約5千万年前、主出土地は南方(アフリカ)であるため、クジラ類と概ね似た経緯での回帰と考えてよいと思う。

2.クジラ類の海への回帰(約5000万年前~)
恐竜を絶滅させた6500万年前の隕石衝突による寒冷化が一段落し、5800~5000万年前は気候は温暖化、海面は上昇した。赤道上にはパンゲア大陸の南北分裂でできたテチス海(古地中海)があり、陸地では絶滅を生き延びた食肉類(ネコ科の祖先)、顆節類(現在の有蹄類の共通祖先)、肉歯類(絶滅した肉食種)の3つの肉食グループが生息していた。食肉類は後に犬やライオン、熊などに進化するが、当時は2~30㎝ほどの雑食性で、最も広い地域に分布していた体長1m強の肉歯類が制覇種だったと考えられる。彼らに追われた顆節類の一派がテチス海の河口付近でクジラへと進化する。おそらく、内陸の水辺にはワニや体長18mのニシキヘビの仲間もいたため、逃避先は汽水域しか無かったのだろう。

その後、四足で陸と海を行き来していた5200万年前のパキケタスから、4900万年前のアンブロケタス、4700万年前のロドケタス(いずれもパキスタン出土)といった中間形態を経て、約4500万年前のバシロサウルスでは体長も20mとなり、完全に水棲に移行した。この約700万年の間に、鼻孔の後方への移動、前足と尻尾のヒレ化、後足の退化、体型の流線型化、体毛の消滅など海生適応へ向けた身体変化が成されている。

田中素

« クジラ目への進化の第一歩は、生存闘争の敗退から始まった。 | トップページ | クジラもやはり逆境で進化している »

コメント

コメントを書く

(ウェブ上には掲載しません)

トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 海に還った哺乳類(1):

« クジラ目への進化の第一歩は、生存闘争の敗退から始まった。 | トップページ | クジラもやはり逆境で進化している »

Ranking

  • にほんブログ村 科学ブログ 生物学・生物科学へ お勧めサイトランキングへ
2020年8月
            1
2 3 4 5 6 7 8
9 10 11 12 13 14 15
16 17 18 19 20 21 22
23 24 25 26 27 28 29
30 31          

カウンター

最近のトラックバック

無料ブログはココログ