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2014年9月 6日 (土)

哺乳類の摂理について【1】

 もともとの週刊朝日からの質問状(150312)にある『雌雄の生態は哺乳類の中でも個々の種によって様々。∴母系制は哺乳類の摂理ではない』いう見解は、ちょっと表面的かつ乱暴だと思います。

 摂理や法則を論じる以上、もっと緻密に哺乳類の生態や習性、さらには進化系譜を観察する必要があります。そのポイントを以下に記します。

【1】哺乳類の共通の祖先と言われる原モグラ(現在の食虫目に似た姿形や生態を持つ)は『単体型』。『単体型』の哺乳類はメス同士でも性闘争or縄張り闘争を行っている。しかしその後の適応放散過程で数多く登場してくる『集団型』ではメス同士の性闘争は見られなくなる。一方、発情期におけるオス同士の性闘争は例外なく存在する。

【2】『単体型』『集団型』にかかわらず、オスの縄張りはメスの縄張りよりも広域。また妊娠期間や授乳期間中のメスは巣から離れず、食料確保や巣の防衛は主にオスの役割になっている。

【3】『父系制』を採っているチンパンジーとリカオンは、いずれも大型集団を形成できるレベルにまで進化した種。両者とも移動生活(≒行軍生活)を営んでおり、その結果、外敵や同類との生存競争が熾烈。

 性闘争本能は集団や群れを形成するうえでは、一種の欠陥本能として作動します。それが『単体型』の哺乳類の特徴とも言えます。しかし集団や群れを形成するのは生物一般にも広く見られる重要な生存戦略ですから、その後の哺乳類の進化過程では、まずメスの性闘争を抑止することで群れを形成するようになったらしい痕跡が色濃く見られます。ちなみに、俗に言う高等哺乳類のメスは、生後の授乳だけではなく狩りや危機回避の教育なども行うのはよく知られた事実ですが、妊娠期間~育児期間中は、少なくとも子供に対しては性闘争本能が発現しないようにオキシトシン他の親和物質が分泌されます(これが世間で言う母性本能です)。

 この間、オスは食料の確保や防衛のために、巣から離れずにこの母子集団と生活を共にします。

 このように、胎内保育機能に不可欠な親和物質を利用してメスの性闘争を抑止できたからこそ、母子集団の形成やメスが複数いる集団の形成が可能になりました。さらには、この母子集団を庇護するオスの本能の強化も、集団形成上は不可欠のポイントです。これらの過程を経て、『単体型』から『集団型』への進化が可能になったのが哺乳類の特徴です。

土山惣一郎

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