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2014年11月 8日 (土)

生殖細胞と体細胞の分化(保存と仕事の分化)

多細胞生物の物の生殖細胞は、どんな体細胞にでもなれる「万能性」と生命を次世代に繋いでいく「継続性」を担い、体細胞は特定の機能だけを発現させる「特異性」と一世代で所定の分裂を経て消滅していく「有限性」を担う細胞である。多細胞生物は、この2つの細胞の役割の協働によって、生殖と進化のサイクルを繰り返していると言える。生物はどのようにしてこのような役割分化を獲得したのか。

原核生物の段階ではこの2つは一体であり細胞は無限分裂を続ける。真核単細胞生物のゾウリムシ段階では、この2つの役割が、一つの細胞の中の小核と大核という形で実現されている。

ゾウリムシの小核は、通常の代謝や単純な細胞分裂の際には殆んど働いていない(157918)。これは、有性生殖≒継続性を担うため、タンパク質合成への関与を減らしていることを意味する。例えばヒトの体細胞でも一つの細胞につき1日に5万回~50万回もの損傷が起きている(それらは修復酵素により即時に修復される)158352。分裂や代謝は、想像以上に細胞の破損に繋がる危険な行為だったのだろう。

多数の原核生物を取り込み、機能が高度化した真核生物では、修復酵素の能力限界を超える損傷リスクが高まり、それを回避するため、保存・継承を担う細胞を分化したのだと考えられる。それがゾウリムシの小核であり、多細胞生物の生殖細胞である(例えばヒトの卵母細胞も、胎児の時代に必要な分裂を済ましたあとは卵子になるまでは分裂しなくなる)。

一方、この損傷リスクを避けられない代謝や分裂の過程では、分裂回数を制限する機構を組み込んだ。その一つが、多細胞生物の体細胞に見られるテロメアである(但し、ゾウリムシにはテロメアの無い種もあるので、これだけが分裂制限機構の本質ではないと思われる)。

分裂回数の制約を受けた体細胞は、一世代での消滅を余儀なくされる代わりに、生命の継続性を生殖細胞に託すことで、様々な遺伝子の機能発現を試すことが可能になったのだと思われる。そのようにして獲得されたのが、“ゲノムマーク”157872の制御と解除によって多様な組織をつくりだす多細胞生物の体細胞の仕組みではないだろうか。

さらに、これに生殖細胞の減数分裂システムが加わって、生殖細胞は保存(継承及び小変異の蓄積)、体細胞=仕事(代謝及び小変異の発現)を分化することで、多細胞生物は現在のように多様な進化を遂げたのだろう。

田中素

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