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2014年11月23日 (日)

免疫機能に見る雄雌の役割分化

>オスは基本的に脆弱です。「脆弱?オスは大きいし強いやんか!」と思われるでしょうが、乳児死亡率が高い、病気に弱い、栄養をとらないとすぐ死ぬ、とどれをとってもメスより不利です。(3295

病原体に対抗する免疫系に不可欠な13個の遺伝子は、X染色体上にある。
免疫系の抗体を作る「B細胞」が正常に成熟する為には、X染色体にあるBtk遺伝子と呼ばれる遺伝子の働きが必要であり、また「B細胞」に指令を与える「T細胞」が正常に成熟する為には、X染色体にあるIL-2受容体共通ガンマ鎖遺伝子と呼ばれる遺伝子の働きが必要不可欠である。

X染色体を一本しかもたないオスは、X染色体の遺伝子に異常が生じると、即座にその影響を受け、免疫機能に障害を生じる。
医学的な統計データとしても、(特に幼児期は)男は女よりも感染に弱く、熱を出す回数が多いことが解っているし、風邪からエイズに至るまで、感染症全般において、男性の方が感染しやすいことが解っている。

このことから考えると、オスはメスよりも肉体的に脆弱で、”不適応態”のように思われる。なぜオスは、生命活動上不可欠である免疫機能に「脆弱性」を有しているのか?

>従って生物は、一方では安定性を保持しつつ、他方では変異を作り出すという極めて困難な課題に直面する。その突破口を開いたのが組替え系や修復系の酵素(蛋白質)群であり、それを基礎としてより大掛かりな突破口を開いたのが、雌雄分化である。つまり、雌雄分化とは、原理的にはより安定度の高い性(雌)と、より変異度の高い性(雄)への分化(=差異の促進)に他ならない。従って、雌雄に分化した系統の生物は、適応可能性に導かれて進化すればするほど、安定と変異という軸上での性の差別化をより推進してゆくことになる。(実現論1_2_02

オスの免疫機能の脆弱性も、「安定度の高い雌と変異度の高い雄」と言う役割分化の上にあると考えられる。
我々自身が身をもって知っているように、病原体・ウィルスは、常に変異していく。その為、肉体の免疫システムで対応しきれない状況は頻繁に発生する。これは「固定的な免疫システム」では、適応して行けないことを意味し、病原菌・ウィルスの変異に適応して、免疫機能も塗り替えていく必要があると言うことである。

これは仮説だが、雄の免疫機能の脆弱性は、この変化していく病原菌・ウィルスに適応していく為のものではないだろうか。
すなわち、オスは免疫機能の脆弱性と言うリスクを抱える一方で、病原菌・ウィルスに「感染すること」で、免疫機能を塗り替えていく。その為に、雄は安定的なX染色体の免疫機能の半分を失ったのではないか。

遺伝子的に見れば、安定的なX染色体の免疫機能に対し、変異(活性)的なY染色体に変異を起こすことで、外圧(病原体・ウィルス)に適応する新しい免疫機能を獲得していくのではないかと考えられる。
このことは、チンパンジーと人類を比較した場合、人類のY染色体にチンパンジーのY染色体には存在しない、免疫系に関与する活性遺伝子「CD24L4」をもっていることからも仮説立証できる。(参考:リンク

こうしてオスのY染色体が獲得した免疫機能は、減数分裂による相同染色体の組み換えによって、X染色体の免疫機能へとフィードバックされ、種全体として免疫機能が塗り替えられていくと考えられる。

参考:Newton 2006年2月号

西谷文宏

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