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2015年1月13日 (火)

なぜ、女性は男性よりもの免疫力が高いのか?

 例えば昔から「女の子より男の子を育てる方が大変」と言われているように、女児より男児の方が感染に弱いです。出生直後の男女比は、女児100人に対して男児105人と多いのも、感染症による男児の死亡率が女児よりも高いためであり(数年後にはほぼ同数になる)、この事実から見ても女の免疫力が高いであろうことは推測がつきます。

 また、臓器移植をすると女性の方が早く拒絶反応を起こすとも言われています。これは、臓器という異物に対して、リンパ球のT細胞が敏感に反応するからです。同様に、微生物が体内に入ってきた時にも、女性の方がすばやく排除できます。抗体をつくる能力(リンパ球のB細胞)も女性の方が高いようです。これもまた、女性が男性よりも、免疫細胞であるT細胞・B細胞が活発に働いているためです。
 そして、これらの免疫反応の男女差については、ホルモンと関係があることも分かってきています。(女性ホルモンのエストロゲンはマクロファージという免疫細胞に作用して、その働きを活発にすること、男性ホルモンのアンドロゲンは、免疫反応を抑える作用があり、同時にT細胞を育てる胸腺という免疫臓器は思春期以降、だんだん縮小していくことが分かってきています。)

 さらに、X染色体には、免疫機能に関係するDNAがたくさんあるということが分かってきていますが、これもまたメスの方がX染色体が2つあるために、オスよりも2倍の適応可能性がある(母親由来と父親由来の両方の免疫系DNAが発現可能)ことになり、事実、前述のように女性の方が免疫力が発達しています。

 では何故、女性が男性よりもの免疫力が発達しているのか。

 オスメス分化という進化の過程で獲得した役割特性は「変異と保存」(変異と保存の分化、これがオスメス分化の原基となる。166118参照)です。これを念頭において免疫機能を眺めてみると、女性が男性よりもの免疫力が発達している理由がよく分かります。
 女性の免疫機能が低下するのは妊娠中だけで(父親由来の遺伝情報を持つ胎児を、異物とみなさないようにするため)、それ以外は、女は徹底して遺伝情報の保存(安定)に努めるよう、免疫機能も外敵からの防御に徹して作動しています。

 一方、先の事例のように男性は感染に弱いのですが、これを「感染」と見るのは、現代特有の偏見に他なりません。
 「変異」の可能性という視点で捉えれば、オスの免疫機能は、細菌・ウイルスへの抗性を高めることで進化を試みているとも言えるし、また他の生物の有用な機能を体内に共生させることで進化の可能性を探り続けているとも言えるわけです。
(「種の保存」を目的とした役割を前提に考えれば、その過程での感染→死亡も重要な機能の一つです。)

 免疫機能の性差も、変異と保存に貫かれているように思います。

山崎許子

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