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2015年1月28日 (水)

免疫の進化史を読み解くために不可欠な構造論的視点

免疫機能の高度化の歴史について、基礎的な事実が明らかになると同時に、全体を論理的に理解するためには構造論的な視点が不可欠であることに改めて気づかされました。

1.「免疫は個体の自己認識機能」というドグマから解き放し、「生命体=膜の認識機能は同類認識を原点に進化してきた」という視点から再考する。

一般的には、(先天的に攻撃対象が決まっている)自然免疫から(後天的、学習的に攻撃対象を決定する)獲得免疫へ免疫系は進化したというふうに蓋然的には理解されている。しかし、獲得免疫が進化すると同時に進化していくNK細胞やMHCは先天的要素が強く、免疫細胞を単体として理解したのでは、理解しきれないどころか免疫の本質を見誤るように思われてきました。おそらく、免疫を個体の自己認識機能に限定的に考える学会の傾向が、弊害になっているのではないか。免疫進化の原点は膜の持つ同類認識機能にあり、との視点から免疫進化を種進化、群進化の中に位置づけて見直す必要があるのではないでしょうか。5384

また「自己同一性とは対象同一性」との認識も、免疫の高度化を理解する上では重要な切り口になると考えます。94248

2.免疫進化を「外圧適応態」そして、「分化と統合」という視点から再考する

既に113729 でも指摘されているが、各段階でどのような外圧(逆境)が免疫進化を促したのか、を抑えていくことが重要になる。

そのベースになるのが動物系統の進化は摂食機能の高度化を基本としているという点であろう。そこでなんでも食べてしまう長い消化器官、俊敏な手足といった体細胞の分化が進み、同時に神経系による統合を図っていった。しかし、神経細胞は分裂増殖しないという性質、つまり統合機関でありながら、その部分部分は高度に専門分化されてるという性質を持っており、これはウィルスに弱いという弱点構造を生み出してしまいます。そこで、体中のいたるところにより高機能な安全装置としての免疫が必要になったのだと考えられます。41424

神経系統はヒエラルキー構造を持った指揮系統に近いのですが、指揮系統は権力へと堕落しやすいために、そのような汚染を防ぐべく、全員参加or下からのチェックシステム(例えば社内ネットのような)が必要であり、それが生命体においては体中にくまなく広がる免疫系である、という組織論的なアナロジーも成立するかもしれません。

まずは、体腔動物段階までの摂食機能の中核をなす消化器系の進化と、そこで働いている腸内共生と免疫の関係(10438)は解明すべき、ポイントのひとつになると考えられます。

続いて脊索動物以降では捕食=運動機能を高めた神経系統と免疫機能の関係を、さらに解明していく必要があると考えます。

進化史上の最後の難問は、両生類における免疫寛容の獲得、そして哺乳類におけるMHCの多様化ではないかと考えられます。この免疫系の最新2大進化については、1点目、2点目の認識を総合的に活用することで、初めて整理することができるように思われます。

そしてこれらの免疫の進化史を総合的に捕らえることができるようになれば、現代の免疫不全、アレルギーetcの現代病が免疫という自然の摂理に対してどのような位相にあるかは自ずと理解され、私たちはこれからどのように病気や老化と付き合っていくべきか、ということも理解されるものと考えます。

山澤貴志

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