マクロファージの系統進化
●原生動物 小圷敏文 |
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●原生動物 小圷敏文 |
植物にもウイルスに対する免疫のようなものが存在するが、その機構は動物とは異なっている。まだその全容は明らかになっていないが、現在わかっている範囲で簡単にまとめてみたい。 dou |
■「免疫細胞誕生の秘密」 丸一浩 |
「免疫細胞誕生の秘密」に私も参加しました。疑問もいくつかでてきましたので、投稿します。
●疑問
①B細胞とヘルパーT細胞が抗体の設計図をつくるとのこと。
⇒では、「設計図」とは具体的にどんな仕組みなのだろうか?
②植物には免疫機能と呼べるほどのものはないとのこと。
⇒外から体内への異物侵入があるのは植物も同じはずである。にもかかわらず植物が動物ほどの免疫機能を構築しなかったのは、なぜなのだろうか?(構築する必要がなかった? それはなぜ?)
③『なんでや劇場資料36』「多細胞動物の進化と免疫機能の獲得状況」をみると、運動機能が向上するほど免疫機能が高度化している。
⇒それはなんで?(免疫機能を発達させざるを得ない外圧構造があったのではないか? それはどんなものだったのか?)
★②③は、「外から体内への異物侵入⇒免疫機能の発達」という生物学の常識が間違いであること、少なくとも一面的であることを示唆している。これが今回の最大の気づき。
④最後に。
「感謝は万能薬」という言葉は、感謝することで免疫機能が正常化する→自然治癒力が高まるということをも含意していると思うが、感謝することで免疫機能が正常化するのはなぜなのだろうか?
冨田彰男
インフルエンザは、規模に違いはあるが、毎年流行する。
これは、インフルエンザウィルスの表面タンパク質の抗原性が毎年少しづつ変化する為に、人が持っているウィルス抗体では、対応しきれない為である。
このように、ウィルスは単に増殖するだけでなく、遺伝情報の組み換えによって変異する。遺伝情報とそれを包むタンパク質=カプシド及び脂質二重層=エンベロープ(カプシドのみのウィルスも存在する)しか持たないウィルスは、当然生殖によって遺伝子が組み変わることはなく、以下の2つの仕組みによって、変異が引き起こされる。
1.コピーミスによる突然変異
通常の生物でも、遺伝子には様々な要因によって突然変異が起こる。
一般的に生物の場合、遺伝情報複製時のコピーミスと、紫外線・化学物質などによる情報破壊によって、突然変異が引き起こされる。
しかし生物にとって、突然変異が適応的である可能性は極めて低い為、損傷を修復する修復酵素によって、変異した遺伝情報は修復される。修復酵素によって、生物の突然変異発生割合は、概ね1/100億にまで抑えられている。
突然変異は、遺伝情報を持つウィルスでも生物と同じように起こる。
しかしウィルスは、生物と違って複製された遺伝情報に誤りがないかどうか調べるチェック機能(校正機能)も、修復酵素も存在しない。
その為、ウィルスは遺伝子の複製過程において、突然変異が大量に生じ、コピーミスに起因する突然変異の発生率は、30%にもなる。
2.複数のウィルス混ぜ合わせによる変異
2種類のウィルスA・Bが同一細胞に感染した場合、それぞれのウィルスの遺伝情報が混ぜ合わさり、全く新しい別のウィルスCが発生することがある。こうして誕生したウィルスCは、ウィルスA・B両方の遺伝子を持つことになり、結果ウィルスを包むカプシドも、両者の特徴を併せ持つことになる。
ウィルスは、カプシド又はエンベロープから突き出た表面タンパク質=スパイクを、細胞表面の受容体に(鍵のように)結合させ、細胞内へと侵入する。スパイクが細胞の受容体に適合しない場合、ウィルスは細胞へと侵入することはできない。
ここで
ウィルスA:非常に凶暴な感染力で、人類の受容体に適合しない
スパイクを持つウィルス。
ウィルスB:感染力は非常に弱いが、人類の受容体に適合する
スパイクを持つウィルス。
とした場合、A・Bの混ぜ合わせによって誕生したウィルスCは、Aの特徴である凶暴な感染力と、Bの特徴である人類の受容体に適合するスパイクを持つ可能性がある。
このような混ぜ合わせによって、これまで人類に感染しなかった凶暴なウィルスが、突然人類に感染するようになる。現在既に東南アジアで発生している、H5N1ウィルス=所謂強毒型鳥インフルエンザの人類への感染は、このような経緯で鳥から人へと感染した恐れが高いと考えられている。
こうして発生したウィルスは、それまでの人類の抗体では全く対応できず、その為に、爆発的な感染(パンでミック)を引き起こす可能性が非常に高い。
こうして見てみると、ウィルスは「非常に高い確率で変異している」と言うよりは「連続的に変異していくこと」を前提としていることが解る。
元々、わずかな遺伝情報と、それを包むタンパク質・脂質二重層のみと言う非常にシンプルな構造で形作られ、また自らタンパク質を合成することはないので、遺伝情報がどれだけ変異しても、「不適応体」となることはない。
ある意味、この「連続的な変異性」こそウィルスの最大の特徴であると言える。
参考資料:日経サイエンス 2005年3月号
「インフルエンザの脅威」
西谷文宏
ウィルスは、タンパク質殻(=カプシド)で、RNA又はDNAを内包した構造をしているらしい。リンク この内包されたRNA又はDNAは、一体どのように生成されたのだろうか?
DNAの仕組みを探索する中で、ウィルス様(DNAの切れ端)の生成方法が、いくつかあることに気付いた。
●スプライシングカット
生命活動に必要なタンパク質を合成する為には、DNAからRNAに情報を写し、そのRNAが移動し、リボソームに情報を伝達。リボソームでRNA情報を読み取りタンパク質を合成する。この時、情報選別=スプライシング リンク が行われる。DNAには、タンパク質合成に不要な情報も含まれているからだ。スプライシングで必要な情報のみ切り取り、不要情報は切り捨てられる。こうしてDNAの切れ端が生成される。
●DNA補修
紫外線や化学物質などで、DNA情報が傷付いてしまうことがある。酵素によって、傷付いた情報を周辺ごと切り捨て、破損箇所を補修してしまう機構が核内に存在する。リンク 切り捨てにより、DNAの切れ端が生成。また破損箇所の補修酵素=逆転写酵素の存在は、レトロウィルスを想起させる。
●テロメア
DNA2重螺旋の最末端は、開放形で不安定。この為、細胞分裂の度に端が切れていく=DNAの切れ端生成。しかし、生殖細胞やガン細胞では、テロメラーゼ(酵素)によって、切れたDNA最末端を継ぎ足し修復しているという。これも逆転写と同様の働きを行っている。リンク リンク
ウィルスは、宿細胞に侵入し、そのDNAを逆転写により書き換え、自身を複製する。細胞内には、通常時にもウィルス様の動きをする逆転写酵素の存在が確認されており、またいくつかの方法で、DNAの切れ端が生成できることがわかった。
>ウィルスは生物の切れ端 123455 可能性は高そうだ。
今後は、包んでいる殻がどのように生成されているのか?ウィルスに侵入されていない通常時の細胞生命活動で、タンパク質殻生成に似た働きを持つ機構はないのか?探っていきたい。
JUST-IDEA
「表皮も神経も外胚葉由来」です。また、「細胞膜は外部情報のセンサー」であり、「皮膚はバリア」です。直感的には、皮膚はどえらい機能を有する一大器官だと予感させられますが、そのことをコツコツと検証し論及する本がありました。
「皮膚は考える」(傳田光洋,岩波科学ライブラリー112)
を紹介しながら、更なる推論をしてみたいと思います。
●表皮は、自律的なバリア適応システム
皮膚は角質・表皮・真皮から成り、角層破壊・湿度変化・圧力変化などをモニターしながら、神経系や循環系とは離れた自律的なシステムで適応するシステムなようです。それは、表皮のイオン濃度差によって起きる皮膚の表面電位が、バリア機能の再生という応答をすることによるそうです。
皮膚のバリア機能は2段階構造で、1段目は膜として異物の侵入を防ぎ、2段目はランゲルハンス細胞が増えて免疫バリア機能が増強される、というシステムであることは、免疫の教科書にも良く出てきます。
表皮のバリアが破壊されると、ケラチノサイトは炎症を誘導するサイトカインの合成を始めますが、その合成も表皮の水透過機能をモニターしながら調整しているようです。
●皮膚が免疫系・内分泌系に及ぼす影響
ケラチノサイトは、ホルモンや神経伝達物質カテコールアミンの一種であるL-ドーパ、ドーパミン、ノルエピネフリン、エピネフリンなどの物質を代謝でき、ACTH、サブスタンスP、β-エンドルフィンも合成していることが、明らかになってきました。
表皮や脳中枢が外肺葉由来で、個体発生は系統発生をたどるだけでなく、その名残りが表皮に残っているということが分ってきたということになります。
撫でたり、圧したり、抓ったり、切ったりすることに対する応答は、表皮の基底部や真皮下層の神経によるものとされてきました。一方、表皮を形成するケラチノサイトは、温度や化学物質などによるイオンチャネル内蔵型受容体でもあります。ここまでは、従来の考え方です。
ATP(アデノシン3リン酸)は生体内ではエネルギー通貨ですが、神経系では情報伝達物質でもあります。表皮ケラチノサイトは空気に暴露するとATPを放出し、ATP受容体を介して放出した細胞自身や周りの細胞(神経末梢など)に作用してカルシウムイオン濃度を変化させます。
ということは、皮膚感覚の最初の受容機構をケラチノサイトが担っている可能性が高く、外部刺激により体内の免疫系・内分泌系を作動する役割をも含んでいると考えられます。
また、中枢神経系で重要な役割を担うもう一つのG蛋白質結合型受容体を作動させる情報伝達物質には、アドレナリン、セロトニン、ドーパミン、メラトニンなどがありますが、表皮ケラチノサイトにはアドレナリンβ2受容体も存在するらしいこともわかってきました。
●皮膚の情報センサー機能が、オス経由で進化に及ぼす可能性?
表皮が様々なホルモンや情報伝達物質を産生する能力があるということは、表皮の異常が他の臓器の異常を惹起している可能性があるのではないか、と傳田氏は問題提起しています。皮膚が環境外圧情報をキャッチし、体内環境の変化をもたらすという知見は、進化のメカニズムを解くヒントとなりそうです。
*外圧を皮膚が感知し、その情報が全身的なものとして充たされるなら、個体発生の初期段階で生成してしまう卵の場合は環境の影響を受け難いのに対し、成体になっても継続的に分裂を続ける精子にその影響は出やすく、生殖によって次世代に遺伝情報の塗り重ねor書き替えがなされる可能性が高いと思われます。
小圷敏文
ウィルスとは核酸がたんぱく質の殻に覆われたもので、ウィルス本体だけで分裂するにも、増殖するにもその細胞を持っておらず、何かの生物に寄生し、その寄生先のDNAを媒介に増殖する他ないもの。
寄生先の細胞へ寄生が完了すると核酸を被っていたタンパク質はなくなり、変異に特化している核酸(RNA)が剥き出しの状態になり、寄生先のDNA情報を読み取り、増殖(変異する可能性も・・・)する。
ただし、このウィルス(抗原)は生物の体内に入ったとしても、その生物に受容体がなくては細胞内に入り込む事ができない。
最近、紙面や報道で騒がれている鳥インフルエンザウィルスは鳥同士の感染は事例としてあり、人へは感染しないものだった。
これは鳥の細胞には鳥インフルエンザの受容体が存在していたが人にはその受容体がないことで、鳥→人の感染がなかったということだろう。
しかし、現在のH5N1という鳥インフルエンザウィルスは人への感染事例があり、しかも死者まで出ている。
変異体であるウィルスは「鳥→鳥」を繰り返す事で変異し次第に鳥→人へと感染しているという事になる。
これが人→人へ感染している可能性があると指摘している事例もあり、感染すると感染者の4人に1人が死へ至ると言われています。
このH5N1型インフルエンザウィルスから身を守る手立ては現時点で「“完璧”に防ぐ手立て」は発見されておりません。
もし発見されたとして、ワクチンが開発されたとしても、変異を繰り返していくウィルスには効く場合と効かない場合などがあるので、ワクチン開発が有効な手段とは言えないのではないかと思う。
ウィルスが体内に入ってくるという事は小さな事を含めると日々恒常的に起こっている。
ただ体内にある免疫細胞が抗体を作り出し侵入して来たウィルスを無効化させており、発症していないだけのことである。
常に変異するウィルスを撃退するには雲を掴む行為に等しく、何時どんな時に、どのような型のウィルス状態になっているのかが分からないのである。
その「どのような型のウィルスか解らない状態」でも適応しようとするものがある。
それが私たちの体内にある「免疫細胞」だ。
免疫細胞と言っても多くの細胞からなり各々役割を持ってウィルスと闘っている。
例えば
マクロファージはウィルス(病原体)を食べその情報をヘルパーT細胞に伝達する役割を担っている。
また、情報を得たヘルパーT細胞はサイトカインと呼ばれる刺激物質(細胞を活性化させる)を出しマクロファージやB細胞に指令を出す役割を担っている。
最後にB細胞はヘルパーT細胞にウィルスの情報を伝達するだけでなく、ヘルパーT細胞からの指示で抗体を作り出し、ウィルス(病原体)を殺しに行き、ウィルス(病原体)を記憶し再度同じウィルス(病原体)が侵入して来たときに迅速に攻撃できるよう準備を整えている(免疫記憶細胞とも呼ばれています)。
※しかもこのB細胞は1千万種を超える抗体を作り出すことが可能なんだそうです。
他にも数種類の免疫細胞があり病気を発祥させないよう毎日総力戦でウィルスと戦い続けているのである。
この免疫細胞が活発だと「免疫力が高い」と言われ病気などにかかり難い。つまりウィルスから体を守る一番の可能性は「免疫力を高める」ということではないだろうか。
今、私は「免疫力を高めるには何をすると良いのか?」という事を一番の可能性と考え追求する必要を感じている。
竹田翔
病気や老化は個体の立場からだけみれば「いやなもの」ということになるが、種、群の立場から見れば、世代交代による適応のプロセスだともいえる。従って、免疫系を生体を守るだけのシステムととらえるのは個体の側から見た一面的な把握に過ぎないのではないか?・・・と考えていたところ、同じような視点で考えておられる農学系の教授がおられた。東京大学農学生命科学研究科の上野川教授である。
以下ゑれきてる 1996 第61号「免疫系は生体を守るためにあるのか」における上野川修一教授と広川勝いく教授(東京医科歯科大学医学部感染免疫病理学)の対談からの引用である。
リンク
>私は免疫系を単純に生体を守るシステムと考えない方がいいと思ってます。免疫学、「疫を免れる」などという名称を最初につけてしまったので、どうしても守るというイメージが定着してしまったのでしょうね。免疫機構は外界の異物と生体の「戦い」という意味でとらえると理解しやすい面もあるのですが、それだけではあまりにも表層的な見方になってしまって、免疫機構の本質や、神経系との関連を理解できなくなってしまいます。昔からわかりやすいように説明されてきた、免疫応答機構は自己と非自己を認識して、非自己である病原菌、抗原が入って来ると、抗体を作ってそれをたたくというのは免疫系の働きのごく一部に過ぎないと思います。
>神経系は外界のさまざまな変化の中から、特に感覚できる範囲内でシグナルをキャッチするのですが、それ以外の、私たちの身体の中に侵入してくるもので感覚できないものは、ほとんど免疫系によって感知されます。それがたまたま微生物だとかウイルスだとか、そういうものだったのだと思います。どちらも、それぞれ役割は決まっていて、ただ、たまたま免疫系が感知し排除するものが外から来るウイルスなどで、場合によっては個体の生命を縮めてしまう、滅ぼしてしまうということがあるものですから、免疫系の役割は生体を守るということになったのだと思うんですね。
>免疫系が守る役目をたまたま引き受けて寿命が伸びるのだということもありますが、もう一つ、実は免疫系というのは、寿命を限定するシステムではないかと思います。人間がよりよい種を残していくためには、個体の増加に規制が必要であって、そういうコントロールをしている仕組みかも知れない、というような考え方もできるのでしょうか。
>守って長生きさせて、しかしあるところまでくると免疫系の中枢である胸腺の機能を落して、守るのをやめてしまう。免疫系は生と死の両方の指令を出してコントロールしているのではないでしょうか。
>自らを守るシステムが、また自らを絶っていく、それによって個体が1つの集団から除かれるようになる、つまり、一種の自己死、アポトーシスです。アポトーシスは細胞レベルで問題にされますが、免疫系は個体レベルのアポトーシスをプログラムしているのだろうと思います。
確かに、免疫系は体内の老廃物を除去し、外敵を排除する生命維持装置ではあるが、それは同時に、生命を死に至らしめる装置であるともいえる。事実、老化によって免疫系の中枢といわれる胸腺に力がなくなり、感染症に冒されやすくなる。つまり免疫は生命のアポトーシスをつかさどる時限装置であるといえるのです。
最近の免疫学の研究によって,免疫系が必ずしも生体防御のために作られたのではないことを示す事実が次から次へと挙がってきたという。リンク
「免疫系は生だけでなく死をもコントロールしている」という視点で免疫系を種進化、群進化の中に位置づけてはじめて「免疫の不思議」に迫ることが出来るのではないでしょうか?
山澤貴志
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