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2015年2月21日 (土)

「免疫細胞誕生の秘密」で出てきた疑問⇒植物の免疫機能について

■「免疫細胞誕生の秘密」
 本当に面白く、勉強になりました。
 それで、冨田さんの質問を考えてみたいと思います。(172986)
>②植物には免疫機能と呼べるほどのものはないとのこと。
⇒外から体内への異物侵入があるのは植物も同じはずである。にもかかわらず植物が動物ほどの免疫機能を構築しなかったのは、なぜなのだろうか?(構築する必要がなかった? それはなぜ?)
●ご質問の②について、以前、ブログ”新しい「農」のかたち”に投稿した内容があるので、これを引用し補足したいと思います。
 植物の危機管理(1)植物の免疫システムリンク
 植物の危機管理(2)害虫防御システムリンク
 植物の危機管理(3)「栽培」とは「植物を健康に育てる事」リンク
●まず、植物は種の保存・存続のために下記のような戦略を持っています。
1、多数の子孫を残す。
 =植物の子孫の作り方は、r戦略(多数の子孫を残す)に近い。
2、種が絶滅するような病気は今のところ無い。
 =カビの病気の一つ「うどんこ病」(大変寄生性が強い病気)に感染し
  たムギ類でも、種としては、十分種子を作って世代を回すことができ
  る(人が種子を利用するため問題となるだけ)。
  一方、種子を取れないくらい激しく枯れ上がる病気もあるが、この場
  合発病は一地域や個体別に限られる。一般に、一つの病原体が感染で
  きる植物種は限られている(これを宿主特異性とか寄生の特異性と言
  う)ので、種全体がダメージを受けるような病気はむしろ地球上から
  消えてしまう可能性をもっている。
※ごく短期間で成長し花をつけ種を残す、そしてその数が圧倒的に多い、
 と言うのが植物の特徴だと思います。
 だから、固体が病気になって短命であっても種は残る、かつその数が多
 く、かつ広い地域に分布している為、種の存続が危ぶまれる事態に陥る
 可能性は低い事になる。
★圧倒的な子孫多産・広域生存戦略?で病気に対する免疫機能を進化させ
 る必要が低かった、と言う仮説が成り立つように思います。

●しかし、植物も様々な物質を分泌する事によって外敵(細菌等)を寄付けない防御のシステムを持っている。
1、抗生物質等による免疫システムで対応している。
 =例えば、カビ(植物の病気の80%はカビによって起こる)や細菌な
  どの微生物に対しては、もともと備えているフェノール類、サポニ
  ン、アルカロイドなどの抗菌性物質、新しく生産する低分子抗菌性物
  質(総称してファイトアレキシンと言う)や抗菌性タンパク質などを
  生産して自らを守っている。これらの抗菌性物質は比較的幅広い微生
  物の生育を阻害する事が知られている。
★免疫細胞の変わりに免疫物質?を分泌する事によって外敵を寄付けないシステムを構築している。

●動物と違い圧倒的に硬い(外敵が侵入しにくい)細胞壁がある。
1、細胞壁のおかげで動物に比べずっと感染のリスクを回避している。
 =細胞壁に、リグニンを蓄積したり、細胞壁にあるタンパク質を活性酸
  素(過酸化水素)で架橋したり、珪酸を集積したり、より強固にし
  て、侵入に対する物理的なの防壁とする事も知られている。
★植物は免疫細胞を持っていないが、一つ一つの細胞が外敵から侵入を阻害できる機能を有している。

●ウイルス抵抗性
1、ウイルスに対する抵抗性としては(増殖に宿主の細胞が必要ですの
 で)入り込んだ細胞のプログラム細胞死が大きい防御となる。
 抵抗性品種も作られており、複製過程に必須な宿主のタンパク質が欠け
 ていたり変異していたりということも判っている。また、増殖しても隣
 の細胞、そして、全身にウイルスが移行できない仕組みもある。
  さらに、ほ乳類のワクチンと少し似ているのは、弱毒ウイルスを接種
 しておくと(弱毒ウイルスも増殖し全身に広がるが、顕著な病気はおこ
 さない)、次に侵入した強毒ウイルスに耐病性を持つようになるという
 現象もある。
  また、新入部に壊死斑を形成するようなウイルスの感染を受けると、
 他のカビや細菌にも抵抗性を示す例もある。この他にも植物は色々な抵
 抗性を備えて自らを守っている。
  ある種の薬剤や熱処理等で抵抗性の発揮を抑えてやると、もともと感
 染できなかった病原体が日和見感染するようになることから、やはり植
 物でも、抵抗性(特に病原体と遭遇して発現する)が大切だと言うこと
 が判っている。
★ウイルスには対抗するよりも、感染した細胞が死ぬ事によって全体の死
 から逃れるシステムになっている。
 同時に、動物に似た免疫力(ワクチン接種で抵抗性発現)まで持っている
 ことはわかっているが、その詳細はまだ未解明らしい。

●植物の害虫防御システム
1、害虫の捕食性天敵を呼び寄せる匂いを出す。
2、毒物質を出す。
3、物理的防御、他 
★基本的に病気に対する抵抗性とよく似ている。詳細はブログをどうぞ。

■植物の特徴からの仮説
 ・・・上記以外で免疫システムが高度に進化しなかった理由
1、植物は独立栄養生物(自ら光合成によって栄養を生成できる)なので栄
 養を摂取し消化、分解そして排泄するシステムを持たない。
 ⇒消化を助ける為の他生物の手助けがいらないので体内に他生物を入れ
  る必要が無い。だから、体内に免疫細胞を共生させる基盤が無い。
  逆に根からは過剰に栄養素を吸収することがあり、過剰症という生理
  障害が頻発する。
2、体外から異物を摂取し体内に供給するシステムが単純で一方通向。
 ⇒導管は根から吸収した水を植物の組織全体に運び、師管は光合成でで
  きた糖を葉から下へ運ぶ役目を果たしています。
  このように植物体内の物質移動は基本的に一方通行(循環しない)なの
  で、もし、免疫細胞が存在しても体内に留まりにくい。

★総合的に見れば、植物は免疫システムを高度に進化させる必然性が弱く
 、かつ免疫細胞を体内に共生させる基盤も無かったので、動物のよう
 な高度な免疫システムが存在しない、と考えられるのではないでしょう
 か?。そういう意味では、なんで屋劇場でも提起されましたが免疫シス
 テムは体内への異物侵入の防御の為にある、と言うより体内に入ったも
 のを消化、分解する事が主目的であり、その塗り重ね機能として防御シ
 ステムを構築させた、と考えた方が論理として整合するように思いま
 す。
 しかし、植物もその生態にあった様々な防御システムを構築していると
 言う点では、生物の適応機能、進化機能は本当に”スゴイ”と思う。

丸一浩

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