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2015年2月 3日 (火)

免疫系は生だけでなく死をもコントロールしている

病気や老化は個体の立場からだけみれば「いやなもの」ということになるが、種、群の立場から見れば、世代交代による適応のプロセスだともいえる。従って、免疫系を生体を守るだけのシステムととらえるのは個体の側から見た一面的な把握に過ぎないのではないか?・・・と考えていたところ、同じような視点で考えておられる農学系の教授がおられた。東京大学農学生命科学研究科の上野川教授である。

以下ゑれきてる 1996 第61号「免疫系は生体を守るためにあるのか」における上野川修一教授と広川勝いく教授(東京医科歯科大学医学部感染免疫病理学)の対談からの引用である。
リンク

>私は免疫系を単純に生体を守るシステムと考えない方がいいと思ってます。免疫学、「疫を免れる」などという名称を最初につけてしまったので、どうしても守るというイメージが定着してしまったのでしょうね。免疫機構は外界の異物と生体の「戦い」という意味でとらえると理解しやすい面もあるのですが、それだけではあまりにも表層的な見方になってしまって、免疫機構の本質や、神経系との関連を理解できなくなってしまいます。昔からわかりやすいように説明されてきた、免疫応答機構は自己と非自己を認識して、非自己である病原菌、抗原が入って来ると、抗体を作ってそれをたたくというのは免疫系の働きのごく一部に過ぎないと思います。

>神経系は外界のさまざまな変化の中から、特に感覚できる範囲内でシグナルをキャッチするのですが、それ以外の、私たちの身体の中に侵入してくるもので感覚できないものは、ほとんど免疫系によって感知されます。それがたまたま微生物だとかウイルスだとか、そういうものだったのだと思います。どちらも、それぞれ役割は決まっていて、ただ、たまたま免疫系が感知し排除するものが外から来るウイルスなどで、場合によっては個体の生命を縮めてしまう、滅ぼしてしまうということがあるものですから、免疫系の役割は生体を守るということになったのだと思うんですね。

>免疫系が守る役目をたまたま引き受けて寿命が伸びるのだということもありますが、もう一つ、実は免疫系というのは、寿命を限定するシステムではないかと思います。人間がよりよい種を残していくためには、個体の増加に規制が必要であって、そういうコントロールをしている仕組みかも知れない、というような考え方もできるのでしょうか。

>守って長生きさせて、しかしあるところまでくると免疫系の中枢である胸腺の機能を落して、守るのをやめてしまう。免疫系は生と死の両方の指令を出してコントロールしているのではないでしょうか。

>自らを守るシステムが、また自らを絶っていく、それによって個体が1つの集団から除かれるようになる、つまり、一種の自己死、アポトーシスです。アポトーシスは細胞レベルで問題にされますが、免疫系は個体レベルのアポトーシスをプログラムしているのだろうと思います。

確かに、免疫系は体内の老廃物を除去し、外敵を排除する生命維持装置ではあるが、それは同時に、生命を死に至らしめる装置であるともいえる。事実、老化によって免疫系の中枢といわれる胸腺に力がなくなり、感染症に冒されやすくなる。つまり免疫は生命のアポトーシスをつかさどる時限装置であるといえるのです。

最近の免疫学の研究によって,免疫系が必ずしも生体防御のために作られたのではないことを示す事実が次から次へと挙がってきたという。リンク

「免疫系は生だけでなく死をもコントロールしている」という視点で免疫系を種進化、群進化の中に位置づけてはじめて「免疫の不思議」に迫ることが出来るのではないでしょうか?

山澤貴志

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