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2015年2月24日 (火)

ウイルスに対する植物の防御機構

植物にもウイルスに対する免疫のようなものが存在するが、その機構は動物とは異なっている。まだその全容は明らかになっていないが、現在わかっている範囲で簡単にまとめてみたい。

まず、動物と植物の防御機構における最も大きな違いは、植物には免疫細胞がなく、個々の細胞が病原体の認識から防御までの一連の過程を担っていることだろう。それを前提に植物の防御機構は以下のようになっている。

植物の細胞には動物細胞にはない細胞壁があるため、動物と比較するとウイルスが侵入しづらい構造になっていると言えるだろう。そのため、傷あるいは昆虫などの媒介生物を介して初めて植物細胞内へ侵入する。これは動物でもほぼ同様ではあるが、この硬い細胞壁の存在が第一の防御機構となっている。

また、細胞壁以外にも、ウイルスに侵入された後の防御機構として過敏感反応と総称される防御機構が存在し、それらは階層的に存在している。

■ウイルスとの親和性の喪失による防御(全ての植物が持っている機構であるかは不明)
ウイルスが細胞内で増殖するためには、(ウイルス遺伝子産物が)宿主細胞と親和性を持つことが不可欠である。よってこの親和性を失うことは、ウイルスの増殖を阻害することになる。
植物における防御応答をコントロールする遺伝子はR遺伝子と呼ばれているが、その一種のRxを持つジャガイモで宿主因子の欠損や変異を介してウイルス遺伝子産物との親和性を失うことが確認されている。
ウイルスの認識は抵抗性遺伝子によってウイルス遺伝子を直接認識する場合と、ウイルスによって変化した宿主因子によって間接的に認識する場合がある。

■プログラム細胞死
最も広く知られている植物の防御機構で、(上記の親和性の損失だけでは対応できない場合)ウイルスが増殖して他の細胞へと移行する前に、自ら死ぬこと(=プログラム細胞死)で感染の拡大を防ぐ。ウイルスは死んだ細胞内では増殖できないため、有効な防御機構となっている。
R遺伝子が防御応答をコントロールする点や、ウイルスを認識する方法は上記と同様。

■RNAサイレンシング
ウイルス遺伝子のように平素存在しないRNA、あるいはあるmRNA が過剰に発現すると、その配列を特異的に認識し、分解反応が進む現象。ウイルスRNA に相補的な配列の短いRNA を認識し、その配列を持ったウイルスRNAを分解する機構。

■全身獲得抵抗性
植物内に存在するサリチル酸はウイルスやバクテリアなど様々な病原微生物に対する抵抗性(全身獲得抵抗性)を誘導する鍵となる物質として働いている。このサリチル酸が個々の細胞における免疫シグナルであるばかりでなく、これが他の細胞や器官に移動することにより、植物全体が抵抗性を獲得する機構。


(参考)
・「植物ウイルスの感染と宿主因子」(佐藤昌直,渡辺雄一郎(東京大学大学院総合文化研究科))リンク
・自己防御システムとしての植物免疫-免疫システムの普遍性と多様性-(山口淳二,池田 亮(北海道大学大学院 生命科学院・先端生命科学研究院))リンク

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