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2015年2月15日 (日)

ウィルスの変異の仕組み

インフルエンザは、規模に違いはあるが、毎年流行する。
これは、インフルエンザウィルスの表面タンパク質の抗原性が毎年少しづつ変化する為に、人が持っているウィルス抗体では、対応しきれない為である。

このように、ウィルスは単に増殖するだけでなく、遺伝情報の組み換えによって変異する。遺伝情報とそれを包むタンパク質=カプシド及び脂質二重層=エンベロープ(カプシドのみのウィルスも存在する)しか持たないウィルスは、当然生殖によって遺伝子が組み変わることはなく、以下の2つの仕組みによって、変異が引き起こされる。

1.コピーミスによる突然変異
通常の生物でも、遺伝子には様々な要因によって突然変異が起こる。
一般的に生物の場合、遺伝情報複製時のコピーミスと、紫外線・化学物質などによる情報破壊によって、突然変異が引き起こされる。
しかし生物にとって、突然変異が適応的である可能性は極めて低い為、損傷を修復する修復酵素によって、変異した遺伝情報は修復される。修復酵素によって、生物の突然変異発生割合は、概ね1/100億にまで抑えられている。

突然変異は、遺伝情報を持つウィルスでも生物と同じように起こる。
しかしウィルスは、生物と違って複製された遺伝情報に誤りがないかどうか調べるチェック機能(校正機能)も、修復酵素も存在しない。
その為、ウィルスは遺伝子の複製過程において、突然変異が大量に生じ、コピーミスに起因する突然変異の発生率は、30%にもなる。

2.複数のウィルス混ぜ合わせによる変異
 2種類のウィルスA・Bが同一細胞に感染した場合、それぞれのウィルスの遺伝情報が混ぜ合わさり、全く新しい別のウィルスCが発生することがある。こうして誕生したウィルスCは、ウィルスA・B両方の遺伝子を持つことになり、結果ウィルスを包むカプシドも、両者の特徴を併せ持つことになる。

ウィルスは、カプシド又はエンベロープから突き出た表面タンパク質=スパイクを、細胞表面の受容体に(鍵のように)結合させ、細胞内へと侵入する。スパイクが細胞の受容体に適合しない場合、ウィルスは細胞へと侵入することはできない。

ここで
 
 ウィルスA:非常に凶暴な感染力で、人類の受容体に適合しない
       スパイクを持つウィルス。
 ウィルスB:感染力は非常に弱いが、人類の受容体に適合する
       スパイクを持つウィルス。

とした場合、A・Bの混ぜ合わせによって誕生したウィルスCは、Aの特徴である凶暴な感染力と、Bの特徴である人類の受容体に適合するスパイクを持つ可能性がある。

このような混ぜ合わせによって、これまで人類に感染しなかった凶暴なウィルスが、突然人類に感染するようになる。現在既に東南アジアで発生している、H5N1ウィルス=所謂強毒型鳥インフルエンザの人類への感染は、このような経緯で鳥から人へと感染した恐れが高いと考えられている。
こうして発生したウィルスは、それまでの人類の抗体では全く対応できず、その為に、爆発的な感染(パンでミック)を引き起こす可能性が非常に高い。


こうして見てみると、ウィルスは「非常に高い確率で変異している」と言うよりは「連続的に変異していくこと」を前提としていることが解る。
元々、わずかな遺伝情報と、それを包むタンパク質・脂質二重層のみと言う非常にシンプルな構造で形作られ、また自らタンパク質を合成することはないので、遺伝情報がどれだけ変異しても、「不適応体」となることはない。

ある意味、この「連続的な変異性」こそウィルスの最大の特徴であると言える。

参考資料:日経サイエンス 2005年3月号
     「インフルエンザの脅威」

西谷文宏

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