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2015年3月

2015年3月29日 (日)

「群」の重要性

最近、家で飼育している熱帯魚水槽を見ていて気が付いたことがある。それは、水槽内にいる魚は「群れない」と言うことだ。

飼育している魚は、アマゾンの淡水に生息している小型魚で、自然の状態では常に群れた状態でいる。それが水槽の中では群れない。
しかし、水槽に人影が近づくと、急に群れて泳ぎだす。
このことから、生物は外敵のいない無圧力空間では「群れない」と言うことが解り、同時に「群れ」は外圧適応の為であることが解った。

この視点に立って、「群」を考察して見ると、2つの面白い点が見えてきた。

1.「群」は速い。
 なぜ外敵がいると群れるのか?数が多くいるから、少々食べられても群全体として問題ないとか、群れることで存在を大きく見せ、外敵に威嚇する等が考えられるが、その論理はどちらも整合性が低い。
群れていない単独の方が、外敵に見つかる恐れが低い場合も多いし、群れても外敵には襲われているので、必ずしも威嚇に繋がらない。(威嚇として成功している事例も多く存在する)

ではなぜ群れるのか?

これも観察の中で気が付いたのだが、「群」は(単体よりも)移動速度が「速い」だから外敵に対して群れるのだ。

恐らく、群体による水流の流れの変化(一匹では水流の流れを全面的に受け止める必要があるが、群では群全体で水流を受け止め、大きい流れを生み出す。)が、移動速度の上昇に繋がっているのだろう。
水流の方が抵抗が強いので、水中動物の方がより高い効果があるのは間違いないが、陸上動物でも同じ構造があると考えられる。
また、この「群による流れの変化」は、F1のスリップストリームと同じように、群の内側にいる生体の体力を温存することにも繋がるので、そういう意味でも外敵適応力が高い。

2.「群」は「免疫力」が上昇する。
 これも観察する中で、おぼろげながら感じたことなのだが、どうも「群」は「免疫力」を上昇させるようだ。
水槽で単体もしくは数匹を飼っているだけだったり、比較的荒い性質の魚と単体~数匹を混泳させている状態では、かなり病気になり易い。
しかし、比較的構成数の多い群を飼育している状態では、めったに病気にならない。この原因としては、2つの要因が考えられる。

一点目は、群れることで、外敵圧力に対するストレスが弱まり、免疫細胞が活性化すること。人間でも同じだが、免疫系はストレス(不安)に極めて過敏に反応する。群れる仲間が存在せず、生存可能性の低い外敵圧力下では、免疫細胞が活性化せず、容易に病気になる構造にあると考えられる。

もう一点は、群れることで、ウィルスや病原菌が群全体に繁殖→その分抗体製作スピードが上がると言うこと。ウィルスの感染などは一気に群全体に広がる。これは適応上不利だと感じるが、早期に多様なウィルスに感染することは、それだけ抗体製作も早くなり、群全体では適応力が上昇する。
これは人間の子供の実験データとしても解明されており、集団遊びを幼少期から積極的に行っている子供程、免疫力が上昇することが判明している。


このように見てくると、生物にとって、外圧適応上「群」が如何に重要であるかが見えてくると同時に、人間の個人主義観念が如何に自然の摂理に反した観念であるかが解る。

西谷文宏

2015年3月26日 (木)

ウィルス=大進化が生み出した生物の断片

175509で展開したように、レトロポゾン、トランスポゾンがウィルスを生み出した可能性は非常に高いが、問題は何時、どのようなプロセスでウィルスが発生したのかと言う点である。
 
 ウィルスの誕生は、大進化時におけるレトロポゾンの増大と密接に結びついていると考えられる。
 
 175503で先述したように、生物はこれまで「真核生物の誕生」「多細胞生物の誕生」「脊椎動物の誕生」の3回、劇的な大進化を遂げている。この大進化の度にレトロポゾンが増大しており、更に「哺乳類の誕生」から「狭鼻猿類~霊長類」にかけて、レトロポゾンが爆発的に増大している。

 生物が何らかの逆境下において、大進化を遂げる為には、遺伝子を変異させる必要がある。しかし、単に遺伝子を組み替えただけでは、より複雑な躯体を生み出すことはできないので、ゲノムサイズそのものを拡大する必要が出てくる。
 そこで利用されたのがレトロポゾンによるゲノムサイズの拡大だが、正確には、レトロポゾン以外にDNAの重複(同じ遺伝子を2つ持ち、一方を機能の発現に、一方を変異の蓄積に利用する)によっても、ゲノムサイズを拡大することができる。
 
 「真核生物の誕生」「多細胞生物の誕生」「脊椎動物の誕生」の3回の大進化過程においては、レトロポゾンよりも、主要にこのDNAの重複を利用して、ゲノムサイズが拡大されている。
 一方、「哺乳類の誕生」以降は、主要にレトロポゾンによってゲノムサイズが拡大されていることが解っており、これが、「哺乳類誕生」以降のレトロポゾンの爆発的増大の原因となっている。
 人類のゲノムを解析すると、実に4割をレトロポゾンが占めているが、線虫では1%も存在していない。「哺乳類誕生」以降のレトロポゾンの増大が如何に爆発的であるかが解る。
 
 以上の観点から、ウィルス発生のプロセスを仮説立てしてみると・・・
 
 各大進化過程におけるレトロポゾンの増大時期、コピー途中のまま、もとのゲノムに挿入されなかったレトロポゾンのコピーRNAが核外に流出。通常、核外に流出した異常遺伝子は酵素等の働きにより分解されるのだが、 ”たまたま”このような分解を免れたレトロポゾンのコピーRNAが、リボゾーム(RNAからタンパク質を合成する装置)によってタンパク質を合成。RNA、DNAはそのままでは細胞膜を通過できないが、タンパク質とRNAが一体化することで、細胞外へと出る事ができたものが存在した。これがウィルスの原型となったのではないだろうか?
 
 先述したように、通常時は変異抑制の為、レトロポゾンの働きは強固に抑制されているが、大逆境→大進化時は進化の為にこの抑制が解かれる。この時期に、レトロポゾン(正確にはレトロポゾンのコピーRNA)が核外に流出したとしても不思議はないし、急激な増大時期であれば、流出後の酵素分解を免れるものが存在する可能性も十分に高くなる。
 哺乳類以降、特に霊長類を宿主とするウィルスの量が圧倒的に多いのも、レトロポゾン量の増大と結びつけて考えれば辻褄が合う。
 
 また、トランスポゾンも、大進化時には遺伝子組み換え→変異誘発の為に積極的に利用されたと考えられる。レトロポゾンと同じように、この過程において、移動中のトランスポゾンが核外へと流出→タンパク質合成→タンパク質と一体化して細胞外へ流出したものが存在しても不思議はない。

 このような大進化過程において流出したレトロポゾンが(逆転写型を含む)RNA型ウィルスの原型となり、同じく流出したトランスポゾンがDNA型ウィルスの原型となったと考えられる。

すなわちウィルスとは、「大進化が生み出した生物の断片」と言えよう。

参考文献:日経サイエンス別冊146号 「崩れるゲノムの常識」
       BLUE BACKS 「DNA学のすすめ」

西谷文宏

2015年3月23日 (月)

~免疫機能の起源と進化~

★免疫機能が生まれたのは、何で?

生まれた順は、①マクロファージ、②NK細胞、③T・B細胞。


①マクロファージの起源は?

殖産分化(多細胞化)の段階=エディアカラ動物群レベル(海綿動物)で登場。

カイメンのマクロファージ(アメーバ細胞)は、死細胞や、エリ細胞から送られた栄養を摂取する。後に生殖細胞にもなる。

⇒初期のマクロファージは、免疫細胞というより「栄養細胞=生殖原細胞」だった! (異物を排除することでなく、栄養を蓄えることが、貪食の目的だった。)


②NK(ナチュラルキラー)細胞の起源は?

(体細胞と生殖細胞が専門分化した)有性生殖の推進段階=大変異システムの確立期(ex.ミミズやヒトデ)で登場。

⇒NK細胞は、大変異の過程で誕生した「変異細胞」そのものであった可能性が高い(一種のガン細胞で、たまたま適応的だった)!


③T細胞やB細胞の起源は?

(神経系が発達した)脊椎動物で登場。

神経細胞は、それを取り巻く絶縁体(シュワン細胞)や、末端では筋肉と密着する必要から、反発系膜タンパクを封鎖。
→そのため、(脊椎動物の)変異促進で多発したウィルスや病原菌が、体細胞にくっつきやすくなる。

⇒これらウィルスetc.を防御するために、T細胞・B細胞が誕生。
→T・B細胞自身の変異促進がウィルス増殖を招き、それを防御するためT・B細胞をさらに変異させる必要が出てくる、という「イタチごっこ」に。


[まとめ]
☆変異システムを獲得したから、生物は進化できた。しかしその変異システムによって生み出された免疫システムは、最後は袋小路=自滅構造に陥ってしまった。つまり、DNAレベル(変異システム)での進化は、限界を迎えている、ということ。だからこそ、脊椎動物以降の進化は、脳進化に委ねられた。そうなった以上、人類の展望も脳進化にあり、それはすなわち共認進化である!!

矢ケ崎裕

2015年3月20日 (金)

ウィルス=大進化が生み出した生物の断片

>このウィルスは、細胞を持った生物の切れ端だと思う。なぜならば、生きた細胞がないと増殖も出来ないそれが、単体で細胞を持つ生物以前に存在したということは考えにくいからである。(123455

ウィルスは、レトロポゾン又はトランスポゾンによって生じた、生物(遺伝子)の切れ端と考えてほぼ間違いないと思われる。

■「動く遺伝子」レトロポゾン、トランスポゾン
レトロポゾン(レトロトランスポゾン)とトランスポゾン、は「動く遺伝子」「転移因子」とも呼ばれ、文字通り生物のゲノム上で移動・転移することのできる塩基配列で、殆どの生物で普遍的に見られる。

レトロポゾンとトランスポゾンはいずれも動く遺伝子であることに変わりはないが、転移の仕方は大きく異なっている。
トランスポゾンは単にゲノム上での居場所を変えていくだけの単純転移で、謂わば「カット&ペースト」的転移と言える。ゲノム中を単純移動するだけなので、ゲノムサイズは変わらない。
これに対し、レトロポゾンは、自らのコピーを作って、それをゲノム上の別の場所に再挿入する。トランスポゾンが「カット&ペースト」的な転移であるのに対して、レトロポゾンは「コピー&ペースト」的な転移であると言え、レトロポゾンが転移を起こすと、数がどんどん増え、ゲノムサイズが大きくなっていく。

レトロポゾンが、自らのコピーを作り、再挿入するプロセスは、レトロポゾンのDNA配列を一端RNAにコピーし、それを逆転写酵素(RNAを鋳型にDNAを合成する酵素)によってDNA配列へと複写、こうして生じたレトロポゾンのコピーDNAを、ゲノム上の別の位置に挿入することで行われている。
 
 詳しくはこちらを参照:リンク

レトロポゾンの転移が起こると、遺伝子配列が変わるだけでなく、ゲノムサイズも大きくなる為、突然変異が引き起こされる。この為、生物の細胞内にはレトロポゾンを強固に拘束して変異を抑制するシステムが組み込まれている。(このようなシステムをRNA干渉と呼ぶ。)
しかし、生物が劇的に進化する大進化過程においては、このレトロポゾンによるゲノムサイズ拡大と突然変異が積極的に利用されていると考えられる。

生物史35億年の中での劇的な大進化は「真核生物の誕生」「多細胞生物の誕生」「脊椎動物の誕生」の計3回あったことが解っているが、これに加えて「哺乳類の誕生」から「狭鼻猿類~霊長類」にかけて、レトロポゾンが爆発的に増大していることが判明している。

なお、トランスポゾンの転移によっても、ゲノム配列が変わる為、変異は引き起こされるが、レトロポゾンと違い、トランスポゾンによる変異は生物内で部分的に利用されている。
例えば、免疫細胞が抗体を生み出す過程では、このトランスポゾンによる遺伝子転移→変異を利用して、無限とも言われる抗体の組み合わせが行われている。
また、原核生物~真核生物における、性(接合型)決定にも、トランスポゾンが利用されている。

西谷文宏

2015年3月17日 (火)

NK細胞は、幼若化したがん細胞を処分する役割を担っている

>マクロファージって、オールマイティに思えるのに、何で『NK細胞』の出現が必要だったのだろうか?(173769

 確かに、なんでだろう?…と思って考えてみました。

 マクロファージは、体の中のお掃除をしてくれる。侵入してきた異物だけでなく、死んだ体細胞も食べて処理してくれている。
 翻って、NK細胞は、体内のがん細胞に気付いて、アポトーシスさせる役割がある。
 マクロファージにとっては、がん細胞は異物ではないのだろうか?がん細胞を認識する役割をNK細胞が担うのはどうしてだろう?

 まず、がん細胞は「幼若化(=脱分化)」するという性質がある。
 細胞は、通常、未分化細胞ほど細胞周期が短くて、盛んに分裂増殖を繰り返す。普通の細胞は、分化の方向は一方向で、分化の方向に逆行するような「細胞の幼若化(=脱分化)」は、損傷した組織の再生などの場合を除き、発生しない。ところが、がん細胞は「幼若化」し、盛んに分裂増殖を繰り返してしまうのである。

 また、がん細胞の9割近くでテロメラーゼの再活性化が報告されている。
 テロメラーゼが再活性化すると、テロメアを合成し続けるために、アポトーシスすることなく、若返ってそのまま無制限に増殖するようだ。

 マクロファージにしてみれば、がん細胞とは、生きた細胞(単に若いままの細胞)であって、「異物」と認識できないのではないだろうか。

 NK細胞は、パーフォリンという物質を放出して異常細胞(がん細胞)の細胞膜に穴を開けてアポトーシスを促す。死ねなくなった細胞を適切に処分してくれる役割がある。(そしてその後はマクロファージがお片付けする。)

 マクロファージが攻撃できない生きた細胞(がん化=幼若化した体細胞)を見つけ出し、手遅れになる前にアポトーシスさせるためにNK細胞の役割が必要になったのではないだろうか。

山崎許子

2015年3月14日 (土)

哺乳類集団の核は雌と子供の集団

哺乳類の原型は食虫目であり、性闘争本能を著しく発達させた存在である。従って成体になると性闘争本能が作動し、息子や娘は縄張りを放り出される。従って成体のオスメスは共に単体である。
そして同じくげっ歯類(ネズミ)の集団も、基本形は一頭のメスと子供のみであるようだ。これも性闘争本能によるものだが、この本能は同類が拡散する事で進化の多様化を促進する、拡散適応の原理に則ったものでもある。つまり、餌が取れるようになると集団を出て行くというのは生物界ではごく当たり前のことでもあるのだ。いわば親から離れる、巣離れ本能が存在し、それがオスメスともに集団を出て行くことの下敷きとなっている。
実際、魚類段階では、卵が孵るまでは親は卵を守っているが、卵が孵ると稚魚であるプランクトンたちは海流に任せてあちこちに散らばっていき、成体になると追従本能に基づき、何処かの集団に組み込まれる。

しかし哺乳類では草食動物程度に進化してくると、成体メスは集団に残留するようになる(集団を離れるのはオスのみになる。)
その結果集団は、メスたちと子ども達による集団が形成される。これは哺乳類は胎内保育と産後保育の長期化によって親和本能が発達した結果、集団に残留する引力(=親和力)が増大し、メス自身の性闘争本能と巣離れ本能を上回る為である。

だから草食動物において明確にかつ継承的に集団と呼べるのは、このメスと子供達の集団のみである。そしてそこでは、一見成体オスは単体で暮らしているように見える場合も多い。
しかし本当に完全な単体であれば、(或いは雌と子供だけの集団であれば)肉食類にすぐに襲われてしまうので、オスたちはこのメスと子供の集団の周辺に一定の距離を保って散在している場合が多い。つまりより広いレンジで見れば、それも含めて大きな群れを形成していると見ることが出来る。これが一般的な草食動物における内雌外雄の構造でありその結果、多くの場合オスが餌場を探し、肉食類に先に食われることになるという構造になっているい。
この構造の元では、オスたちは繁殖期のみメス集団に接近し、繁殖行動を取り、性闘争に勝った覇者だけが、メス集団の近くを徘徊し、他のオスをそのテリトリーから追い出す=周辺に追いやることになる。つまりその意味では、草食動物のようなある程度、発達した哺乳類でも明確に集団を形成しているといえるのはメスと子供だけなのである。
そしてこの基本的な構造が、哺乳類の圧倒的主流が母系集団であることの下敷きとなっている。

因みにオス達が明確に集団を形成するのは、オス同士の性闘争が強力に抑制されている、オオカミ系及び、親和機能を基点に本能を超える共認機能を獲得した、真猿類以降からである。

北村浩司

2015年3月11日 (水)

マクロファージの“同類”食機能 の起源

マクロファージは体内に侵入した異物だけでなく、自分の体の老化細胞やアポトーシス細胞をも貪食する。このように不要細胞とはいえ「同類を食う」という性質を、生物は単細胞時代から持っていたのだろうか。

細胞内のレベルでは、真核細胞の「自食作用」が知られている。酵母菌は飢餓状態になると自細胞内の組織周囲に食胞を形成し、自前の栄養源とする。自食作用は哺乳類の体細胞にも残っており、出産後、一時的に飢餓状態になる新生児の体細胞で確認されている。

また、繊毛類のラッパムシなど、同種の真核単細胞同志が飢餓時に「共食い」する事例も見られる。原生生物が飢餓状態下で共食いを行う場合、稀に細胞同士が融合してしまい、しばらく2核の状態となり、やがて元通りに分離することがあるらしい(マーギュリスは、この細胞同志の「共食い」が有性生殖の起源と仮説した)。

単細胞生物と多細胞生物の中間的存在ともいえる細胞性粘菌では、やはり飢餓状態でバラバラだった粘菌アメーバ細胞が融合し、胞子と柄に分化し無性生殖を行うが、柄細胞は胞子に栄養を明け渡して死んでしまう。同じく有性生殖を行う場合には、融合を果たした細胞が、周囲の未融合細胞を食べてしまう。

このように、生物は単細胞時代から同類を栄養源とすることを行っている。無論、周囲に餌が豊富な時にこのようなことは起こらず、飢餓時や有性生殖時など、より生存可能性の高い同類に栄養を譲ることで種を保存する仕組みだと考えられる。

多細胞生物に進化し、個体の部分的な死滅という事態が生じた以上、死滅細胞は残った細胞にとって明らかに貴重な栄養源だ。そう考えると、多細胞生物がその初期段階からマクロファージのような体内清掃兼栄養摂取のための効率的な細胞を生み出したのは自然に思える。

(参考)
哺乳類の新生児は自分の細胞食べて飢餓しのぐリンク
細胞性粘菌という不思議な生き物リンク

田中素

2015年3月 8日 (日)

脳神経細胞とグリア細胞の協働~神経回路の繋ぎ役アストロサイトと整理役ミクログリア~

■「神経回路の整理役」 ミクログリア

174212に記したように、ミクログリアは脳神経細胞を「守る」細胞だが、それ以外の役割も担っていることが最新の研究で明らかになっていきた。その役割とは、「神経回路の整理」役である。

動物の活動や行動は、神経細胞から伸びる神経線維が複雑に繋がることで形成された神経回路によって制御されている。神経回路は発生過程において、おおまかに作られ、感覚情報の処理や複雑な行動の制御に最適で、機能的な形に完成されていくのだが、おおまかな回路から、最適で機能的な回路へと完成させていくには、一端つくられた神経回路の一部を部分的に作り変えてゆく作業=不要になった神経線維だけを選択的に取り除いたり、新たな神経線維を再伸張させたりする作業が必要になる。

このような「不要な神経線維の選択的除去」を行っているのが、ミクログリアの貧食機能であることが解ってきた。つまりミクログリアはその貧食機能によって、「神経回路の整理」を行っているのである。

■「神経回路の繋ぎ役」 アストロサイト

アストロサイトとは、中枢神経系で働く神経幹細胞由来のグリア細胞で、グリア細胞の中で最も大きく、数も最も多い。
この細胞の突起は神経細胞の細胞体やその軸策、および毛細血管表面を被い、神経細胞同士が直接接触するのを防ぐとともに、神経細胞が周囲の組織間液に露出しないように保護している。

アストロサイトは、内部に細線維(フィラメント)を有しており、機械的な強靭さを持っている。脳神経細胞は、他の体細胞に比べて、支持するコラーゲン線維が乏しい為、アストロサイトが繋がって、神経線維を保持している。
アストロサイトは、このような神経細胞の「支持細胞」としての機能の他に、「神経回路の繋ぎ役」として、種々の機能を有することが解ってきている。

・損傷した神経細胞の修復機能
 アストロサイトは壊れた神経細胞を修復して瘢痕(傷跡をコラーゲン繊維等で置き換えて修復した跡)を形成する。

・神経細胞の発生誘導機能
 主要に脳神経回路が劇的に発達する発生段階(胎児期)に、神経栄養因子を出し、発生中の神経細胞の成長を誘導する。 神経細胞の培養実験において、単独で培養する場合より、アストロサイトを混ぜた場合の方が、より効率の高い神経線維形成が認められる。
また、アストロサイトは神経細胞間でシナプス伝達の経路となる”スパイン”に絡みついて、スパインを安定させ成長を促す。グリア細胞との接触度合いが高いスパインほど、神経細胞間の伝達を行う”シナプス”が成熟し、連絡が安定化する。

・神経幹細胞機能
 アストロサイトは、自ら神経幹細胞として分裂し、神経細胞を生み出すことが、最近の研究で証明された。アストロサイトから脱分化(分化する前の細胞の状態に戻ること)して、神経幹細胞となること、また再び神経幹細胞から分化してアストロサイトになることが解っている。これは網膜内に存在するミューラー細胞(アストロサイトと同じ細胞)でも同じ現象が確認されており、網膜組織内の実験において、脱分化して形成された神経幹細胞が自己複製能を持ち増殖すること、神経細胞集合体を形成することなども確認されている。
これは、アストロサイトが自ら神経細胞を生み出して、神経回路を形成していくことを意味していると同時に、損傷して失われた中枢神経細胞が、アストロサイトの働きによって復活する可能性を持っていることを示している。

・グリア-神経細胞回路網の構築機能
 アストロサイト同士は、ギャップ結合(169453参照)によって結合し、物理的細胞間連絡を行うことが確認されている。これによって、アストロサイト内のカルシウムイオン(Ca2+)の変動が、Ca2+ウェーブとして、発生した細胞から周辺の細胞へと広がっていく。このウェーブによって引き起こされるアストロサイト網の興奮は、神経回路へも伝達され、神経回路全体の興奮(ここでは情報伝達を意味する)を誘導する。
このことから脳神経回路とは、神経細胞間のシナプス伝達と言う平面的なネットワークではなく、グリア細胞(アストロサイト)間の伝達(Ca2+ウェーブ)、グリアー神経細胞間の伝達、神経細胞間の伝達(シナプス伝達)と言うように立体的に構築された、「グリアー神経細胞回路網」となっていると言える。

以上のようにアストロサイトは、脳神経回路網の支持、修復、発生誘導、回路形成を行いながら、自らも複雑なネットワークを形成して、神経回路網の複雑な情報処理の一翼を担っている。
アストロサイトとは、一言で言えば「神経回路の繋ぎ役」と言える。

■脳神経回路網は、脳神経細胞とグリア細胞の協働によって構築される。

これまで見てきたように、発生過程でおおまかに形成された脳神経回路は、「神経回路の繋ぎ役」アストロサイトによって複雑に繋がれながら、一方で「神経回路の整理役」ミクログリアによって、不要な回路が整理され、最適で機能的な形に完成され、また維持されていく。
すなわち、「脳神経回路網とは、脳神経細胞とグリア細胞の協働によって構築される」と言える。

なお、高度に発達した生物ほど、脳神経細胞に対するグリア細胞の比率が高くなる。グリア細胞の数は諸説あるのだが、東京大学医学部 岡部繁男教授によれば、ねずみで(脳神経細胞に対するグリア細胞の比率が)0.4倍、猫で1.4倍、人間で1.8倍、鯨で6倍となっており、基本的には運動能力が上昇するほど、又、脳機能が発達するほど比率が増える。
このことは、脳回路にとって、神経回路の絶対量だけでなく、グリア細胞の量が極めて重要になることを示していると言える。言い方を替えれば、「高度な脳神経回路網を形成・維持するにはグリア細胞が必要不可欠となる」とも言える。

なお、脳神経細胞の絶対量は個人差は小さいが、グリア細胞の比率はかなりの個人差があり、天才として知られるアインシュタインのグリア細胞比率は、常人のそれより飛びぬけて多かったことが知られている。

<参考文献・論文>

  ・第15回 神戸バイオサイエンス研究会 
    網膜グリア細胞由来神経幹細胞について
    神戸大学医学部附属病院 藤井 繁樹助手
  ・科学技術振興機構構報 第301号
    グリア細胞による変性神経線維の貪食除去機構
    元論文:マサチューセッツ工科大学 医大学院 粟崎 健他
  ・独立行政法人理化学研究所、独立行政法人科学技術振興機構
    グリア細胞の接着によって完成する神経細胞の成熟
  ・細胞工学 2003年NO.4 VOL.22
    序.グリアーニューロン回路網の概念
  ・NHK サイエンスZERO 2008年3月8日 第200回放送
    脳の知られざる主役 グリア細胞
  ・HP BRAIN リンク
  ・ウィキペディア 「グリア細胞」

西谷文宏

2015年3月 5日 (木)

原始マクロファージからリンパ球細胞への道程2

●えら呼吸の始まりと共にT細胞やB細胞のご先祖さまが出現

>(C)腸管が発達し、形態変化するようになると、腸の上部での呼吸、下部での消化吸収というように機能が分担されるようになった。えらと肝臓ができてくる。今から5億年前、えら呼吸の始まりが脊椎動物の出現に並行する(魚の先祖のホヤの幼生)。皮膚、えら、腸、肝臓といった外界と近接している部分に、そろそろT細胞やB細胞のご先祖さまが出現する。リンパ球の発生は、微小な異物に対処するための必然的な出来事だった。古いタイプのT細胞(NK細胞と胸腺外分化T細胞)と古いタイプのB細胞が生まれた(リンパ球進化の第2段階)。

>(D)えら穴から酸素を取り込むときに、穴のまわりの皮膚が次第に近寄って、皮下のリンパ球を包み込み、原始胸腺が形成される。臓器の多様化と分業が進む。腸は消化吸収に専念し、造血機能は肝臓にまかされた。えらは酸素の取り込みを本業とし、胸腺にリンパ球の製造をまかせるようになった(リンパ球進化の第3段階)。

●両生類進化=上陸により造血組織が腎臓から骨髄に移行

>(E)今から3億6千年前、生物は淡水魚から両生類に進化して上陸に成功する。えらから肺への呼吸器の転換とともに、造血組織が腎臓(前腎)から骨髄になる。魚類の排泄器官である腎臓に異物や細菌が集まることから、ここで顆粒球をつくるようになる。魚類の腎臓は脊椎の腹側にあったが、上陸に際して「これを守るために、人間の胎児と同じように、腎臓を分節状にして、発達する骨によってまわりをくるりとひと包みすることによって、骨髄がつくられたのである。」(232頁)

●ご先祖様であるマクロファージをいつも忘れずに免疫を考えること

>多細胞生物の「分泌作用」は単細胞生物の「排泄作用」と同じである。などという発想はふつうの顕微鏡人間にはなかなか思いつくものではない。著者はリンパ球の進化を明らかにし、「抗原-抗体反応」を担っていない古いタイプのリンパ球がなおわれわれのからだを守っていることを突き止めた。
>「未来免疫学」のエッセンスは「顆粒球、リンパ球の2本立てに、そのご先祖様であるマクロファージをいつも忘れずに免疫を考えること」である。

山澤貴志

2015年3月 2日 (月)

原始マクロファージからリンパ球細胞への道程

原始マクロファージからリンパ球細胞への道程について、安保徹著の「未来免疫学」に仮設が提起されています。

以下は北海道在住の「手稲山人」さんの読書録からの転載です。
リンク

●原始マクロファージから「接着」の能力を受けついだのがリンパ球
●貪食作用のあるナチュラルキラー(NK)細胞は最も古いタイプのリンパ球

>顆粒球もリンパ球も元はマクロファージであった。原始マクロファージから、その2つの能力のうち「接着」の能力を受けついだのがリンパ球であり、「異物を食べ込む力」を高めたのが顆粒球である。リンパ球は、マクロファージの食べる能力を失った代わりに異物との接着を専業とし、T細胞レセプターや免疫抗体といった接着分子の多様化によって接着の能力を「認識」の能力に高めた。リンパ球の中でも分泌顆粒をもち貪食作用のあるナチュラルキラー(NK)細胞は最も古いタイプで、最も洗練されているのがT細胞(i.e.胸腺由来T細胞)ということになる。著者の発見した「胸腺外分化T細胞」はNK細胞的要素を持っていたり、レセプターの数が少なかったり、「自己応答性」を持っていたりして両者の中間に位置することになろう。

●単細胞から多細胞へと進化するときマクロファージが防御細胞として準備された

>(A)生物が単細胞から多細胞へと進化するとき、はじめにできてくるのが、からだをおおう皮膚(外胚葉上皮)と口から肛門までの腸管(内胚葉上皮)である。皮膚は海水にさらされており、腸にはあらゆる異物や有毒物質が入ってくる。まず、この2つの部位で、元祖白血球であるマクロファージが防御細胞として準備された。

●二胚葉生物から三胚葉生物への進化段階でNK細胞の原型ができた

>(B)内胚葉と外胚葉だけの二胚葉生物(クラゲなど)から三胚葉生物(線虫などの寄生虫からミミズなどの環形動物)へと進化し、臓器の多様化の前段階である腹腔ができたころ、原始顆粒球ができ、同時に原始リンパ球としてのNK細胞の原型ができたのではないかと想像する(リンパ球進化の第1段階)。

山澤貴志

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