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2015年3月26日 (木)

ウィルス=大進化が生み出した生物の断片

175509で展開したように、レトロポゾン、トランスポゾンがウィルスを生み出した可能性は非常に高いが、問題は何時、どのようなプロセスでウィルスが発生したのかと言う点である。
 
 ウィルスの誕生は、大進化時におけるレトロポゾンの増大と密接に結びついていると考えられる。
 
 175503で先述したように、生物はこれまで「真核生物の誕生」「多細胞生物の誕生」「脊椎動物の誕生」の3回、劇的な大進化を遂げている。この大進化の度にレトロポゾンが増大しており、更に「哺乳類の誕生」から「狭鼻猿類~霊長類」にかけて、レトロポゾンが爆発的に増大している。

 生物が何らかの逆境下において、大進化を遂げる為には、遺伝子を変異させる必要がある。しかし、単に遺伝子を組み替えただけでは、より複雑な躯体を生み出すことはできないので、ゲノムサイズそのものを拡大する必要が出てくる。
 そこで利用されたのがレトロポゾンによるゲノムサイズの拡大だが、正確には、レトロポゾン以外にDNAの重複(同じ遺伝子を2つ持ち、一方を機能の発現に、一方を変異の蓄積に利用する)によっても、ゲノムサイズを拡大することができる。
 
 「真核生物の誕生」「多細胞生物の誕生」「脊椎動物の誕生」の3回の大進化過程においては、レトロポゾンよりも、主要にこのDNAの重複を利用して、ゲノムサイズが拡大されている。
 一方、「哺乳類の誕生」以降は、主要にレトロポゾンによってゲノムサイズが拡大されていることが解っており、これが、「哺乳類誕生」以降のレトロポゾンの爆発的増大の原因となっている。
 人類のゲノムを解析すると、実に4割をレトロポゾンが占めているが、線虫では1%も存在していない。「哺乳類誕生」以降のレトロポゾンの増大が如何に爆発的であるかが解る。
 
 以上の観点から、ウィルス発生のプロセスを仮説立てしてみると・・・
 
 各大進化過程におけるレトロポゾンの増大時期、コピー途中のまま、もとのゲノムに挿入されなかったレトロポゾンのコピーRNAが核外に流出。通常、核外に流出した異常遺伝子は酵素等の働きにより分解されるのだが、 ”たまたま”このような分解を免れたレトロポゾンのコピーRNAが、リボゾーム(RNAからタンパク質を合成する装置)によってタンパク質を合成。RNA、DNAはそのままでは細胞膜を通過できないが、タンパク質とRNAが一体化することで、細胞外へと出る事ができたものが存在した。これがウィルスの原型となったのではないだろうか?
 
 先述したように、通常時は変異抑制の為、レトロポゾンの働きは強固に抑制されているが、大逆境→大進化時は進化の為にこの抑制が解かれる。この時期に、レトロポゾン(正確にはレトロポゾンのコピーRNA)が核外に流出したとしても不思議はないし、急激な増大時期であれば、流出後の酵素分解を免れるものが存在する可能性も十分に高くなる。
 哺乳類以降、特に霊長類を宿主とするウィルスの量が圧倒的に多いのも、レトロポゾン量の増大と結びつけて考えれば辻褄が合う。
 
 また、トランスポゾンも、大進化時には遺伝子組み換え→変異誘発の為に積極的に利用されたと考えられる。レトロポゾンと同じように、この過程において、移動中のトランスポゾンが核外へと流出→タンパク質合成→タンパク質と一体化して細胞外へ流出したものが存在しても不思議はない。

 このような大進化過程において流出したレトロポゾンが(逆転写型を含む)RNA型ウィルスの原型となり、同じく流出したトランスポゾンがDNA型ウィルスの原型となったと考えられる。

すなわちウィルスとは、「大進化が生み出した生物の断片」と言えよう。

参考文献:日経サイエンス別冊146号 「崩れるゲノムの常識」
       BLUE BACKS 「DNA学のすすめ」

西谷文宏

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