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2015年6月21日 (日)

【微生物共同体の事例】 土壌微生物と解毒

微生物による農薬の分解を研究されている方が、微生物の共同性について述べておられました。以下、抜粋して紹介します。リンク (←本文は図入りでわかりやすいのでそちらも読まれる事をお奨めします)

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現代の農薬の構造は,ベンゼン環やヘテロ環がたくさん繋がっていたりして複雑であるが,畑や水田の微生物はたいていこれらを,それなり時間はかかっても(余り早いと薬効がなくなる),水や二酸化炭素まで分解するか,土の有機成分に取り込んでしまう。~中略~ 微生物達は頼まれもしないのにどんどんそういった人工化学物質を分解してくれるのである。これは人間のためではなくて自らの住処である自然環境を守るためと考えるべきであろう。

(中略)

ヒトの体内に薬剤などの異物が入り込んだ時,免疫系が働き,それを解毒しようとする。自然生態系においてもまったく同様の解毒反応が起こる。環境中の微生物はさしずめ抗体かマクロファージあたりに相当するといえようか。

(中略)

最近取り組んでいるのは,河川生態系モデルを構築し,そこでの農薬分解性微生物を調べるといったものである。モデルといっても要は川から水と砂を取ってきて瓶詰めするだけなのであるが,これで結構面白いことが分かってきた。
アトラジンという除草剤(トリアジン環の炭素を14Cで標識したもの)をこのモデルの水に加えてやると,砂の中に生息している分解能力を持った微生物がそれを感知し,増殖を始める。ただしアトラジンの分解はすぐ起こるのではなく,いわゆるラグタイムというものがあって2週間前後はただ砂に吸着されて減少するくらいである。それがラグタイムを経過すると突然急速な分解が始まり,一週間程度で水中のアトラジンは消失してしまう。どうやらアトラジンを分解する微生物はラグタイムの期間中は砂の中あるいは表面で増殖し分解は行わないようなのであるが,ラグタイムが終了すると(それがどうやって決まるのかは不明かつ興味深いのだが)菌体がいっせいに水中に浮遊し,分解を開始する。

(中略)

全体としてみると,アトラジンを完全にH2O+CO2+NH3まで分解(無機化)するには少なくとも2種類の微生物が係わらなければならないことが分かる。アトラジン分解菌を単離(平板培地上に純粋培養すること)して調べてみると,これらは実際にアトラジンをシアヌール酸まで分解するものがほとんどであった。ただし1%くらいの確率で無機化できるものが見出された。しかしこれらはよく調べてみると2種あるいはそれ以上の細菌の混合であることが分かった。最初は偶然のコンタミ(雑菌混入)かとも思われたがどうやらそうではなく,アトラジンを分解するという目的のもと,必然的にくっついて存在していた(共同体)ようなのである。

ある目的を持って集まっている微生物共同体というのは,実は自然環境中ではかなり重要であるらしい。よく知られている例では,嫌気的にブドウ糖が分解(メタン発酵)される場合は少なくとも3~4種の微生物の関与が必要であること(好気的なら単独で分解できる菌はごく普通に存在する),あるいはメタン生成古細菌は種類により必ず特定の酢酸生成菌と共生し,水素の供給を受けているらしい。また,植物体内に共生する絶対嫌気性窒素固定細菌は,好気性菌(酸素を消費する)と共存することにより,嫌気的環境を得ているという報告もある。

農薬など化学物質の分解においても,同様の共同作用は当然起こりうるであろう。例えばイソプロチュロンという尿素系の除草剤では,ある分解菌1種だけでは分解は遅いが,他の特定の菌と混合すると非常に分解速度が速まるという。これはある特定のアミノ酸の供給によるらしい。あるいは反応の途中で生ずる有害な代謝物を分解除去することで共同体全体での分解を促進するという細菌も報告されている。このような例は分かりやすいが,これ以外にもおそらくは様々な様式で分解菌を援助する共同体メンバーが存在しているのではなかろうか。筆者のアトラジンでの例では,分解過程のA→BとB→Cをそれぞれ分担して担当しているとすればそれはごく単純で教科書的な共同体であるが,そう単純ではない。あるいは第2,第3の微生物が存在して,何らかの(かなり必須な)援助をしている可能性も否定できない。

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環境を一定に保つことは、異物を分解する微生物にとって重要なのでしょうが、環境=生態系を構成する生物全体にとって有意なものです。押し広げて考えれば、微生物の共同体に限らず、生物全体が「共同体」であると思えてきました。

多田奨

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