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2015年8月23日 (日)

ほ乳類の戦い-2

ほ乳類の戦い-1 のつづき
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<4700万年前のヨーロッパ>
一見、ほ乳類の楽園のようだ。カンガルーのようなほ乳類、「レプティクティディウム」。馬の祖先のほ乳類、「プロパレオテリウム」。恐竜が消えたことで確かな繁栄が始まっていた。
しかし、恐竜の直系子孫、巨大な鳥「ガストルニス」。強力な足を武器にほ乳類を餌食にした。
敵は、これだけではなかった。猿の仲間で、霊長類の一種「エウロポレムール」の足の化石。かすかに窪んだような跡が見える。化石の足に二本の亀裂。それは、噛み跡だった。何がかみついたのか?

「エウロポレムール」を襲ったのは、「ディプロキノドン」だった。既に、現在のワニと変わらない姿をしていた。木の上も安住ではなかった。水辺は、強力なワニの王国だった。メッセルの頂点にあったのは、は虫類のワニだった。ほ乳類は、鳥とワニに食べられる存在だった。

恐竜や鳥やワニと違って、私たちほ乳類は、か弱い存在だった。しかし、この後、大逆転劇を演じることとなる。その原動力は「恐竜時代はずっと弱かった」ということだった。それはどういうことか?

ほ乳類逆転の特徴とは何か?
恐竜時代末期に生きていたほ乳類。特に変わったところがない。ねずみのような姿。平凡だ。特殊化されていない体型。変化が可能だ。
ワニは、水辺で生きるため、特殊性が強すぎた。恐竜がいなくなり、陸上に空白が大きくなっても、ワニの身体があまりにも特殊だったため、適応できなくなり、進出できなかった。
一方、ほ乳類はワニとは対照的だった。夜行性で恐竜から隠れるように行動した。たくさん食べられなかった。原始性のままだった。多様な姿形になることができたのは、祖先の原始性による。

「ガストルニス」。鳥は身体を軽くするため、色々なものを失っていった。身体を軽くするため、牙もなくなっていた。前足もなくなっていた。恐竜から鳥へと変わるために身体を改造させてしまっていた。それは、恐竜がいなくなった世界に於いてはハンディだった。「ガストルニス」は間もなく絶滅した。

それとは対照的に、私たち祖先は、特殊化していなかったので、生き延びることが出来た。様々に進化した。だから私たちほ乳類が恐竜に取って代わることが出来た。

<300万年前、南北アメリカ>
南米大陸の「ティラコスミルス」、有袋類。北米大陸の「スミロドン」、有胎盤類。この両者は、違う種類なのに、なぜそっくりなのか?
「スミロドン」の祖先は、1億2500万年前に存在した「エオマイア」で、一方、有袋類「ティラコスミルス」の祖先も、ちょうど同じ頃、1億2500万年前に出現していた「シノデルフィス」だった。有袋類と有胎盤類は同じ年月を進化に費やしてきた。

その間、大陸は分裂を続けていた。それぞれ存在していた場所の大陸に運ばれた有袋類は、孤立した大陸の、オーストラリアと南米に。一方、有胎盤類は北米やユーラシアなど、北半球で進化した。それぞれの仲間は、違う大陸で瓜二つの動物を創り出した。

270万年前、長い間、離ればなれだった南米と北米が陸続きになった。北の王者スミロドンは、南米に渡ったことが分かっている。その結果は、あっけないものだった、南米の王者ティラコスミルスは絶滅してしまった。代わって君臨したのは、スミロドンだった。南北アメリカで、つい最近、1万年前まで繁栄を続けた。
両者の運命を分けたのは何か?スミロドンの脳の方が、ティラコスミルスの1.5倍あった。有袋類は有胎盤類よりも脳が小さめだった。それはなぜか?

有袋類の妊娠期間が脳の大きさを制限する要因になっている。アカカンガルーは、人と同じ大きさ。妊娠期間はわずか1ヶ月で、体重1g。人間の赤ちゃんの3000分の1だ。豆粒のような赤ちゃんにとって、乳首は命綱。生きるため自力で乳首を咥え続けなければならない。そのため、口の周りだけでなく、頭蓋骨全体がかなり早い段階で、固まってしまう。そうすると、その後の発達は、限定され、脳が大きくなることが制限される。
しかし、私たち有胎盤類の赤ちゃんは違う。母親の身体が許す限り、最大限、脳を大きくして生まれ変わることが出来る。産まれた後も母乳を飲む時間は、短くて済む。長い妊娠期間がなければ、どんなほ乳類でも脳を進化させるのは、不可能だ。その点、有袋類の妊娠期間は短すぎるのだ。

私たちの祖先は、胎盤という繁殖術の先に脳を大きくする道が繋がっていたとは全く知らなかったはずだ。何も知らないまま歩んだ道。それが今の私たちにとって、かけがいのない幸運な道となった。

さらに、もう一つ、祖先が脳を大きくした幸運な事情があったという。それは、大陸の大きさだった。有袋類がいたのは、南米やオーストラリア。どちらも数千万年にわたって孤立した島大陸だった。
ところが、有胎盤類が進化した北半球では、他の大陸同士が何度も繋がった。北米ヨーロッパ、インド・アジアなど。広い大陸で生きていた有胎盤類は、多くの困難や試練に遭遇した。競争相手も多かった。環境の変化も激しかった。
多くの問題を解決する必要があった。つまり、大きな大陸にいたからこそ有胎盤類の脳が大きくなるという進化が促された可能性がある。

このように見てくると、私たちが今、繁栄している背後には、偶然の連続としか言いようのない歴史がある。
そもそも、隕石の衝突がそうだ。偶然、恐竜が絶滅したことは、ほ乳類にとって間違いなく幸運だった。そして、大陸移動が私たちに広い世界と多くの試練を与えたことで、結果として子孫には恵みとなったのだ。
そのおかげで、私たちの今がある。大きな脳を持った有胎盤類。中でも特に脳を大きくしたのが、私たち人間だ。とりわけ、私たち人間の祖先は、厳しい試練にさらされてきたと言っても過言ではない。もともと、私たちの祖先の住み家は、アフリカの森だった。現在のチンパンジーを似た暮らしをしていたと考えられる。その後、乾燥化が進み、森の多くが消滅した。

人の進化で重要だったのは、人は食べられていたという事実だった。速く走って逃げたり、身体に鎧を纏って守ったりするなどの進化は、今更難しかった。そこで、祖先は、社会性を発達させ、知能を使い、食べられることを避けたのだ。それが脳の大型化をもたらした。草原という生存競争が厳しい世界。肉食獣には、もともと木の上で生活していた祖先は対抗できなかった。もしかしたら、残されていたのは脳を大きくするという道だけだったのかもしれない。

私たちの今あるまでの道程は、決して平坦ではなかった。試練の連続だった。しかし、そうした試練があり、それを乗り越えたからこそ今がある。長い時間の末に届けられた今の命。今ある命は、過去からの贈り物だ。
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(以上)

匿名希望 

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