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2015年10月13日 (火)

【大気の歴史】7~「酸素発生型光合成生物(シアノバクテリア)」の登場 → 海中での酸素の増加

現在の地球の大気中には、約21%の酸素(O2)が含まれている。
しかし、初期大気には、水素に還元されて水(H2O)として含まれていても、遊離酸素O2としてはほとんど含まれていなかった。それがどうして大気中に含まれるようになったのか?

およそ20億年前までの海の地層の中には、海底に沈殿した鉄鉱物と石英とが繰り返して縞状の地層をつくっている「縞状鉄鉱層」が頻繁に含まれている。
この縞状鉄鉱層ができるためには、酸素の少ない状態で海中にとけ込んでいた鉄の二価のイオン(Fe^2+)が、酸素にふれて水に溶けにくい三価のイオン(Fe^3+)に変化し、水酸化鉄(酸化鉄)になって海底に沈殿することが、海中で周期的に起きることが必要になる。
地層の中に縞状鉄鉱層があるということは、当時の海洋が酸素に乏しい状態であり、かつ、何らかの要因で海洋の中に周期的に酸素が供給されて鉄鉱物を沈殿させていたことを示している。

その酸素の供給源は、オゾン層のなかった当時、太陽から降り注いでいた紫外線が水蒸気(H2O)を分解して水素と酸素に変えていたことが考えられる。確かに、当時の大気中の酸素分圧は紫外線による水の光分解によって決まっていた。しかしながら、その濃度は現在の5.0×10^9乗分の1以下とも考えられており、その僅かに生成された大気の酸素が海中に取り込まれ、縞状鉄鉱層を形成する可能性は低く、かつ、それでは鉄鉱物と石英が繰り返して縞状の地層をつくる説明とするには難しい。
それよりも、38億年前に海が形成され、35億年前に生物が誕生(原核単細胞生物)したあとに登場した「光合成生物(リンク)」が重要な役割を果たしていたと考えられている。

◆ ◆
始原生命は、海中の有機化合物(糖質、脂質、タンパク質)を栄養源に繁殖してゆくが、海中の有機化合物が減少するという生存の危機に直面すると、硫化水素(H2S)や亜硝酸(HNO2)などの簡単な化合物を酸化してエネルギーを得るという『化学合成生物(リンク)』が登場する。
ここに、海中に存在する栄養源を直接摂取する「従属栄養生物(リンク)」から、自ら栄養のエネルギーをつくり出す「独立栄養生物(リンク)」への大進化を起こす。

しかし、硫化水素(H2S)や亜硝酸(HNO2)などの化学物質も限界があり、生存の危機に直面する生物のなかから、太陽からほぼ無尽蔵に降り注ぐ光エネルギーを使い、自ら栄養のエネルギーをつくり出す『光合成生物』が登場する。
ただし、初期の生物は、独立栄養生物で嫌気性菌(リンク)であったため、光合成する微生物も酸素発生を行うものではなかった(リンク)。

ところが、海中に取り込まれ充満する二酸化炭素と水から有機物を合成し酸素を廃棄して自分の体を作る『酸素発生型光合成』を始めるという、生物史上最大の劇的な進化を遂げ、地球の自然環境を全く違う世界に大転換させる生物が登場する。
とりわけ、「シアノバクテリア(藍藻)リンク」は有名で、シアノバクテリア類の死骸と泥粒などによって作られる層状の構造をもつ「ストロマトライト化石(リンク)」から、27億年前にはシアノバクテリアが大繁殖したと推定されている。

25~20億年前に北米やオーストラリア、アフリカ、中国などで大量の縞状鉄鉱層が形成されたのは、酸素を発生させるシアノバクテリアの活動が盛んになると酸化鉄、逆に活動が衰える冬場には砂、という“鉄→砂→鉄→砂→・・・”の繰り返しによると考えられている。

◆ ◆
ところが、縞状鉄鉱層は、19億年前よりも新しい時代にはほとんど出現しなくなる。
これは大気に酸素が含まれるようになり、鉄が二価のイオンとしてとけ込むことが難しくなったことを示しており、地球の大気に少しずつ酸素が増えてきたと考えられる。

また、20億年前以降の陸上の河川底に堆積した岩石(堆積岩)に、大気中の酸素によって「鉄成分が酸化され赤色を呈する砂岩(旧赤色砂岩)」が見つかっている。この岩石は20億年前より古い地層からは産出していなく、このことから、20億年前以降には鉄を酸化させるほどの酸素が大気に存在したと考えられる。

上記の2つの証拠、「縞状鉄鉱層の形成年代」と「大陸部赤色砂岩の出現年代」から判断すると、30億年前頃に登場し27億年前に大繁殖したシアノバクテリア(藍藻)により放出された酸素は、少なくとも20億年前までは大気中に蓄積は起こらず、海中の鉄や硫黄の酸化に使われていたと考えられる。
そして、光合成活動は鉄の沈殿の有無にかかわらず、豊富な二酸化炭素を使って進行した結果、20億年前頃に海水中の溶存酸素が増え、海水と平衡状態にあった大気中の酸素分圧が増えたと推定されている。

そして大気の酸素分圧が上昇するほど海中の酸素濃度が上昇したことにより、それまでの生命を育んできた海洋の性格が「還元的な環境から酸化的な環境」へと大きく変化し、それが生物の進化に大転換を引き起こしてゆく。

麻丘東出

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