千島学説の原理を読み解く~第四原理⑧ 「細胞新生説」細胞が分裂するという定説は間違い
「細胞が分裂する(定説)」も「細胞が新生する(千島氏)」のも結果的には新たに細胞をつくりだすということでは同じことをしていると感じるが、お互いが対立しているが何を問題にしているのだろうか?疑問に感じた。
生物として「新たに細胞を作り出す」と選択したということは、何かしら意味があるのだろう。
まずは、定説と千島氏の説を比較して見ていきます。
血液と健康の知恵 著者:千島喜久男 より引用
(1)従来の定説
「細胞は細胞の分裂によって生ずる」は1859年ウイルヒョウが、細胞病理学を著して以来、世界の学界の定説となり生物学上の金科玉条になっている。
この不動の定説に対し、勇敢にも始めて挑戦したのはソ連の細胞学者O.B.レベシンスカヤ女史('37-'56)である。
(2)レペシンスカヤの細胞新生説
彼女は細胞は細胞構造を持たないオタマジャクシの卵黄その他のものから生ずることを発見して唱え出した。この発見が始めて日本に伝わったのは世界大戦が終わったあとの1951年だった。
伝研の草野氏がこれを訳して岩波の"生物科学"誌(3巻4号)に紹介したことに始まる。
これは日本の生物学界に大きなショックを与えた。その時、佐藤七郎、飯島衛、吉松広延氏等はある程度好意的な反応を示したが当時日本の血液学会会長をしていた京大の天野重安教授は頭下し、否定的な態度を示した。
その時岩波の生物科学の編集をやっていた八杉竜一氏は私の細胞に関する研究を知っていたので、私にも意見を発表するようにすすめられた。そして、私の説は生物科学のその次の号(1952.第4巻1号)に発表した。
実は私はレペシンスカヤの発見とは全く独立的に、細胞は新たに生ずるものであることに気づいていた。それを発表したわけである。そんなわけで、細胞新生説の最初の発見者はソ連のレシペンスカヤ女史であり、私の説はそれとは別個に発表したわけであり、細胞新生説の内容にみても大分違っている。
即ちレペシンスカヤの説はオタマジャクシやニワトリの卵黄球、チョーザメの卵黄球、ヒドラのすりつぶしたものや卵白などから細胞新生説を唱え、新生した細胞は細胞分裂によって増殖するというのである。これは、細胞新生説と細胞分裂説とを共に含む折衷案である。
(3)レペシンスカヤの説と私の説との違い
ところが私の細胞説はこれより遥かに広範囲なものでオタマジャクシやニワトリの卵黄球を始め人間や哺乳類の赤血球は腸の食物モネラから生ずることや、その赤血球は無核であるからまだ細胞ではないが、その無核赤血球から有核の白血球を生じ、更に生体の凡ての体細胞や生殖細胞を生じ、病的の場合はガン細胞や炎症の部分の諸種細胞、外傷の治癒組織細胞も赤血球から細胞新生によって生ずること(第一原理赤血球分化説)を発見し、発表してきた。
そしてレシペンスカヤと大きく違うことは、レ女史は新生した細胞は細胞分裂によって増加すると唱えたのに反し、私は殆んど凡ての細胞分裂は不自然な環境の下で生ずる一種の人工産物(アーチファクト)であり、正常な生体内での細胞増殖は細胞分裂ではなく、細胞新生によるものであることが多くの事実と理論から結論することができると考えている。
(中略)
(7)細胞分裂説への疑問点
(略)
細胞分裂像は教科書に書いてあるような定型的なものはメッタに見られるものではなく、時たま分裂の或る段階にあるものと云われているものが見られても、それは真に細胞が分裂する時の一過程ではなく、却ってその反対の細胞が融合し、細胞核が新生している状況を誤り解したものが多い。
(8)肝細胞には大抵2個またはそれ以上の細胞核があるわけ。
この核が間接分裂で増加したものか直接分裂で増えたものかは現代生物科学でも確証されていない。私見によればこれは、いずれも誤りである。肝細胞が赤血球のAFD現象によって生ずる時、赤血球塊(血球モネラ)の中に2個またはそれ以上の数の核が核の分裂によってではなく、各別個に新生してくる状況がよく認められる。 またガン細胞も同様に血球モネラから細胞核を新生するが、その際、始め2-3個の核ができ、いわゆる異状(または3極性)核分裂像といわれるものがよく見られるが、これも核分裂ではなく、同時に2個以上の核質が出現して、遂にはそれらが融合して一個の大きい核になるのである。その証拠にガン細胞は小さい細胞から急に大きくなることでも解る。
(9)赤血球の細胞質放出による白血球形成
赤血球は(哺乳類の無核赤血球でも鳥類以下の有核赤血球でも)、組織培養をして観察してみると赤血球の一側が凹み、その細胞質を外部に放出し、あたかもヒョータンのようになり、細胞分裂を思わせるような形となり位相差顕微鏡で見ていると72時間ほどの経過で、その中に細胞核が新生するのを見ることができる。
また、骨髄組織を取り出し、塗抹染色標本を造って見ると数個の赤血球が共同してその細胞質を放出して、最後には数個の赤血球の細胞質を出し合って大きな白血球(骨髄細胞)をつくる状態をも観察することもできる。
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