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2016年3月14日 (月)

サル・人類の脳の拡大を支える、哺乳類の脳のしくみ

サル・人類の脳は、共認機能の獲得→観念機能の獲得へと進むにつれ、どんどん進化し大きくなっている。その仕組みはどうなっているのか?
サル・人類のそのもととなっている哺乳類の脳。哺乳類の段階で他種よりすでに脳は大きい。
哺乳類の脳には、すでに大きくできる何らかの仕組みがあったはず。

以下、哺乳類の脳は、同じ遺伝子が脳と骨の形成の双方に深く関わっているという仮設を紹介する。生命誌ジャーナル「標本から発生、そして進化を知る」リンク より転載。
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1.多様な形を生むしくみとは?
哺乳類の仲間は約6000種、地球上の陸・海・空・地中とさまざまな場所で暮らし、それぞれの生活に適した多様な姿をしている。この形態の多様化には、進化の過程で、胎子の成長の仕方が変化したことが関わっていると考えられている。なかでも、発生の各段階が起きるタイミングや、発生速度の変化が形態の違いを生む大きな要因になるはずだと予測されてきた。

(中略)

3. 哺乳類の頭蓋骨形成の共通点
化石の研究から哺乳類は約2億年前に誕生し、夜行性であっために鋭い嗅覚、聴覚を備え、それまでの脊椎動物に比べて大きな脳を獲得したと考えられている。例えば、哺乳類の最も古い化石種の一つとされるモルガヌコドンでは脳内の嗅球、旧皮質、新皮質、小脳の拡大が見られる。
今回、102種の哺乳類と哺乳類以外の32種の脊椎動物(は虫類、鳥類)で頭蓋骨の形成過程を比較したところ、脳を覆う5つの骨片(前頭骨、頭頂骨、底後頭骨、外後頭骨、上後頭骨)が形成される相対的なタイミングが哺乳類で著しく早いことがわかった。この5つの骨はモルガヌコドンで拡大した脳の領域の多くを覆っているものでもある。

4. 大きな脳をもつ種はどこが違うのか
 次に哺乳類の中での比較を行ったところ、脳を覆う5つの骨片の中でも特に上後頭骨の形成タイミングが、脳の大きさと強く関わりあっていることがわかった。哺乳類のなかでも脳の相対サイズが大きいサル類、クジラやイルカ類、モグラ類、トビネズミ類などのグループでは、上後頭骨の相対的な形成タイミングが特に早いのだ。さらに、サル類の中で最も脳の相対サイズが大きい、私たちヒトの上後頭骨の形成タイミングは、サル類の中で最も早いことも示された。哺乳類以外の脊椎動物では、上後頭骨は相対的にかなり後期に形成される。哺乳類の共通祖先でその形成タイミングが前倒しされ、さらに大脳化した一部の哺乳類でより一層早くなったと考えられる。

5. 偶然と必然が重なりあって起こる形の進化
なぜ上後頭骨の形成タイミングが脳のサイズと連動しているのだろう。考えられる仮説に機能論的シナリオと多面発現シナリオの2つがある。 機能論的シナリオとは「脳が早いスピードで大きくなったのでそれを早く覆い守るため、骨の形成も早くなった」という仮説だ。直感的に受け入れやすく魅力的な仮説だが、骨形成の開始が早くなることが骨の最終的なサイズの拡大進化につながるかどうかは未検証のため、この仮説を裏づける確かな証拠は今のところない。
一方、近年の遺伝学的研究によって上後頭骨の発生と脳の発生は強く関連していることがわかっている。Lmx1bとDlx5という2つの遺伝子が胎子期のマウスの中脳と後脳の発生や軸索形成にきわめて重要な役割を果たすこともわかってきた。ヒトにおいては、これらの遺伝子の機能不全はダウン症と関わっていることが知られている。また、この2つの遺伝子が機能不全の場合、頭部の骨のうち上後頭骨の欠損や、形成の遅れが見られる。同じ遺伝子が脳と骨の形成の双方に深く関わっているのだ。このように、ある遺伝子が複数の形質の形成に影響することを「多面発現」とよぶ。脳が大きくなるという哺乳類の進化の副産物として、脳と同じ遺伝子に制御されている上後頭骨の形成タイミングも早くなったのかもしれない。

もちろんLmx1bとDlx5が哺乳類で脳と骨の双方の発生に関わるようになった背景には、機能論的シナリオがあるかもしれない。機能論的シナリオと多面発現シナリオは必ずしも二律背反の仮説ではない。ただ、現時点では少なくとも後者は脳と頭蓋骨の進化と発生を考えるうえで無視できないシナリオだろう。

(後略)
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哺乳類はもともと、脳と同じ遺伝子に制御されている上後頭骨が一緒に大きくなる仕組みを獲得していた。
サル・人類の共認・観念機能が、更にこの遺伝子による脳拡大の仕組みと連動して、進化してきたのではないか。

村上祥典

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