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2016年3月29日 (火)

動的平衡の中に組み込まれた、波動伝達が生命の証

生物は、外圧に対して恒常性を維持するシステムを持っている。これが外圧適応態である生命の根源的なシステムだ。しかし、その具体的な内容はあまりわかっていない。

例えば、外圧を捉えてどこかの細胞に伝えるための神経という伝達システムは、司令塔として重要だが、すべての細胞を協調させるには少なすぎる。ホルモンの分泌による信号伝達は、もう少し広範囲だが、そのスピードは心もとない。

しかし現実に、すべての細胞が協調することで、私たちは生きている。その協調のヒントが動的平衡にある。

まず、水分子の中の水素原子は、瞬時に離れたりくっついたりして、常に入れ替わりながら、その機能を維持している。水の中に浮かぶ、生体分子も同じで、その構成原子を入れ替えながらも、分子としての機能を維持し続ける。

次に、生体分子自体も分解され、また合成される。これは、傷ついたタンパク質や変性したタンパク質が蓄積して機能(≒秩序)が失われていく前に、それらを体外に排出して機能(≒秩序)を維持していく。言い換えると、増加したエントロピーを体外に排出する、というシステムである。

よく話題になる傷ついた生体分子を発見して、修復する修復酵素のピンポイントの働きの前に、このような広大な秩序維持システムがある。このような、システムの機能を維持しながら、その構成要素である生体分子が常に合成され、同時に分解される反応系を動的平衡と呼ぶ。

が、このシステムにはもうひとつ重要な働きがある。それは、生体分子の相補性に関係している。相補性とは、ある生体分子と、それとぴったりかみ合う生体分子の関係のことをいい、片方の分子を鋳型にして、もう片方をつくるDNAの合成反応などがそれにあたる。

これらの反応は、外圧の変化が少ない場合、生体分子の合成により緩やかに濃度が上昇し、分解によりそれが緩やかに下降するという一定のリズムを持った波動を作り出す。

それが、外圧変化により、相補性のある片方の生体分子が消費されていくと、くっついたり離れたりしているもう片方の生体分子は、減った量を認識し、新しい生体分子の合成を促すセンサーとして働く。

つまり、短時間に繰り返される動的平衡反応そのものが、外圧変化を全身に伝える機能を担う。これも、波動として伝わるが、平常時の緩やかな一定のリズムとは異なる。このような、動的平衡が作り出す、外圧に対応した波動変化の伝達により、生命の恒常性は維持されていく。

これこが、生命の証ではないだろうか?




本田真吾 

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