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2016年4月 4日 (月)

ATP合成と活性酸素発生は生物のメリット・デメリット

哺乳類や鳥類は体温をほぼ一定に保つ機能を獲得し、寒冷期にも活動が可能な種に進化してきてきた。その機構を分子生物学的視点も加えて考察しているサイト(=リンク)を今日は紹介する。このサイトの面白さは、体温の上昇にはATP産生と活性酸素の発生というメリット・デメリットがある点に着目している点だと思う。

            【以下引用】

 哺乳類が爬虫類よりも優れたミトコンドリアを持っているのではなくて、哺乳類はその内臓(肝臓や心臓)に爬虫類の5倍以上の密度でミトコンドリアを持っていたのです。さらに肝心な点は、筋細胞のミトコンドリアの密度は哺乳類と爬虫類の間で差がなかったという点です。筋肉を構成する細胞の大半は筋繊維で占められています。筋細胞にミトコンドリアを詰め込もうとすると、スペースに限りがあるため、筋繊維の量を減らさなければなりません。哺乳類たちは、高い運動能力のために必要なATPを筋肉内で生産するのではなく、内臓の細胞に詰め込んだミトコンドリアによってまかなうように設計されてきたのです。要するに、内温性動物におけるスピードと持久力を担うATP生産と体内での熱生産は、内臓に増やされたミトコンドリアが担当し、強い心肺機能を使って血流を通じて全身に分配している、という説明です。

             (中略)

 しかし、ここで新たな展開がありました。

 食物という高分子の化合物を分解する過程で発生する自由エネルギーを完全に利用してATPを作ることが出来れば、異化の代謝過程とATP合成の過程が完全共役し、原理的に熱は発生しません。逆に、エンジンを空ふかしするように、食物を分解しても酸化的リン酸化の過程が脱共役して、ATPを合成しなければ、自由エネルギーは熱として発散してしまいます。面白いことに、さまざまな脊椎動物からわざわざ脱共役してATP合成効率を低下させてしまうタンパク質が発見されました。これを脱共役タンパクと呼び、褐色脂肪細胞にたくさん含まれていることもわかりました。このタンパクの役割は、ミトコンドリアの内部でATPを作らずにより多くの熱生産をさせることだといわれてきました。

             (中略)

 自由生活するさまざまなバクテリアから多細胞生物のミトコンドリアまで、すべての生物における生命活動はATPによってまかなわれます。ATPを生産する基本的なしくみは全ての生物で同じで、ミトコンドリアの基質から内膜の外へ汲みだされたプロトン(水素イオン)の濃度勾配(浸透エネルギー)を利用してATPを合成します。バクテリアは細胞膜と細胞壁の間にプロトンを貯め、ミトコンドリアでは内膜と外膜の間にプロトンを貯めます。膜間にたまったプロトンはその浸透勾配に応じて内膜に戻ろうとしますが、脂質二重膜を通らず、膜に埋め込まれたATPアーゼと呼ばれるタンパクの中を通って基質に戻ります。その時のエネルギーを利用して、ADPとリン酸からATPが合成されるのです。

 脱共役タンパクは、内膜の外にたまったプロトンをATPアーゼを通さずに膜内に逃がしてしまいます。ATP合成に使われなかった自由エネルギーは熱として発散されるのです。これが、脱共役タンパクによる熱生産とATPの合成速度がトレードオフの関係にあることの分子レベルでの説明です。しかし、脱共役タンパクの役割は熱生産だけではありませんでした。

 脱共役にはフリーラジカルの生成を制御するという役目があることを、ケンブリッジ大学のブランド博士が指摘しました。膜間にプロトン濃度が高まっても、ATP生産の必要が無い時には、ミトコンドリア内膜の電子伝達系にたまった電子が細胞基質に漏れ出し、酸素と反応して反応性が高く細胞を傷つける活性酸素(フリーラジカル)を作ってしまいます。つまり、脱共役タンパクはATP生産の必要性が小さい時に余分なプロトンを逃がし、呼吸鎖をアイドリングさせて熱として発散し、細胞障害を防ぐという役目を果たしているというのです。どうやら、熱生産は、それ自体が自然選択されたのではなく、フリーラジカルを制御する目的の副次的効果だった可能性があります。

            【引用以上】

人間の体温はだいたい36~37℃だが、42℃以上になると極めて危険だと言われている。この5~6℃の差がATP合成とフリーラジカル発生の分岐点になっている可能性さえある。実は、発熱の問題や恒温動物への進化はほとんど科学的に解明されてこなかったらしいが、今後は生物と熱という領域も、新しい研究領域になっていくのではないだろうか。

匿名希望
 

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