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2016年9月16日 (金)

建築学と生物学のあいだ

昨今の建築潮流では、パッシブデザインという言葉も広く浸透してきており、環境共生の考え方が広まってきたのではないかと感じます。
その中で、分子生物学者の福岡伸一氏が建築学と生物学の接点を述べており、今後の環境共生建築や、形態デザインとしても頭に置いておくと面白そうです。

>20世紀的な手法では、快適な住環境を造ろうとした時に、高気密高断熱みたいな方法で、できるだけ外のものが入らないように、工学に偏った形で、がっちりしっかりつくるということになりがちです。
ですが、生物は端からガッチリしっかりつくろうという戦略を放棄しました。結局エントロピー増大の法則には勝てないから、そういう設計思想は破たんすると、生物はわかったわけです。だからむしろ、最初からヤワヤワ、ユルユルな状態に自分の体をつくっておいて、その非常に危うい秩序を守るために、エントロピー増大の法則が襲ってくるよりも先に、常に自らを壊してつくりかえていくという「動的平衡」を選んだわけですね。

また、相補性というのは、生物学のキーワードのひとつです。生命現象に関わる要素はすべて相補的な関係にあって、互いに他を支えつつ、互いに他を律しており、この関係性が、生命の恒常性を生み出し、動的平衡状態を維持しています。
そういった中で、建築学と生物学では共通性があるのではないかと思います。

生物学の考え方でコンパートメントというものがある。原始的な細胞は一枚の薄い細胞膜に取り囲まれた風船のようなものとしてあった。しかし複雑な反応を同時進行するためには、内部に部屋が一つしかないことは何かと不都合を生じる。
しかし細胞膜は自由自在に空間を仕切ることはできない。必ず一枚の閉じた袋としてしか存在できない。そこで細胞はその膜を内部に陥入させることによって、そしてその入口を閉じて、内部に新しい内部をつくった。つまりコンパートメントが増えることは、それだけ秩序が高まる、ということである。

東大のセミナーでご一緒した建築家・伊東豊雄さんの作品には随所に、そのような生物学的な感性をみることができる。彼が設計した台湾のある公共のホールは、曲面が入れ子構造をとっている。たどっていくとどこが表でどこが裏かわからなくなる。その曲面としての膜によって、ホールは内部にコンパートメントを抱きつつ、細い通路を介して外界にも開かれている。内部の内部は外部。それはまるでコンパートメントをつくりつつある動的な細胞の姿そのものだ。
あるいは同じく伊東さんの作品である表参道の白いTOD'S表参道ビル。ケヤキの木を模したファサードであるが、自己複製の仕組みを持ちながら、複製されるパターンはすこしずつ揺らぎ、わずかながら異なる。それでいて互いに相補的な関係を保って、一定の秩序を成している。本当は生物にとって「部分」というものはなくて、ある部分を操作すると、それは必ず、全体に何らかの影響を及ぼします。恐らくこのプロジェクトは、そのことを早い段階から意識されていたのだろうと思うのですが、ケヤキの最初の形をもしフラクタルなどを使ってつくっていたとしたら、非常につまらないものになったのではないかと思います。
参考:リンクリンク



仙人掌

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