多くの多細胞生物は微生物との共生によって生きている“微生物共同体”
人間の栄養摂取は、自身の消化器官の働きだけではなく、体内の微生物(腸内細菌)が、吸収しやすいものに分解したり、必要な栄養素に変換したりしてくれることで成立していることがわかってきました。
昆虫のハムシも、餌とする植物が持つ防衛能力を腸内細菌の力によって抑制し、摂食していることが確認されています。
○ハムシは微生物の力を借りて植物の防衛能力に対抗しているリンク
<Science
Newsline>より
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コロラドハムシ(Colorado potato
beetles)は植物の葉を食する際に、体内に有している共生細菌を使うことにより植物に対して、食べているのは昆虫ではなく、微生物だと誤認識させることで植物の持っている昆虫に対する免疫能力を無効化していることが、Penn
Stateの研究チームの研究成果により明らかとなった。この共生関係により、昆虫とその体内に生きている細菌の両方が健康に、そしてより良く生きることができるのである。
「過去数十年間、私の研究室では植物が持っている誘導防衛機能に焦点を合わせて研究を続けてきた」とprofessor Gary W. Feltonは言う。「私たちは、ハムシの経口分泌が植物の防衛能力を抑制する機能を持っているのではないかと考えてきたが、誰もこのことについて真剣に研究を行ったことはなかったのです。」
昆虫学科の院生のSeung Ho Chungは、Feltonと共に、植物はどのようにして葉を食す昆虫を認識し、そして昆虫の方はどのようにして植物の持っている防衛能力を無効化しているのかを調べることにした。
「私たちは、何が植物の持っている昆虫に対する防衛反応を無効化しているのか、そのメカニズムを特定しようとしたのです。しかし、昆虫が体内に抱えている微生物について知識が及ぶまで、何が植物の防衛反応を無効化しているのかはわからなかったのです」とFeltonは述べる。
Feltonによるとハムシは唾液腺をもっていないため、葉を消化するためにまず、葉の上に口腔分泌物を出す作業を行う。そしてこの分泌物の中に腸内細菌が含まれていたのである。
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【参考】上記実験の詳細内容紹介
○論文)植食性昆虫の共生者による植物防御応答の制御
リンク
<Laboratory ARA MASA のLab
Note>
これまでは、“宿主”たる多細胞生物が存在の主体としてみられ、共生微生物は“寄生存在”として認識されることも多かったのですが、“宿主”の生存に不可欠な役割を果たしているものも少なくありません。むしろ微生物が共同体を形成していて、その恩恵を受けているのが“宿主”なのかもしれません。
微生物との共生関係・協力関係を最重要の適応戦略と捉えて、解明していくことは、外圧への適応力を高めていく可能性であると思います。
稲依小石丸 |
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