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2017年5月

2017年5月29日 (月)

クマムシは体内生成したタンパク質を利用して無代謝状態となり極限環境を生き延びる

クマムシは、150℃の高温、絶対零度の極寒、高濃度の放射線、無水分(乾燥)、真空の中でも、体内の水分をほぼゼロまで減らして無代謝状態(クリプトビオシス)となることで生き延びることができます。
他にもクリプトビオシスにより極限環境を生き延びる生物(ネムリユスリカ、ワムシ等)も存在し、それらは体内でトレハロースという糖が大量に生成され、体内の水分と置き換わってガラス化(固化)→保護することで生き延びることがわかっています。
クマムシも同様のメカニズムを持っていると推測されていましたが、トレハロースはほとんど合成されていませんでした。
しかし、クマムシ固有のタンパク質が、他のクリプトビオシス生物におけるトレハロースと同じ働きをしていることが判明しました。
異種生命体から取り込んだ遺伝子と上記タンパク質生成の関連は未解明ですが、クマムシは過酷な外圧に適応するために、あらゆる可能性の中から適応解を模索してきたのではないでしょうか。
◇クマムシが地球上で最強な生き物である理由リンク
<ギズモード>より
////////↓↓引用開始↓↓////////
ノースカロライナ大学の研究チームはTDPsと呼ばれるクマムシ固有のタンパク質に注目しました。このタンパク質はクマムシの体の一部をガラスのようなものに変化させ、乾燥からくる細胞の破壊を防ぎます。Molecular Cellジャーナルの中で、この仕組みは農業や医学にも役立つかもしれないと研究チームは語っています。
「極限環境微生物」に分類されるクマムシは200年にも渡って科学者たちを混乱させ、また同時に感動させてきました。ずっとずっとそのまた昔、古代から存在するこの可愛らしいクマムシはどんなひどい自然下に置かれても生きながらえることが可能な不思議な生物なのです。
普通、遺伝子というのは親から子へと受け継がれるもので、他者からの遺伝子を受け継ぐことはできないのですが(遺伝子水平伝播と呼ばれています)、最近の日本の研究でクマムシの遺伝子は異種生命体の遺伝子から成り立っているということがわかったのです。
クマムシは1,000以上の種が存在していて、普段は湿った苔の上を這っていたり、海の中を泳いでいたりします。いろんなところへ移動するため、生き延びるための術を身につけていったと考えられています。先に述べた通り、極寒の地でも、放射線の中でも、水分のない場所でも生きることができるのです。
クマムシが自身を乾燥させる際、自分の表皮の中に足と頭を引っ込めてボールのような形になります。こうして冬眠、いや乾眠をするのですが、なんと10年以上この状態を保つことができるそうです。水があればまた眠りから起きます。
イースト菌や塩水エビ、無体節ぜん虫などはトレハロースと呼ばれる糖分を使って乾燥をしのぎます。科学者たちは長い間、クマムシも同じ方法で乾燥から身を守っているものだと考えてきましたが、調査の結果クマムシの体内にはトレハロースがほとんど検出されませんでした。ということは、何らか他の方法を使っているのだと考えたノースカロライナ大学の研究チームは、その方法を見つけようと乗り出したわけです。
まず研究チームは実験のプランを立てました。クマムシを寒さ、乾燥などのいろいろなストレスレベルにさらします。クマムシ固有のタンパク質TDPsがクマムシが自身を乾燥させていく過程で出てくるのか観察しようというプランです。一般的なタンパク質と違ってTDPsは三次元構造を持っていないためガラスのような表面になります。この特殊なタンパク質TDPsの働きをチェックするために、研究チームはこの遺伝子を他の生物に注入してみました。
「TDPsはクマムシが自分たちを乾燥から守るために必要なタンパク質です。しかしこのTDPsをバクテリアやイースト菌に入れたところ、それらの乾燥への耐久が増加しまし」と話すのは研究チームのリーダーThomas Boothbyさん。「驚くべきことですが、TDPsは試験管の中の乾燥に敏感な酵素のような物質でさえも保護することができるとわかりました。ガラスのような固形物が乾燥に敏感な分子をコーティングして、壊れるのを防いでいるからなのです」とBoothbyさんは話します。
Boothbyさんは、トレハロースを使わないクマムシが乾燥に対して同じような解決法を利用していることがいちばん興味深いことだと話しています。「トレハロースは細胞や構成分子を守るためにガラスのような形状になると考えられています。クマムシのタンパク質も同じような働きをしていますし、ガラスのような形状になるところも同じです。これは収束進化のいい例で、自然界は同じような方法で自分たちを守ろうと進化しているのです。ただ糖分とタンパク質という2つのまったく違ったものを使ってですが」とのことです。
~後略~
////////↑↑引用終了↑↑////////



稲依小石丸

同じ草食動物でも牛と馬のエネルギー摂取方の違い。牛は草だけ(カロリー0でも)で生きれるが、馬は草以外の穀物が必要なのは何故?

○馬と牛の食物からエネルギーを取り出す効率で比較すると・・・
http://金融危機.jp/uma-3526 からの引用です。
☆草食動物としての牛の完成度に比べると、馬の草食生活はまだ無駄が多い。(それでもあれだけの体躯を維持できている。細菌の作用の不思議さです)
馬は胃袋が1つしかない代わりに巨大な結腸を持っていて、ここに膨大な数の腸内細菌を共生させています。
牛は「植物をまず共生細菌が利用し、その後、細菌が生み出した栄養を牛が吸収」という方式でしたが、馬の場合は「まず馬が胃で消化吸収し、その残りを結腸の共生細菌が利用する」という方式です。
似たようなものだと思われるかもしれませんが、決定的な違いは、牛は共生細菌からタンパク質を得ていますが、馬は細菌のタンパク質を得ることができない点にあります。
牛の場合には、第4の胃で胃酸(=消化酵素)を分泌して、共生細菌の菌体を消化してタンパク質を吸収しましたが、馬の場合には共生細菌の菌体を消化する部分がないために、それを糞(ふん)として排泄するしかないのです。
馬が利用できる「共生細菌由来の栄養」は、せいぜい低級脂肪酸(酢酸、酪酸、プロピオン酸など)に過ぎず、これらを吸収してエネルギー源として利用しています。
ですから、馬は草だけでは生きられず、穀物や芋類、マメ科植物を食べる必要があり、それらは自前で作った消化酵素で消化吸収するしかありません。
つまり、牛は「摂取カロリーゼロでも生きられる」動物でしたが、馬は、「摂取カロリーがある程度ないと生きていけない」動物なのです。
言い換えれば、牛は「消化酵素を作る必要がほとんどない草食動物」、馬は「消化酵素を作らないと生きていけない草食動物」です。
馬と似た消化管構造を持つ草食哺乳類に、ウサギがいます。
馬は結腸が長大でしたが、ウサギは盲腸が発達し、ここにやはり共生細菌を多数生息させています。
そして、馬と同様に、栄養たっぷりの共生細菌の菌体成分を糞として体外に捨てている点は同じですが、ウサギの場合には、その栄養の塊(かたまり)である糞をもう一度食べることで、効果的に栄養を得ています。
これを糞食(ふんしょく)と呼びますが、この方式のおかげで、ウサギは草しか食べない動物としては異例の小さい体で生きていけるのです。
しかも、ウサギは地球のいたるところで大繁殖していますが、これは「体が小さいのに草だけで生きていける」という、他の草食動物にない特殊能力を持っているからでしょう。
コアラもウサギ同様、巨大な盲腸を持っていて、ここでユーカリの葉を発酵させることでユーカリの葉に含まれる有毒成分を無毒化し、さらにウサギのように糞食も行なっています。
しかし、ウサギのような高効率のエネルギー摂取は出来ていないようで、摂取エネルギーの低さを補うために、1日のうち20時間は眠っていますし、覚醒時でも動作が緩慢(かんまん)です。
ちなみに、草食哺乳類の進化の歴史をみますと、まず最初に、結腸や盲腸などの下部消化管の共生細菌によるセルロース分解をする動物が出現し、その後、上部消化管(=胃)を発酵槽とする動物が登場したことが分かっています。
現在、ウシ科の動物には、ブラックバック亜科、ウシ亜科、ヤギ亜科、ダイカー亜科、ブルーバック亜科の5つの亜科があり、それぞれの亜科がいくつもの属を従える動物界の一大勢力ですが、ウマ亜科に含まれる属は、ウマ属1つのみです。
つまりウシ科が圧倒的に多いです。
これは「食物からエネルギーを取り出す効率の差」と考えていいと思います。
さらに興味深いのは、牛のように上部消化管(=胃)でセルロースを分解する共生細菌と、馬のように下部消化管(=結腸、盲腸)で分解するタイプの共生細菌で、共通する細菌が見つかっていることです。
これはいったい何で意味しているのでしょうか。
この現象について解釈すれば、細菌にとっては、生存できる条件(=pHや酸素濃度など)が満たされ、同時に、宿主がセルロースを食べてくれれば、そこが馬の結腸であるか牛の胃であるかは問題ではない、ということでしょう。



荘家為蔵

2017年5月24日 (水)

宇宙空間でも生きられる微生物生命体

「宇宙放射線とか余裕。宇宙空間でも生きられる微生物生命体が国際宇宙ステーションの外装で発見される(ロシア発表)リンク」より引用します。
ロシアの宇宙局によると、国際宇宙ステーション(ISSの)外装にプランクトンなどの微生物が生息している形跡が見つかったという。
プランクトンは打ち上げの時に運ばれたのではなく、地球の気流で吹き付けられたと考えられる。信じ難いことにその小さな微生物は、氷点下の温度や酸素の欠乏、そして宇宙線にもめげず、宇宙の真空下で余裕で生きながらえることができるのだ。
これらのプランクトンは、ロシアの宇宙飛行士、オレグ・アルテミエフとアレクサンダー・スクボルソフが宇宙遊泳を行ったときに発見された。
彼らはISSのロシア側の区画でイルミネーターという照射装置で船窓の表面を磨き、その後"高精密機器"を使ってプランクトンと他の微生物の存在を見出した。
ロシアのISSオービター・ミッションの責任者であるウラジーミル・ソロヴィヨフは、「我々はイルミネーターの表面に海にいるプランクトンと微生物のかけらの跡を見つけました。これは大発見であり、さらなる調査をすすめたい。」と語った。そのプランクトンは宇宙船が飛び立った基地周辺の固有種の中には入っていない種類だ。
この微生物のかけらがどうやってISSの表面に現れたのかは不明だが、ソロヴィヨフ氏はおそらく高度420kmのステーションまで吹き上げられたのだろうと考えている。「これらの成長段階にあるプランクトンは海面で見られるものなので、上昇気流に乗ってステーションの表面に届いたのかもしれない。」
宇宙生物学者のマイケル・マウトナー博士は現在、隕石の土で植物を育てようとしている。この取り組みは将来火星などにコロニーを築く人間の食糧に欠かせないものだ。もし宇宙空間でも生き延びられるバクテリアや藻があれば、ジャガイモやアスパラガスなど、地球上の野菜をうまく培養し育てることができるかもしれない。



村田頼哉

2017年5月23日 (火)

ソマチットってなに?

ソマチットが端的に分かりやすく解説してあるサイトがありましたので紹介します。
ソマチット「ヒトの血液中に極微小な生命体が存在する」とした仮説のこと
(リンク)より
------------------以下引用------------------
ソマチット(ソマチッドの表記もある)とはフランス系カナダ人ガストン・ネサン(1924年 - )が「ヒトの血液中に極微小な生命体が存在する」とした仮説のこと。もしくはその生命体のことを指す。なお、このソマチット仮説は医学的・科学的に認められているものではない。
■ネサンの説
ネサンによれば、自分自身が発明した3万倍率(分解能:150A=0.015μm)の光学顕微鏡(ソマトスコープ)によりソマチットを発見したとする[1]。
また、ネサンはこの仮説に基づいた治療によって、多数の癌患者を治癒せしめたと主張した。 ただし、ネサンは医師免許を持たないため、法的に医療行為をできない。そのため、カナダの厚生省から告訴された。
また、ある貝の化石中に古代ソマチットを発見したとして、これが骨粗鬆症の治癒に有効であると主張する者もいる。[1]
■日本におけるソマチット
日本におけるソマチット研究の中心は日本ソマチット学会である。 学会では、牛山篤夫(元長野県茅野市立病院長)が発見して命名した結晶性粉末S.I.Cをソマチットと同じものであると主張している。なお、牛山は1962年(昭和37年)4月と1968年(昭和43年)3月に衆議院で行われた科学技術振興特別委員会などで参考人として研究内容を説明している[要出典]。
ソマチッドとしばしば関連付けて語られる千島学説は、「赤血球は、白血球や肝細胞、脂質、生殖細胞などありとあらゆる細胞に転換し、また、逆にそれらの細胞から赤血球へと戻ったりといった、体内で千変万化の働きをしている」という従来の医学界の常識を覆す内容が主張の骨子に含まれているため、その正当性が疑問視されてきた。
応用分野として、ソマチット農法なども存在する。
■主張
日本ソマチット学会の公式サイトで提示されている主な仮説と主張は以下の通り[2]。
■不死と原子変換
・ソマチットは(通常環境では)不死の生命体である。
・ソマチットは地球上最古の原始生物である。
・ソマチットは2500万年前の化石内部に生息していた。
・ソマチットは細菌でもウイルスでもない別の生命体で、DNAの前駆物質である。
・ソマチットは原子変換(生物学的元素転換)を起こす。
・ソマチットは非常に高い知性を持ち、塩酸の中で殻を造れる。
・ソマチットの原理により、サルの脳みそを食べると頭がよくなる。
■ソマチットと癌
・ソマチットは癌細胞ができると避難行動を取る。よって発症を予測できる。
・ソマチットは癌患者の血液中にはまったく存在しない。
・ネサンの開発したソマチットの原理による癌抑制剤には驚異的な効果がある。
・ソマチットは(牛山によれば)ガン免疫菌である。
・ソマチットの原理による牛山のガン抑制剤SICは驚異的効果がある。
・ソマチットの培養は50年以上前に成功した。
■尿療法の原理
・ソマチットを白血球は抗原と認識しない。すなわちソマチットは白血球以前の基礎免疫である。
・ソマチットが元気になれば、免疫力はあがる。
・ソマチットは人体内の環境が悪くなると尿に混ざって体外に逃げ出す。もしくは血小板や赤血球内に逃げ込んで殻を作る。
・ソマチットの原理によれば、元気になるには水素濃度の高いマイナスイオン水を飲むとよい。
・ソマチットの原理は尿療法を説明できる。すなわち、逃げ出したソマチットにもう一度体内で働いてもらうという意味である。
・ソマチットは人間の生き方を変えることができる。
------------------引用終了------------------



松下晃典

短期間で繁殖戦略を転換(有性→無性)するサメ

サメの一種において有性生殖を行っていたメスの個体が、オスと隔離された数年後に無性生殖で産卵したことが確認されました。
生物において無性生殖自体は特殊ではありませんが、短期間で一個体が有性生殖から無性生殖へ戦略転換することが確認されるケースは稀少です。
サメは古くから体の構造もふるまいもほとんど変えてこなかったと言われており、現存するサメも約1億年前と大きく変わらないようです。
おそらくサメは、繁殖戦略を無性生殖から有性生殖に転換した初期段階の生物で、外圧状況によっては、無性生殖へと戻ることが可能であるのだと思われます。
一方でその後の進化、多様化で現れた生物の多くが有性生殖に可能性収束したことから、同類他者(遺伝子の多様性)を残すことが、適応戦力上は極めて重要であったことを示していると言えます。
◇オスから引き離されたサメが単独で産卵、有性生殖から無性生殖へと素早く繁殖戦略を変更した事例が観察されるリンク
<GIGAZINE>より
////////↓↓引用開始↓↓////////
かつてオスとつがいになり産卵したことのあるメスのサメが、オスと隔離された数年後に単独で卵を産むことに成功したことが確認されました。サメは子孫を残すために短い時間で有性生殖から無性生殖へと繁殖戦略を切り替えた可能性が考えられます。
Switch from sexual to parthenogenetic reproduction in a zebra shark : Scientific Reports リンク
Female shark learns to reproduce without males after years alone | New Scientist リンク
クイーンズランド大学のクリスティン・ダジェオン氏とその研究チームは、オスと引き離されて数年経った後に、メスが単独で産卵するというこれまでにあまり例のない現象を観察しました。
このサメは「レオニー」と名付けられたトラフザメのメスで、オーストラリアのリーフ水族館で飼育されている個体です。レオニーは1999年にオスのパートナーとつがいにされ、数度の産卵を経て合計24匹の子どもが孵化していました。その後、2012年にパートナーが別の水槽に移されたことで、オスのいない環境で過ごしていましたが、2016年に単独での産卵に成功しました。
オスと交尾することなくメス単体で卵を産む無性生殖の動物自体は珍しくありませんが、有性生殖だった動物が無性生殖に変化することは極めて希です。特に、有性生殖で産卵経験のある個体が、その後、無性生殖に切り替える例は、一部のトビエイとボアで観察されたことがあるだけで、サメとしては初めての観察例となりました。
ダジェオン博士は、数年前につがいだったオスの精子を使って再び受精した可能性を疑いましたが、生まれた稚魚の遺伝子を調べたところ、母のレオニー由来のものしか見つからなかったことでこの可能性は消えたとのこと。レオニーは、単為生殖で子孫を残したことになります。
ダジェオン博士は、有性生殖だったサメが環境の変化から無性生殖へと切り替えることは生存競争上で有意なことだと考えているとのこと。本来、有性生殖で子孫を残す生き物が無性生殖を行うことは、極端に言えば近親交配にあたり遺伝的には不利になると考えられます。しかし、オスに出会わず交配できない場合に、一時的に無性生殖によって自らの遺伝子だけを持つ子孫を残して次世代に遺伝子を託すことは、短期的な生存戦略としては極めて優れているとダジェオン博士は考えています。
////////↑↑引用終了↑↑////////



稲依小石丸

2017年5月19日 (金)

昆虫社会の進化

『世界初の「遺伝子改変アリ」で、その複雑な昆虫社会の進化を解き明かす(米研究)(リンク)』より引用します。
”超個体”とも呼ばれるアリのコロニーは、アリ同士の協力の産物である。この複雑なアリ社会が嗅覚に大きく依存している仕組みを、世界初の遺伝子改変アリが解き明かしてくれた。
■昆虫の織り成す社会的行動
チャールズ・ダーウィンの時代から、生物学者は社会的行動の進化に並々ならぬ関心を抱いてきた。これまでになされたミツバチの研究からは、昆虫の社会性を作り出したと思われる遺伝子のヒントが得られている。
しかしその遺伝子を阻害する方法がなかったために、実際にどのように機能しているのか調べることは難しかった。
■クローナルレイダーアントの遺伝子改変に成功
社会的昆虫の遺伝子を改変することは難しい。個体のゲノムを改変することはできるとしても、アリの卵は非常に敏感なうえ、働きアリがいなければ成長できない。そのために卵をきちんと孵化させ、成虫まで育てることができないのである。
さらに社会的昆虫のライフサイクルが複雑なことが、調査が可能になるタイムフレームの中で十分な数の遺伝子改変個体を確保することを阻んでいる。
そこでアメリカ、ロックフェラー大学の進化生物学者ダニエル・クロノーアー(Daniel Kronauer)氏はクローナルレイダーアント(clonal raider ant)に注目。
この種はガッチリとした体格をしており、コロニー内に女王アリがいない。かわりに各々が無精卵を産み、クローンが誕生する。つまり、一度個体のゲノムを改変すれば、改変された個体が素早く増えるということだ。他の種ではできない実験をこのアリなら可能にしてくれる。
これまでの2年以上にわたる研究から、既存の卵は成虫の産卵を防ぐ化学物質を発することが判明していた。これを利用すれば、アリを隔離して、産卵をコントロールし、必要な個体数を確保することができる。
それでも遺伝子物質を注入する際に卵を傷つけないようにするコツを身につけるまでには1万回以上もの試行錯誤が行われた。さらに生まれたアリをコロニーに返して、成虫に面倒を見てもらえるようになるまでにも数か月かかっている。秘訣は幼虫を10匹のグループに混ぜることだという。
■アリの嗅覚受容体は350個
遺伝子編集技術CRIPRで阻害したのはorcoという遺伝子だ。これはアリの触覚の臭いを感じる神経細胞が働くうえで不可欠なタンパク質を作る。神経細胞はフェロモンを検出し、仲間や他の動物とのコミュニケーションを図るために利用されるものだ。
実はアリの嗅覚受容体は350個と非常に多く(ミバエでは46個)、クロノーアー氏はその複雑な社会システムの秘密がこの嗅覚にあるのではないかと睨んでいた。
遺伝子改変アリの行動と脳の解剖からは、嗅覚受容体が大きな役割を果たしていることが窺えた。通常、生まれたばかりのアリ(明るい色)は最初の数か月を仲間と一緒に身動きせずに過ごす。
しかし遺伝子改変されたアリの場合はそわそわと、すぐさま周囲をうろうろし始める。また遺伝子改変アリは仲間のあとをつけることもしない。仲間のあとを辿ることはコロニーの一体性を維持し、協力するために必要な行動だ。
長期的な問題も発生した。レイダーアントは通常2週間ごとに6つの卵を産む。しかし遺伝子改変アリは同期間で1つしか産まなかった。寿命も2、3か月と、通常の6~8か月に比べて短い。
さらに驚きの影響が見られたのは脳である。そこには各種の嗅覚受容体の神経終末が集まる糸球体という部位がある。ところが遺伝子改変アリにはこれが形成されていなかった。これはマウスにおいて同様の遺伝子を阻害したときに見られるのと同じ現象である。
脳の発達状態を比較した本実験では、社会性動物の複雑な行動制御がどのように進化したのかについて知見を与えてくれるという。



村田頼哉 

2017年5月13日 (土)

人間の祖先は基礎的な神経系と口、消化管を持った単純な形をした生き物

「半分動物で半分植物。それがイソギンチャクの正体だったらしい(オーストリア研究)(リンク)」より引用します。
これまで、イソギンチャクは動物に分類されていた。しかし、今年ゲノム・リサーチ(Genome Research)に発表された2つの研究からイソギンチャクは遺伝的に半分植物で半分動物であることが分かった。
今回の研究でイソギンチャクの今までの分類学的な位置は変わらないが、地球の生物がいったいどのように相互に関係しあってるかを解明する手がかりとなる。
この研究を率いたオーストリア、ウィーン大学、進化発生学のウルリッチ・テクナウ氏はこう話す。「人を含め全ての動物は植物とは遠縁である。しかし、イソギンチャクは刺胞動物門と呼ばれる動物群の代表であり、ごく初期に分岐し、多くの祖先的な特徴を持っている。」
今回の研究で研究者たちは遺伝子発現の仕方に注目した。遺伝子発現とは、遺伝子の情報からタンパク質やRNAなどといった産物が合成されるまでの過程のことである。遺伝子発現は「転写と翻訳」と呼ばれる、少なくとも2つの主要な段階を踏まえて行われる。
「転写」とは遺伝子配列からRNAが作られるまでの過程の事である。「翻訳」」とはmRNA(メッセンジャーRNA)の配列をアミノ酸配列に変換しタンパク質を合成するまでの過程である。
研究グループは、イソギンチャクで行われる転写の制御方法を他の動物と比較したところ、動物間で行われる方法とほぼ同じであることがわかった。ところが翻訳の制御方法は、動物ではなく植物のものと類似していた。
動物の遺伝子発現は長い時をかけ進化してきた。
共著者であるミケーラ・シュワイガー氏はこう説明する。「イソギンチャクは複雑な遺伝子制御を行っている。この方法は約6億年前、私達人間やハエ、イソギンチャクの祖先にあたる生物が生まれた時にはすでに存在していたのかもしれない。」
イソギンチャクはとても早い段階で分岐した為、植物と似た転写方法を維持したままだったと考えられる。他の昆虫や脊椎動物の祖先は分岐した時には既に、植物の制御方法を失ったか、大きく方法を変えたと考えられる。
テクナウ氏は、イソギンチャクと人間、ハエの祖先は基礎的な神経系と口、消化管を持った単純な形をした生き物であったのではないかと推測している。
ジェームズクック大学のサンゴゲノム解析グループのデイビット・ミラー氏は今回の研究について完璧でとてもすばらしい研究であると述べている。「刺胞動物は典型的な動物の遺伝子を制御するのに植物に似たシステムを採っている。しかもその制御される遺伝子はイソギンチャクや私達に共通してあるものだ。これは凄いことだ。」
イソギンチャクは6億年前から地球上に存在し、その命を絶やすことなく適応させながら今に至っているわけだ。水中恐るべし。植物とか動物とか、なんかもうそういう概念取っ払った、とんでも生物がまだまだたくさん潜んでいそうだ。



村田頼哉

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