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2017年6月13日 (火)

南極を流れる不気味な「血の滝」、レーダー調査で解明

氷河の下に、硫酸塩と酸化第2鉄(Fe2O3)を代謝する、独立栄養生物の微生物による珍しい生態系が形成されている
リンクより転載します。
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なぜ赤い? なぜ凍らない? レーダー調査で仕組みを分析
 氷河の下をスキャンした画像が、この謎を解くヒントとなった。氷河の下には、川と湖の複雑なネットワークが存在する。そのネットワークは全体が鉄分の高い塩水で満たされており、これが滝を赤く染める原因となっている。
 論文は、塩水が凍結せずに流れている理由は、塩水の性質から説明できるとしている。「氷河の内部やその下の環境では、水が氷になるときに発生する熱(潜熱)と、高い塩分含有量とが組み合わさることによって、塩水が液状に保たれる」
 氷河の下にある湖の水は、異常なほど塩分が高い。塩水は純水よりも凝固点が低く、また凍結するときに熱を放出するために周囲の氷を解かし、それによって水が流れることができる。
 つまり、テイラー氷河は流水を維持する仕組みを有しており、また流水を内包する世界で最も冷たい氷河であるということになる。ただし、流水に含まれる鉄分が極めて高いために、滝が血のように赤く染まってしまうというわけだ。
 加えて同研究では、ここを流れる「鉄分の高い塩水」の量も計測しており、その量は滝に近づくにつれて増加することがわかった。
 また、水温と塩水の濃度の間には関連があることも判明している。氷河に走る大小さまざまな亀裂を通じて、塩水は氷河に流れ込む。そして塩水が凍結し始めると、そこで発生する凝固潜熱によって周囲の氷が温められると同時に、亀裂中央の塩水の濃度が上昇する。
(中略)
極限環境微生物の活動
 化学的分析、及び、微生物学的分析によって、テイラー氷河の下には、硫酸塩と酸化第2鉄(Fe2O3)を代謝する、独立栄養生物の微生物による珍しい生態系が形成されていることが示されている。ダートマス大学のGeomicrobiologyの学者であるJill Mikuckiによれば、血の滝の水には、少なくとも17種類の微生物が含まれており、そして、溶存酸素はほとんど検出されないという。恐らく、ここの微生物は硫酸塩を利用して、酸化第2鉄(Fe2O3)と有機物を代謝しているのだろうと説明されている。2009年現在、このような微生物の活動は、ここ以外では観察されていない。
 実は、どうして酸素のほとんど存在しない環境下で、(Fe2+)と(SO42+)とが共在していられるのかは、明らかになっていない。そして、この場所からは、(HS-)が検出されていない。これらのことが示唆するのは、複雑で、まだ我々が理解できていない、生物の介在した硫黄循環と鉄循環との相互作用が存在しているのだろうということである。
 Jill Mikuckiによれば、現在は氷河によって密封されているために近づき難い、血の滝を流れる塩水の供給源となっている氷河の下の池は、氷に閉ざされて少なくとも150万年〜200万年は経過しているので、ここで微生物が他の場所とは全く違う独自の進化をしている可能性もあるという。
 ところで、地球はかつて全球凍結をしたという仮説が存在する。もし本当に全球凍結が起こっていたとすれば、その時、微生物がいかにして氷の下で生き延びたかが、この血の滝の塩水の供給源を調査することで判るかもしれないという。原生代の間には、赤道まで氷に覆われた時期があるのではないかという説が存在するが、この時、微生物の生態系がどのような環境に活動の場を移して(避難して)生き延びたか、そのヒントが得られるかもしれない。
宇宙生物学と血の滝
 血の滝を流れる塩水の供給源となっている氷河の下の池は、南極の氷帽の深くまで調査のためのボーリングをすることなしに、深部(地表から遠い深い場所)に住む極限環境微生物の研究をすることができるかもしれない場所だと期待されている。
 地球上に存在するヒトなどの生存には厳しい環境を研究することは、生物が生存できる環境条件の範囲を知るために有用であるし、また、太陽系の内外で生物が存在できる場所の候補を絞るのにも有効である。なお、血の滝での研究は、気温が低く水の氷に閉ざされている場所での生物の生存条件の研究につながるので、太陽系内においてであれば、例えば火星やエウロパ、その他の氷に覆われた外惑星の衛星といった、比較的寒い場所で生物が存在できる場所の候補を絞るのに有効と考えられる。
 この血の滝の塩水の供給源ような、氷に閉ざされた液体の水が存在する環境というのは、生物が紫外線や宇宙線から身を守ることに関して、上にある氷の層が紫外線や宇宙線を遮蔽してくれる分、地表よりも有利である。したがって、地球外のこのような場所にも生物がいる可能性が高いのではないかと考えられている。
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転載終わり



中田燿平

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