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2018年4月29日 (日)

動物の登場、定説より1000万年以上早いかもしれない

動物「カンブリア紀に」覆る  定説より1000万年以上早く
2018/3/25付日本経済新聞 朝刊
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モンゴルの人里離れた渓谷で5億5000万年前に動物が海底に掘った巣穴の化石が発見された。巣穴の主は人類を含むほとんどの動物の遠い祖先になるとみられる。新発見によって、海底を動き回る動物が定説より1000万年以上早い時代に登場していたことが確実になった。生命進化の歴史が書き換えられることになるかもしれない。
モンゴルの首都ウランバートルから国内線で2時間、さらに車で数時間、最後は道ともいえないようなところを走ると、乾ききった岩ばかりのバヤンゴル渓谷に着く。ここが発掘現場だ。「5億5000万年前のエディアカラ紀後期、この周辺は赤道近くの暖かい海だった。海底は泥状で水深は数十メートルから百メートルと推定されている」と、発掘チームのリーダーを務める名古屋大学の大路樹生教授は話す。
 岩石を割ると当時の海底面が出てくる。そこで小さな動物が掘った直径数ミリ~1センチメートルくらいの巣穴が多数見つかった。海底の断面の方向に岩石を薄く切ってみると、巣穴は海底下でU字状に曲がり、両端が海底につながっていた。巣穴の主の化石は見つかっていないが、ミミズのような見かけだったのだろうと大路教授らはみている。
 生命の進化に少し詳しい人だったら「え? 時代を聞き間違えたかな?」と思うところだろう。細菌のような原始的な生物は40億年近く前に誕生したが、海底に巣穴を掘るくらいにまで進化したのは、エディアカラ紀の次のカンブリア紀とされるからだ。
 カンブリア紀は生命の進化で大事件が起きた時代だ。カンブリア紀に入ると、生命はごく短期間のうちに非常に幅広い多様性を獲得したことが化石の研究からわかっている。中学校の理科で習う三葉虫や古生物ファンに人気のアノマロカリスという奇怪な動物などが代表例だ。この時代、生命の進化のペースが非常に急激だったため「カンブリア爆発」とも呼ばれる。
 三葉虫やアノマロカリス、後に登場する魚類や恐竜、哺乳類、さらには人類も「左右相称動物」というグループに入る。読んで字の通り、体のつくりが左側と右側で同じようになっているのが特徴だ。最も原始的なタイプがミミズのようなものとされる。
 カンブリア紀の地層にはミミズに似た動き回る生物が海底を活発に動き回った跡やU字形の巣穴の跡が多数残っている。その前のエディアカラ紀の地層からは、そうした痕跡は見つかっていなかった。左右相称動物はカンブリア爆発をきっかけに大繁栄し始めたことが定説となっている。
 「もっとも専門家の多くは左右相称動物が最初に登場したのはおそらくカンブリア紀より前ではないかと思っていた」と大路教授はいう。ただ裏づけとなる証拠がなく、推測の域にとどまっていた。今回、発見されたエディアカラ紀の巣穴化石は、その確証になる。巣穴の深さや長さから考えると、巣穴の主は筋肉がかなり発達していた可能性が高い。
 海底の巣穴で暮らしていたのは「捕食者から逃れるためだったのではないか」と大路教授は話す。だとするとエディアカラ紀の海の生態系でも「食う、食われる」の関係が存在していたことになる。
 これまでの研究では、エディアカラ紀の海で大繁栄していたのは、クラゲやイソギンチャクなどのような「非左右相称動物」だった。エディアカラ生物群と総称され、植物の葉のような形のほかに、まんじゅう形、円盤形など、かなり風変わりな形状をしているものが多い。
 ただ、エディアカラ生物群は5億4000万年前のエディアカラ紀末に大絶滅したことがわかっている。大絶滅というと6500万年前の白亜紀末に起きた恐竜の絶滅が有名で、巨大いん石の落下による地球環境の大変動が原因とみられている。一方、エディアカラ紀末の大絶滅の原因は不明。当時は超巨大な大陸が分裂し始めた時代で、それに伴う大規模な火山活動が原因との説があるが、有力な証拠は見つかっていない。
 確かなのは、ミミズに似た巣穴化石の主の子孫は「エディアカラ紀末の大絶滅を生き延び、エディアカラ生物群がいなくなった海で爆発的な進化を始めた」(大路教授)ということだ。恐竜がのし歩いていた時代、ひっそり暮らしていた哺乳類は恐竜が絶滅した後に繁栄し始めたが、それと似たようなことが起きた可能性がある。
 大路教授らは現在、巣穴を埋めている岩石を詳しく分析、その中に生物の口や顎などの硬い器官の痕跡が残っていないか調べている。巣穴の主の姿がもう少し見えてくるかもしれない。
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匿名希望

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