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2018年5月29日 (火)

『寿命と老化の関係・違い』ーヒトは死ぬ原因は?テロメアが原因?

科学情報誌http://科学情報誌.xyz/2016/03/12/post-201/より
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「寿命」と「老化」はよく混同されますが、この2つは密接にかかわっている一方で、その意味はまったく異なります。
まずは「寿命」について説明します。
【「寿命」ー有性生殖特有の死】
「寿命」は「生命の続く長さ」のことで、「最大寿命」は生物種ごとにほぼ決まっています。
この「最大寿命」は、劇的な進化がもたらされない限りは、大幅に更新されることはないため、「先天的な(生まれながらの)性質=遺伝情報」だと考えられます。
そのため、「死なない」ためにはこの遺伝情報を書き換える必要性があります。
ここで、博識な方から「江戸時代の寿命は50歳くらいだったんじゃないのか」と指摘されそうなので補足しておきます。
「江戸時代の人は短命」とよくテレビなどで聞くことがあるかもしれませんが、これは「平均寿命」であり、あくまで大ざっぱに推定した値です。
実際に、徳川家康は75歳、葛飾北斎にいたっては90歳という文献があるそうです。
つまり、ある程度の栄養管理ができていた人物は長生きする傾向にあったのかもしれませんね。
遺伝的に大きな変異がないと仮定すれば、江戸時代も現代と同じく130歳程度が最大寿命だったのではないかと推測されます。
 ところで、生物は必ず死ぬのでしょうか?
実は「寿命」という概念は「有性生殖」を行う生物に限った話です。
「有性生殖」とは、「オスとメスの遺伝子を半分ずつ子供が受け継ぐ」繁殖方法のことですね。
この方法では、時間と労力がかかり、
しかもオスとメスが出逢って交配を行わなければならないので非常に効率は悪くなります。
しかし、生まれた子供は両親の遺伝子を半分ずつ受け継ぐので、「新たな遺伝子の組み合わせをもつ=環境の変化に強くなる」という特性があります。
一方で、1個体だけで子孫を残せる「無性生殖」を行う生物もいます。
大腸菌などは栄養がある限り無限に増殖できるので、もとの1個体が倍々方式で増えていくだけで「死」という概念はありません。
この方法だと数自体は爆発的に増やせるのですが、子供の遺伝子は親と同じ(=クローン)なので、環境の変化に弱い傾向があります。
そのため、多くの無性生殖を行う生物は、特定の時期だけは有性生殖にシフトしています。
例えば、ゾウリムシの場合は1個体が分裂する通常の無性生殖のほかにも、2個体が合体して遺伝情報を交換した後で、また2個体に分かれるという奇妙な行動を起こします。
これも広い意味での有性生殖といえるでしょう。
「最大寿命は生物種ごとに決まっている」ということでした。
では、この「最大寿命」はなにによってもたらされるのか?
それが「老化」です。
【老化と寿命の関係・違い】
「老化」とは「体の機能が衰える現象」です。「最大寿命」が先天的に決めらた期間であったのに対し、「老化」は後天的な(生まれた後の)環境要因の影響も受ける現象です。
「老化」が原因、「寿命」が結果という関係です。
ヒトの老化の場合には、脳の萎縮や動脈硬化、視力の低下などさまざまな種類があります。
では、この老化はなにによってもたらされ、寿命とどう関係があるのでしょうか。
【ヒトが死ぬ理由ー1、細胞の老化(異常の蓄積)とテロメア】
1、異常の蓄積
「老化が死をもたらす原因」として、細胞の老化(=遺伝子の異常蓄積)が考えられます。
これらの変異は若うちはきちんと修復酵素が働き、変異の修復にあたるのですが、歳をとるにつれ次第に修復の正確さが低下していきます。
つまり、老化とともに「変異が蓄積した遺伝子」が増えていき、
その誤った遺伝子情報によって一部の組織が正常な機能を保てなくなります。こうして、「老化」が「寿命」へと繋がるのわけです。
【ヒトが死ぬ理由ー2、テロメア】
2、テロメア
次は「テロメア」がもたらす「細胞の老化」について説明します。
「テロメア」とは、「染色体の末端にある構造」でDNAを完全に複製させるために必要な余白の存在です。
「テロメア」がないと、DNAがコピーされるたびに端から順番に遺伝情報が抜け落ちていってしまいます。
他にも染色体の末端を保護する役割や細胞が染色体の末端だと識別しやすくする役割などもあり、
構造としては6つの塩基(TTAGGG)配列が~2,000回ほど繰り返されています。
この「テロメア」はDNAが複製されるたびに約20塩基程度短くなっていき、体細胞の場合は復元されることはありません。
「なぜテロメアが短くなるのか」という疑問に関しては、
『遺伝学のカテゴリー』で詳しく話そうと思うのですが、簡単に言えば、
「DNAの複製の開始地点として使われ、テロメアを復元させる酵素が抑制されているから」です。
抽象的ですが、もう少しだけ詳しく説明します。
まずDNAを複製するときに、そのコピーを少しずつ分割して行う過程があります(ラギング鎖の岡崎フラグメント)。
分割してコピーする時には、そのスタート地点が必要(RNAポリメラーゼ)なのですが、スタート地点になった場所だけはコピーできません。
そうすると、一番最後の末端部分だけはその「スタート地点」が置かれているせいでコピーできなくなりますよね。
もしコピーできないままだとDNAの情報が少なくなってしまうので、末端にはDNAとは関係ない適当なものを置こう!
そして置かれたのが「テロメア」ということになります。
つまり、「スタート地点」の場所を確保するために設けられたのが「テロメア」です。
整理すると、「DNAが複製されるたびにテロメアは短くなる」ということが言えます。
テロメアが半分ほどまで短くなると、DNAはほとんど複製することをやめ、細胞は老化の一途をたどります。
これが「テロメアがもたらす細胞の老化」、つまり「死」です。




岸良造

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