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2018年8月19日 (日)

生命・細胞・血球の起源⑥-2

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 ⑥クロレラと動物細胞の共生と融合
 各種の無脊椎動物の細胞内にクロレラが共生していることはよく知られていることです。この現象は今日においてもその真の意義が十分に理解されていないようです。古典的な説の一つに共生しているクロレラが下等動物の赤血球の起源だとする説がありましたが、今は既に忘れられ顧みられなくなっています。ここでは千島の観察を基礎として内外の研究者たちの成果も総合して、新しくそして重要な千島の見解を述べることにします。
①クロレラの細胞内共生
 クロレラは原藻類に属する単細胞緑藻類の一種とされていますが、主として淡水中に棲み動物細胞中に共生している藻類です。クロレラは共生生活に入る前の自由生活のある相では鞭毛をもっていて活発に水中を運動する時代があります。そのため、時には鞭毛虫に分類されたりすることがありますが、今日では一般に緑藻類であると考えられています。
 シェンコスキーは放射虫類の細胞質中にクロレラが共生しているのを発見しましたが、クロレラの動物細胞との共生の意義や細胞への進化に関連する報告は残念ながらありません。
②クロレラ共生の意義
 コーレイによると、元来クロレラは単細胞でセルローズの被膜に被われ、細胞質の大部分は有色体で占められ1-10ミクロンと大きさには変動がある球体です。葉緑素を含むものは緑色ですが、黄褐色のものもあります。クロレラ細胞中に核があるという説とないという説があり今も統一されていないようです。千島はクロレラに定型的な核が常に存在するという証拠も、また分裂によって増殖するという証拠も確認していないと述べています。
 このようなクロレラが腔腸動物や繊毛虫類、その他の原生動物細胞内にほとんど常に共存していることは確かであり、アメーバやミドリムシがクロレラで充満しているのを千島は観察しているといっています。コーレイの記載では、諸原生動物とクロレラが常に共生いるとは限らず、インド産の夜光虫にはいるが、フランス海岸のものにはなく、ノルマンディ海岸近くのラッパ虫には存在しても、十数キロ離れた地域のものには見られないという。しかし、細胞内のクロレラは時間の経過とともに融合して変化するから、全生活史を調査し観察しなければ、誤った判断を下す虞があると千島は注意を促しています。
 クロレラと共生動物細胞との栄養的関係は、クロレラが太陽光によって炭素同化作用を行い、酸素を遊離させて動物細胞に与え、動物細胞からは炭酸ガスを与えられて相互に共生するものだと考えられています。このことについて千島は『クロレラの共生動物細胞は元来、クロレラ集団から発生したものだから或る時代は動物細胞とクロレラ集団とは区別できない一体のものだと考えねばならない。 随ってこの場合、これまでの意味での共生という語をそのまま適用することは妥当ではない』といっています。
 ⑦共生発光菌
 各種発光動物の発光が発光バクテリアによるものであることは古来から知られています。しかしそれらの発光が凡て共生菌によるわけではなく、腐敗を始めた魚の発光や、或る種の昆虫が発光菌の寄生により発光する場合等は偶発的な寄生によるもので、生理的な発光ではないとされています。
 一方、ホタルや頭足類の或る種のものなどのように発光器官をもっているが、発光菌の共生なのか或いは単なる化学的作用の結果であるのか未解決のまま残されているものもあります。
 ここでは共生菌の働きだと考えられている主なものだけを紹介しましょう。
①ホタル及び頭足類
 発光現象の共生菌説主張の第一人者であるイタリアのペラントニはホタルの発光器官がアリマキの細菌器官と構造的に酷似していること、また発光器官も細菌(球菌・桿菌)と全く等しい形態と染色性をもつもので充満した細胞から構成されていることなどから、ホタルの発光現象は共生菌によるものだと考えました。しかし、ノビコフは化学作用による発光だとしてペラントニの説に反対しています。ペラントニは又頭足類のマイカの発光器官細胞内に発光細菌が共生し、卵子を通して次世代への移転をしており、その発光菌の培養に成功したと述べています。さらにメッシナ海の深海頭足類の発光現象も共生菌によるものと主張していますが、同じイタリアのパントニやモルトーラはこれに反対しており、頭足類やホタルの発光体についてはまだまだ論争が続きそうです。
②発光ホヤ類
 ホヤは海洋性の被嚢動物で間歇的に明るい光を発する生物です。発光器は鰓の両側にあり、発生学上では卵の周囲を包む特殊な細胞に由来し、この細胞は内部に多数のソーセージ型をした小体で充満しています。ジュリンはこれをミトコンドリアと考えましたが、ペラントニは発光菌を含んだ細菌でありこれは細胞を形成し、血液によって体の各部に運ばれると発光菌の共生説を主張しています。
③魚類
 大洋の珊瑚礁に棲む魚の発光器は眼の周囲にあり連続的に発光します。発光器は腺様の構造になっており、管腔内には細菌が連鎖状になって充満しており、これは外部で培養することができます。
 ジャバの或る魚も同様に発光器をもっており、この発光器は胃の入口及び食道の周囲を取り巻いていて反射装置もついているといい腺腔には桿菌が充満しているといいます。日本のマツカサウオもこれと同様の発光共生菌をもっていると岡田要氏が報告しています。
④千島喜久男の見解
 『上記のような様々な説に対し反対、疑問視、又賛同といった論争が続いているが、発光菌様細菌は細胞内で変化してミトコンドリア様体に変化する可能性もあり、又化学的発光物質を生成する可能性も十分にあるから、細胞内共生菌が発光に関与し、時には細胞質に全く同化してしまう場合もあることだろう。だから発光菌の共生を完全に否定することは妥当でない』



本田友人

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