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2018年9月11日 (火)

生命・細胞・血球の起源⑦-2

(リンクの続き
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④吸血昆虫やダニの共生微生物
 脊椎動物の血液を吸って生きている昆虫、たとえばツェツェバエの腸に酵母が、またその成虫の中腸の一部の上皮が厚くなって肉眼でも見えるような灰色を帯びた斑点ができ、この部分を切片にして調べてみると、普通の細胞より3~5倍も大きい細胞が観察されます。その内部は長さ3~5ミクロンほどの細菌状のもので充満していて、細胞が壊れると腸内に遊離します。標本をつくってよく観察すると、それは酵母のような出芽によって増殖していく様子が見られ、これは細菌を含む真の細菌器官であるとラウバウはいっています。しかし、この腸壁にある細菌細胞内の細菌や酵母はラウバウと違って、千島は、腸内細菌が腸壁細胞を新生するとき、一緒に細胞内に埋没してしまったものだと考えています。
 これは前述したステインハスが観察した腸壁から菌節が形成されて分離する状態からも、また千島が昆虫の消化管を調べた結果からも推定することができます。
 ラウバウは吸血昆虫の腸内に細菌や酵母が共生しているのは、酵母から分泌される酵素によって、吸った血球やタンパク質を消化吸収するために必要だからだといっています。またカレリイはダニ類も腸上皮細胞内に共生細菌が存在し、それらが共生体へメリットばかりではなく、デメリットである病原体の媒介をしているともいっています。昆虫や下等無脊椎動物では、いわゆる共生細菌は比較的その個性をよく保存しまた融合と分化による完全な細胞新生の段階に進行しない状態(いわゆる細菌細胞)を保つために、血液と共に病原菌を吸い込んだとき、その媒介をなす危険が生じるのだと思います。
 シラミは雌雄ともに終生、中腸に共生細菌を含んでいて、フローレンスの観察によると、陰性菌を含む菌節があって、それは腸壁から腹腔へ露出した形で付着しているので、これは消化に役立っているものだと推測していますが、千島はこれは、消化管内の細菌集団→腸壁組織→菌節であろうと推測しています。もちろんこれは、栄養摂取の役割を演じていることは疑いないことでしょう。
 バウチャーはメスシラミの腸壁にある菌節は体の背側脂肪体中に菌節を形成するようになるといっていますが、これも千島は昆虫の脂肪体は血球及び血液から形成されるものであるから、腸壁で吸収された食物性モネラや細胞から形成された腸壁組織から脂肪に変化したものだと考えています。
⑤軟体動物その他の共生菌
 軟体動物、腹足類、前鰓類の腺細胞内に共生菌が存在することは知られています。
○リケッチアと細胞との共生
①リケッチア
 リケッチアとは非常に小さい、桿状、楕円形、球形をした一群の微生物に与えられた名称です。このリケッチアは一般に生きた細胞内でのみ増殖し特別に微小なものでない限り、濾過性はないとされています。
 ステインハウスによると、ある研究者はリケッチアをウイルスと細菌の中間に位置する微生物だと考えているといいます。しかし最近、リケッチアは細菌の一種であるとする説が有力になりかけているようです。ピンカートンは定型的なリケッチアは形態的にも、非濾過性であるという点でも細菌に似ていることを指摘し、さらに細菌と最小のウイルスとの間に多数の中間的生物小体があることから、リケッチアは節足動物の細胞組織内の生活に適応した一種の細菌であると考えるのが妥当だといっています。
 電子顕微鏡で調べた結果によると、リケッチアは細菌と等しく原形質は膜で包まれていて、一定の顆粒をそのなかに含んでいるとプロッツは報告しています。
 マシャベロもリケッチアの細菌説に賛同しています。学者たちの意見を総合すると
 リケッチアは「特殊濾過性ウイルスを伴う非特異性生物」と位置づけられているようです。また一定の可視的形態をもっていて、昆虫のウンカの中腸内にこのようなリケッチア様の共生体が存在することが知られています。
②病的リケッチアの進化
 病原性をもったリケッチアが寄生的生活をするに至った過程は、一般に独立生活から次第に寄生生活に移ったのだろうと推測されていますが、バーネットによれば、リケッチアは太古時代に共生体であったものから2次的に進化したものだと主張しています。彼は「その第1期は推測として死物寄生菌が原始昆虫の消化管内に移住した時期であり、続いて昆虫の消化管内で栄養を得て、さらに消化管粘膜の上皮細胞中に入って寄生し宿主である昆虫を栄養失調にさせ斃したのであろう。しかし長い年月の間に、宿主は寄生細菌の栄養搾取に耐え、遂には細胞内の共生体になった。細菌時代の潜在的病毒性は、異なる種の生細胞に触れることによって活性を帯びてくるのだろう。この種の接触は吸血昆虫が脊椎動物の血液を吸うことによって起こり、それによって細菌が寄生化する可能性もある。たとえば或る種のリケッチアはダニの体内では無害な共生体だが、人間や他の脊椎動物の体内に移ると致命的なロッキー山斑点熱を発症させる。発疹チフスもまたこの例である」と報告で述べています。
 千島は、リケッチアの起源についてはやはり、バーネットのように進化論的見地から考えることは必要だといっていますが、もともと自動性をもっていないリケッチアは細胞内に侵入する過程も実証されていないし、また発生の状況から考えても、これは細胞が病的ウイルスの影響を受けて、生化学的な連鎖反応または自己触媒反応によって、その原形質の病的変化を誘発して、健康体の原形質中に自然発生的に形成されるもの、即ち、リケッチアは細胞が病的に原始状態(細菌)へ解体される一つの段階であると考えられます。だからリケッチアはウイルスと細菌との中間的位置にあるという意見に千島も賛同しています。また病原性リケッチアが正常体の細胞と共生するなどということはまず考えられないことだといっています。




本田友人

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