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2018年9月28日 (金)

生命・細胞・血球の起源⑦-4

(リンク)つづき
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○ミトコンドリアの共生菌由来説とその論議
(略)
③ミトコンドリアの共生菌由来説をめぐる論争
コーリーはその著のなかでポーターのミトコンドリア共生菌由来説を批判しています。コーリーは批判する理由として、地衣類、菌根、根瘤、クロレラ、酵母、細菌、発光バクテリアやその他の細胞内共生体は、生物の全態からみれば例外的なもので正常体からの変異にすぎないからだといっています。
しかし以前から、細胞内の共生微生物は生命体の根本的な特性であるという説があります。その代表的なものはイタリアのペラントニの説です。ペラントニは昆虫の共生菌や共生酵母、頭足類の共生発光菌などについての詳細な研究結果から“細胞は生物体にとって根本的な単位ではない。細胞は共生微生物の複合体である。だから共生体は細胞にとって有機的合成に不可欠なものであり、それらの共生菌はミトコンドリアにすぎない。換言すればミトコンドリアは細胞内生活に適応したバクテリアである”というものです。
このペラントニの主張に対してコーリーは「このような説はおかしいと、先験的に言うわけにはいかないが、すべての生物学者にそのままには受け入れられないだろう。
もっと確固とした証拠を必要とする。誰でもこの説は誤りだということに躊躇しないはずだ」と反論しています。ペラントニの説をすべての高等動物にもそのまま適用することはコーリーがいうように妥当ではありませんが、下等な生物においてはペラントニの説が正しいと千島は自分の研究成果をもとに述べています。
ポーターは哺乳類のオスの睾丸周囲にある脂肪組織で厳密な無菌的方法で培養して得た細菌はミトコンドリアであるといっていますが、これについてコーリーは温度やその他の点からいってポーターの説は正しいとはいえないと反対しました。
このコーリーの見解は誤ったものとはいえないでしょう。如何に細心の注意の払ったつもりでも、往々にして雑菌が混入してしまうことはよくあることです。また細菌の混入がなくても、一定の有機物と適当な条件が整えば、細菌やその他の芽胞が自然に発生してくることを千島は確認しています。バクテリアや細菌は一定条件のもとでいつも自然発生しているのです。
コーリーはポーターの実験を取り上げ「ポーターは正常な原始的細胞内にあるミトコンドリアを共生微生物だと説いているが、これは細胞学説や、厳密な実験によって裏づけられた説ではない。細胞の二元論や細胞内微生物存在説を根底から否定するわけではないが、彼の説はもっと十分に完成されなくてはならない。細胞は細菌の仲介なくては同化ができないような無力なものと考えるより、自主的な機能を営めるものだと考えるほうがより自然的であろう。共生は多細胞生物や孤立した細胞における例外的な現象である。非常に広範囲に見られる細胞内共生は、生物学の現状では細胞の根本的形態とはいえない」と述べています。
このコーリーの見解に対し千島は『彼は細胞内共生微生物の重要性について深い理解を示してはいるが、これを生物全般に機械的に普遍化することに対し、かなり懐疑的になっている。これは惜しいかな、高等生物の一般細胞と、下等生物の細胞における細胞内共生とミトコンドリアの問題を混同している。彼が系統発生的な見地にたって細胞の起源を探究したならば、私の見解をよく理解できるだろう』と述べています。
④共生菌由来説についてのピコの新説
チェコスロバキアのピコが次のような要旨の論文を発表して、ミトコンドリアの共生菌由来説を支持しています。「アリマキの菌節内共生菌といわれているものは、単なる顆粒に過ぎないと主張するランハムに対して、トレジャーがそれに反論しているが、自分はリンゴワタムシのミトコンドリアも共生菌であると確信している。現にアリマキの共生菌はこの虫から分離した球菌を混ぜた培養基でよく生育する」
(略)
このピコの見解に関し千島は次のように述べています。
「ピコの主張に私は賛同したい。高等動物のミトコンドリアを直ちに共生菌と考えることはできないとしても、下等無脊椎動物の菌節細胞中のミトコンドリアは共生菌に由来するものであると考えることは、「細菌集団から細胞が新生する」という私の説からすれば、敢えて怪しむに足りないことである。ミトコンドリアの共生菌由来説を支持する他の一つの論拠は、私の観察した結果、すなわち枯草菌が水面に薄い膜を形成し、それらが一定の集団を形成してアメーバ様体になる前の菌の配列様相が、ロバーツが膵臓細胞を電子顕微鏡写真で示したミトコンドリアのものと酷似していることである。
元来、ミトコンドリアというものは常に一定の形態をもつものではなく、時とともに変化することが知られているし、顆粒状→桿菌状→糸状への移行型が見られる。
他方、腐敗の過程について見られる細菌も球菌→桿菌→糸状菌への移行が認められる。血球の腐敗過程でもこのような変化が見られ、細菌の配列もまたミトコンドリアとの類似がある。このように細菌とミトコンドリアとの類似は単なる偶然とは考えられないことである。前述したように細菌の集合と融合、そして体制化によって核や空胞を新生してアメーバ、すなわち細胞への進化が見られるほか、ミミズ血液中でも糸状菌様体の集合と分化によって含糸細胞を形成する状態を観察することができる。
このように細胞は系統発生的に細菌集団からも新生することを、下等動物では常に反復していると私は判断する。このことは下等植物細胞にも適用可能だろう」と。




本田友人

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