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2018年10月 8日 (月)

生命・細胞・血球の起源⑧-2

( リンク )の続き
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○共生クロレラ集団から淡水カイメンの細胞新生
①淡水カイメンとクロレラ
1957年、岐阜大学・小泉清明教授によって長良川で淡水カイメンが発見されました。このカイメンは河川の流れがよどんだ、岸に近い川底に美しい緑色の群落を形成し、小石や岩の表面に付着して生活しています。千島はその組織を顕微鏡観察して極めて興味ある事実を発見しました。1957年11月7日のことでした。
カイメンが呈していた緑色は殆どその大部分が、共生しているクロレラの群体であることが分かったのです。クロレラは直径が1~2μで緑色をしており独立散在しているものや集まって直径が7~15μの集塊になっているものがあり、クロレラの集塊には核をもったカイメン細胞や、中膠細胞と呼ばれるものに至るまですべての移行段階を確認することができました。各種の細胞核は固定染色標本を位相差顕微鏡を使って観察しています。淡水カイメンを形成するものは実は共生クロレラだったのです。
②クロレラの集塊から細胞の新生
クロレラの集団は外縁が次第に円滑となり、透明な細胞質を生じ、中央部のクロレラは徐々に緑色の色素を失って溶解しあい、次いで塩基好性の核原基が現れ、染色することによって完全な核になるまでの移行型を見ることができます。核形成の初期段階では核内にクロレラが数個、未溶解のまま残っていることがありますが、時間の経過のなかで核に同化していきました。
カイメン細胞の隙間には多数の細菌が存在し、遊走したり個々のクロレラ或いはクロレラ集塊の表面に付着しています。これらの細菌類は推測ですがクロレラやクロレラ集塊の生長に栄養として役立っているものと考えられます。注意深くカイメン細胞を観察しても、細胞分裂を起こして増殖する過程は全く見ることはできないと千島は述べています。このようにクロレラの集塊からカイメン細胞が形成される過程は、カエルやニワトリの卵黄球(クロレラに相当)の集塊から間葉性細胞や赤血球母細胞が形成される過程と原則的に完全に一致したものと考えるのが妥当でしょう。
細胞形成の進行につれて、クロレラ集塊の外縁には明るい細胞質(アメーバの外肉と同じ形質をもつ)が現れて偽足を出し、完全なアメーバ運動を始めます。このような段階の細胞はカイメンの遊走性細胞又は血球に相当するものです。
ガーネットは英国産淡水カイメン(千島が観察した長良川産のものに酷似した種類)を観察し、この緑色を呈するのはクロレラがカイメンの細胞内に共生しているためだということを認めています。そして「カイメンは生物学者にとっては一つの謎であり、昔は植物と考えられていたが、明らかに動物的性質をもつものであるから動物とされている。何故なら鞭毛室の鞭毛によってカイメンの表面にある小孔を通して常に水流を起こしているからだ」と述べています。
③カイメンは動物か植物か
千島は淡水カイメンの観察範囲において、これは動物であるというより遥かに植物的であり、クロレラを主体とする植物の群体だと判断しています。確かに鞭毛室や鞭毛細胞が手間をかけたあげくにやっと見出されることがありますが、藻類には鞭毛をもつものがあり、これがカイメン組織内に多数みられたから動物の特性があるとはいえないでしょう。秋の初め頃になると多数のミドリムシ、珪藻、球菌、桿菌、その他のバクテリア類がカイメン組織中に存在するのを観察できます。これらはみな植物性のものです。もっともゾウリムシやその他の滴虫類といった動物性の虫もカイメン組織中に存在することから、カイメンは『生きたホテル』といわれています。
④芽球の形成
秋が深まり水温が低下した11月の半ば頃になると、以前にカイメン中にいたミドリムシやゾウリムシといった運動性のある原生動物は極端にその数を減らし、クロレラその他の細菌類も数が減り、反対に4個が連結した緑藻類が著しく増加し、しかもこれは肥大して長さが減り丸みを帯びた形になり、球形の緑褐色の小体となって花輪状になった集団を形成します。各々の表面はパンの断面のようになり、内部には珪藻や肥大と集合によって生じた小体や針骨を含んでいて、抵抗力を増した芽球になった越冬型になり翌春の発芽を待ちます。
⑤クロレラはカイメン細胞の共生者か。
多くの研究者たちはカイメン細胞内のクロレラは細胞内共生微生物だと考えています。たしかに、クロレラ集塊が細胞に発展する一定の段階までは共生と見られる面がありますが、これについて千島はクロレラ集塊がカイメン細胞に進化、発展するものだと確信をもって主張しています。
その根拠として、
(ア) カイメン細胞はクロレラ集塊のなかに細胞核を新生し、細胞質の分化を経て形成されるすべての移行過程を示している。
(イ) 顕微鏡下で連続観察をしていると始め分散していたクロレラが、段々集合し、カイメン細胞とだいたい等しい大きさと形をもつクロレラ集塊をつくり、細胞に変わっていく連続移行像がある。
(ウ) 淡水カイメンは冬が近くなると植物の胞子或いは果実の種子に似た芽球を形成しますが、これはカイメン細胞のほかにカイメン体腔内にある珪藻やその他の有機体によるものです。
(エ) 淡水カイメンはクロレラの群体で、そのクロレラはバクテリアに起源をもつ植物と考えられ、総合的に判断すれば、やはり動物ではなく植物とするのが妥当だと思われるわけです。




本田友人

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