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2019年3月

2019年3月18日 (月)

会話をする微生物、そして高まるチームワーク

微生物は化学物質で仲間とコミュニケーションを取っているようだ。
以下「TIME & SPACE」(リンク)より引用します。
■ ■ ■
微生物は予想以上に小さい
微生物というと、何を思いつくだろうか? 多くの人は「ミジンコ」と答えるかもしれない。でも実際にはミジンコはエビやカニの仲間。微生物に厳密な定義はないが、微生物学者はもっと小さな生き物を微生物と呼んでいる。ミジンコは1 mm程度、それに比べて微生物の中でも酵母は10 μm、乳酸菌や大腸菌などの細菌は1 μm程度。つまり、ミジンコと細菌は1000倍も大きさが違う。その比はゾウとアリくらい。
そんな小さな微生物、どうやって生きているかというと、もちろん1匹で生きているわけではない。仲間と一緒に群れを成して生きている。
集団でいるならもちろん仲間と会話をする。えっ、会話? 声を出しているの? 1 μm程の大きさの微生物にそのような巧妙な機能はない。低分子化合物を細胞の外に出して会話しているのだ。ここでは、微生物の会話に耳を傾けてみたい。
会話して何をしているのか?
多くの微生物は細胞の外に言語となる小さな物質を分泌していて、その濃度を認識する能力を持っている。そして、その濃度を感知することで周囲にどれくらい仲間がいるかを把握している。
微生物は集団となった際、少数では成し遂げられなかった機能を発揮する。例えば、病原性微生物の場合は毒素生産を、土の中の微生物だと抗生物質生産など。
会話をして集団となった際に発揮する微生物の機能は、もともと海に存在するイカの目で発見された。イカの目に存在する微生物は、1匹では光らないものの集団となった際に光りだす。このような行動は、少数のときに行うよりも、多数で行った方が効率良い。小さな微生物でも、うまくコミュニケーションを取って息を合わせているのだ。集団となれば、小さい微生物も大きな集合体となる。
微生物は会話をして、集団となった際に粘り気のある高分子化合物を作り出し、バイオフィルムという家を構築する。家の中に住むことによって、生きていく上でのさまざまなストレスから免れる。会話をすれば微生物も憩いの場を作り出す。
異なる言語を話す微生物たち
人の場合、住んでいる地域や人種が異なれば会話に用いる言語も異なる。中には複数の言語を普段使っている国もある。微生物たちも、種類が違えば言語も異なる。例えば、病原菌である緑膿菌は、3種類の言語を用いるトライリンガルだ。他の微生物も用いている言語一つに、自分たちでしか使えない言語二つ。三つの言語を巧みに使いながら、集団となった際に病原性を発揮したり、住処となるバイオフィルムを構築したりする。
もちろん複数の種類が存在すれば、言い争いもする。我々は、ある微生物が言語として用いている化学物質が、緑膿菌の会話を阻止し病原性を抑制することを発見した。つまり、病原菌を殺さなくても、会話を止めるような言葉をかければ、病原性を阻止できる。
このような魔法の言葉を見いだせば、感染症などの病気を治せるかもしれない。それだけではなく、水の浄化や環境汚染物質の分解、食品発酵の促進など、あらゆる微生物反応が制御可能となる。微生物社会では人の社会よりも種が多く、複雑でさまざまなコミュニケーションが行われている。その中で、議論して解決する術を微生物は有しているわけだから、我々人間もその術を学び、微生物をあらゆる場面で活用したい。




末廣大地

2019年3月 5日 (火)

カンブリア大爆発は眼の登場→種間闘争の激化が生み出した

以下は
『眼の誕生 -カンブリア紀大進化の謎を解く-』(アンドリュー・パーカー)からの要約抜粋
 地球上の全動物(植物,菌以外の生物)は38の動物門に分類されている。私たち哺乳類が含まれるのは「脊索動物門」で,その他には節足動物門,軟体動物門,棘皮動物門などがある。驚くべきは,先カンブリア紀(5億4300万年前よりも古い時代で,エディアカラ化石が有名)にはたった3つの動物門しかなかったのに,カンブリア紀(5億4300万年~4億9000万年前)に入るやいなや,38のすべての動物門がいきなり出揃った点にある。動物門とは生物の体の基本的な構造の分類である。つまり,これまでの地球の歴史で生まれた動物の体制は38種類のみで,それがわずか100万年の間に発生し,それ以後は生まれていないのである。それが,カンブリア紀の大進化だ。
 その大進化の原動力が「光」だった,と著者は述べる。例えば人間の感覚には触覚,嗅覚,聴覚,視覚などがあるが,その中で最も強烈な刺激にして大量の情報を伝えるのが視覚である。そして,視覚とは光を伝達媒体として伝えられる知覚である。
 実際,光は生物進化を加速させる。それは,深海と浅海の生物種差に示されている。深海の生物は大型化する傾向がある一方,生物種の数は少なく,同時に一種あたりの個体数は驚くほど多いらしい。つまり,深海には多数の生物は生きているものの,その種類は極めて乏しいのである(深海の生物は巨大化するものが多く,栄養が不足しているわけではない)。これは,届く光が少ないため,進化を進める淘汰圧が低いためではないかと,というのが著者の見解だ。同様の現象は洞窟の生物にも見られ,光が届かない洞窟には古い形質を維持している生物が多いという。
 なぜ,光が強力な淘汰圧となるのか。それは光は最も大量の情報を伝えると同時に,どんな生物も光から逃れられないからだと著者は言う。暗闇と思われる深海にも光はちゃんと届いているのである(深海の生物は巨大な眼を持つものが多いのがその証拠だ)。
 例えば,眼がなく嗅覚のみで獲物を探す捕食動物と,眼で獲物を探す捕食動物ではどちらが有利だろうか。匂い物質は空気中を拡散するため嗅覚では相手との距離や方向は大雑把にしか判らないのに対し,眼で相手を認知した場合には距離や方向は極めて正確に掴むことができる。つまり,視覚は他の感覚に比べ,飛びぬけて精度が高く,しかもその情報は瞬時のうちにリアルタイムに得られる点が異なっている。つまり,眼がある捕食動物と眼のない捕食動物では,まるで競争にならないのである。
 眼のない生物ばかりの世界に眼を持つ生物が発生した時,その生物は飛びぬけた能力を持つ恐るべき捕食者となった。眼を持つ生物が発生した時,光のない(光が意味を持たない)世界は一挙に,光に満ち溢れた世界へと変貌したのだ。要するに,眼を持つ生物が誕生したとき,光は単なる電磁波から,情報を得る強力な武器となったのだ。
 眼を持つ捕食者から逃れるためには,捕食される側も眼を備え,捕食者が近寄る姿をいち早く見つけなければ喰われてしまう。一旦そういう世界になってしまうと,光から逃れる手段はないわけだから,軍備拡張競争と同じで,眼の性能を上げ,運動能を向上させ,防御系を強固にし,より高度な神経系を持つしかなくなり,捕食者と被捕食者の競争は激化する。実際、この時期に硬い殻を持つ、岩陰や砂中に隠れる(そのために保護色を使う)等多様な攻撃防御の方法と多様な形状を持つ生物群が登場する。これが光による淘汰圧である。この競争に乗り遅れたら絶滅するしかないし,競争がいやなら深海か洞窟に逃げるしかない。
 そして,眼を最初に備えた生物こそが,カンブリア紀最初期の三葉虫だったのである。この三葉虫が眼を持ってしまったために,同時期のありとあらゆる生物が一挙に進化戦争に巻き込まれてしまったのだ。それが「カンブリア紀大進化」なのだ。




北村浩司

カンブリア爆発の引き金は、地磁気の衰弱にともなう放射線の増大か?

最近の研究によると、太陽風から生命を守っている地磁気が、エディアカラ紀後期の5億6500万年前に崩壊しかけていたことがわかったようです。
そうであれば、エディアカラ紀に続くカンブリア紀に起きた「カンブリア爆発」とは、地磁気が弱まったために地上に降り注いだ大量の放射線が、生物の遺伝子に多くの異変をもたらし、その結果、爆発的な遺伝子の多様性が生じた現象なのかも知れません。
(カンブリア爆発:現在地球上に存在する38の動物門すべてが一気に誕生した現象)
以下、「セーフ! 地球は5億6500万年前に崩壊しかけた地磁気を復活させていた」(リンク)より転載
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■地球の核は、かつてはすべて液状であったが、ある時期を境に固体の内核と液状の外核に別れた
■エディアカラ紀後期に結晶化した鉱石の格子構造の方向を調べることで、当時地磁気の崩壊が近かったことが示される
■地磁気の崩壊は、核の固形化によって回復。これらのイベントの後にカンブリア爆発が起こっている
新たな研究によると、太陽風から生命を守っている地磁気が、5億6500万年前に崩壊しかけていたことがわかりました。地球のコアはおそらくエディアカラ紀後期に固形化が始まり、時代の境目において消えそうになった地磁気を復活させていたのです。研究は1月28日付けで「Nature Geoscience」に掲載されました。
もし地磁気が崩壊すると、地上の生命は危機に直面することになります。太陽風が惑星の大気を剥ぎ取り、地表を有害な放射線で照らすことになるからです。
幸運なのは、地球のコアが固形化し始めたのがエディアカラ紀後期だったこと。固形化により、地磁気が最も弱くなった点から回復しました。5億年後の現在、地磁気は当時の10倍の大きさにまでなっています。
ロチェスター大学の古地磁気学研究者リチャード・ボノ氏率いるチームは、ケベック州セティル近くの太古の結晶を使うことで、地球内核の「核化」と呼ばれる固形化の年表を作り上げました。
地球のコアはある時期まで完全な液体であったと考えられていて、固形化が始まった時期が科学者たちを悩ませる疑問となっていました。これまでは、5億年前から25億年前の間と、広い範囲で予想がたてられていました。ボノ氏らのチームは、今回、核化が5億6500万年前から後に始まった証拠を提示したのです。
地球の内核は固体の鉄とニッケル合金でできていて、温度は太陽表面と同等の5,430℃です。固体の内核は液体の外核によって囲まれていて、外核の対流サイクルによって地磁気は生まれます。内核は鉄とニッケルのマントルが「凍って」表面に加わることでゆっくりと成長しています。その過程で熱が外核へと押し出され地磁気が強化されます。
そして、研究で重要な役割を果たしたのは結晶でした。というのも、地磁気がその痕跡を、結晶の格子構造の向きや方角に残しているからです。セルティのエディアカラ紀時代の長石と輝石を調べることで、エディアカラ紀後期に地磁気が狂い始め、現在の20倍も早く地磁気の逆転が起こったことが示されました。
これらは地磁気ダイナモの崩壊が迫っていることのサインです。しかし、崩壊する代わりに地磁気が強くなったことから、核化が始まり、磁気を強めるのに必要な燃料がダイナモに注がれたことが示されています。
ボノ氏が作った年表から、5億4100年前に生物の進化が爆発的に起こったカンプリア爆発の直前に核化が起こったことがわかります。
地磁気の減少がエディアカラ紀後期におこったということから、地球に降り注いだ放射線によって大量絶滅が起こったと考えた科学者もいます。この時期に有利な性質、例えば自由に動けたり、硬い殻を持っていた生物が、放射線から身を守ることができたためにカンブリア紀の初めに栄えたというのです。
ボノ氏らも、この推論的一致についても言及していますが、カンブリア爆発と弱まった地磁気の間の関係は、広く同意を得られたものでは無いことを強調しています。
地磁気の強さが生命の進化に影響を及ぼしたのか、あるいはどのように及ぼしたのかを理解するにはさらなる研究が必要となるでしょう。内核の年齢が明らかになったことは、その複雑なパズルを埋める重要な1ピースです。
研究者達は慎重な立場をとっていますが、地磁気が弱まったために地上に降り注いだ放射線が、生物の遺伝子に多くの変異をもたらし、爆発的な遺伝子の多様性をもたらしたことで、カンブリア爆発が起きたと考えるのは面白いですね。バーチェス頁岩の奇妙な生物たちが、放射能によって生まれたという空想は楽しいですから。しかし真実は地道な研究による検証を経なければわかりません。今後の研究に期待です。



斎藤幸雄

2019年3月 2日 (土)

植物は音波を感知する聴覚機能を備えている

植物は“耳”という器官を備えていませんが、マツヨイグサは花びらによって、ミツバチの羽音(音波)を感知し、受音して数分後には蜜の分泌量を増やすことが確認されました。
これによりミツバチの来訪・滞在確率を高め、花粉を媒介してもらい次世代を残す可能性を高めているようです。
周波数を識別して作用していることから、“脳機能”を担う仕組みも存在しているのではないでしょうか。
◇植物は、耳がなくても聞こえている。花びらでミツバチの羽が立てる音波を感知(イスラエル研究)リンク
<カラパイア>より
////////↓↓転載開始↓↓////////
植物に耳はない。だが聞くべき音がきちんと聞こえているという。
人間や動物のような耳はもたないが、音を感知することができるようだ。
イスラエル、テルアビブ大学の研究者が行った研究によると、マツヨイグサ(学名 Oenothera drummondii)は花びらでミツバチの羽が立てる音波を感知しているという。
ミツバチが飛び回る羽音を聞いて数分もすると、ミツの分泌が平均20パーセントも増えることが分かったのだ。
○植物は花びらで音を聴いている
実験では、650以上のマツヨイグサに対して、静寂、3種の周波数、録音したミツバチの羽音を聴かせて、その反応としてミツの分泌がどのように変化するのかを計測した。
その結果、ミツバチの羽音とそれに似ている低周波数の音を聴いたマツヨイグサには、ちょうど3分後にミツの分泌配合に変化が生じたのである。
一方、静寂と高・中周波数の音では変化が見られなかった。
またマツヨイグサの花びらを取り除いて、先ほどと同じことをする実験も行われた。
すると、ミツの分泌量はちっとも変わらず、花びらがまさに耳の役割をしているらしいことが窺えた。
○受粉のチャンスを高めるための進化なのか?
甘いミツがたくさん出れば、それだけミツバチはそこに長く留まることになる。するとミツバチに花粉が付着する可能性も高まる。
もしかしたらこれに味をしめたミツバチがまた戻ってきてくれるかもしれない。
これらのことは、マツヨイグサが受粉を成功させられるチャンスを高めてくれるかもしれない。
だが、このミツの増量はその目的に適うぴったりのタイミングで起きなければならない。そして、たしかに完璧なタイミングで起きているようだ。
また植物が音波の振動をキャッチできることは、花がボウルのような形状である理由も説明するかもしれない。つまり音を捉えやすくするためだ。
「植物は動物とたくさん触れ合います。動物は音も立てるし、ノイズを聞きもします。だから植物がコミュニケーションのために音を使わないなんて不適応でしょう。」(リラス・ハダニー氏)
○植物にはさまざまなセンサーがある
この研究はまだ査読を受けておらず、音の振動がどのように解読されて、ミツの分泌を促すのかも分かっていない。それでも、最初のステップとしてはとても興味深い発見だ。
これまで接触や日光に対して植物が反応することは知られていた。今度はそこに音が加わったのである。
・ニンゲン、触るな!植物は触られるのを超嫌う。驚くべき防衛反応が明らかに(オーストラリア研究) : カラパイアリンク
 この研究チームは今後、ほかの音や人間などの動物に対して、植物がどのように反応するのかを調べる予定だそうだ。
////////↑↑転載終了↑↑////////




稲依小石丸

2019年3月 1日 (金)

共生細菌が宿主昆虫をメスだけにするしくみを解明-オスのX染色体を切断して細胞死を引き起こす-

以下引用
(リンク)
―――――――――――――――――――――――――――――――――
■研究の社会的背景
微生物の高度な生物機能は、食品生産、医薬品開発などのさまざまな分野で利用されてきた。近年、多様な微生物の中でもとりわけ、動物や植物と共生して高度な生物機能を発揮する共生微生物が未探索の生物資源として注目されている。昆虫類もまた、生物多様性の中核を担う動物群として、その多彩な生物機能の開発や利用が期待されている。
昆虫類と微生物の共生関係はしばしば見られるものであるが、なかでも共生微生物が感染することにより、宿主昆虫がすべてメスになる、宿主昆虫の性分化や生殖様式が劇的に変化するなど、いわゆる生殖操作という現象は、基礎生物学的に興味深いだけでなく、有用昆虫の雌雄別の生産や天敵農薬の効率的生産などの技術開発につながる可能性もある。しかし、その具体的な分子・細胞レベルの機構についてはまだ不明の部分が多い。
■研究の内容
キイロショウジョウバエのメスが産む卵からは、通常はオスとメスがほぼ半々の割合で発生するが(図1A)、共生細菌スピロプラズマに感染したメスの産む卵からはメスのみが発生する(図1B)。
スピロプラズマ感染メスの産む卵の孵化率は半減しており、オス卵が殺されてメス卵のみが孵化するオス殺しが起こっていることがわかる。卵内の胚を調べてみると、メス胚は正常なのに対し、オス胚全体にアポトーシスというタイプのプログラム細胞死が起こっており(図2A、B)、これがオス殺しの直接の原因であることが示唆された。
なぜオス胚のみにアポトーシスが起こるのかを調べるために、次世代シーケンサーを用いて、スピロプラズマ感染オス胚、感染メス胚、非感染オス胚、非感染メス胚における発現遺伝子を網羅的に解析したところ、感染オス胚でDNA損傷/修復関連遺伝子群およびアポトーシス関連遺伝子群の発現が顕著に上昇していた。
先行研究において、がん抑制遺伝子として有名なp53遺伝子が、DNA損傷に応答してアポトーシスを誘導することが知られていた。そこでp53遺伝子を欠失したハエにスピロプラズマを感染させてみたところ、オス胚におけるアポトーシスは抑制された(図2C)。すなわちスピロプラズマ感染オス胚では、DNA損傷を引き金としてp53経路を介した細胞死が起こっている可能性が示された。
 次に、スピロプラズマに感染したオス胚のどこにDNA損傷が生じているのかを調べるために、染色体上の DNA損傷部位を可視化してみたところ、オスのX染色体上に集中していることがわかった(図3A、B)。細胞分裂の過程を観察したところ、オスのX染色体はうまく娘細胞に分配されず、頻繁に架橋や切断が生じていることが観察された(図4A、B)。
それではどのようにスピロプラズマはオスのX染色体を識別しているのか。ショウジョウバエのオス(XY)はメス(XX)の半分しかX染色体がなく、遺伝子発現量を倍加させる活性をもつタンパク質-RNA複合体である遺伝子量補償複合体がX染色体の全域に結合することにより、遺伝子発現量を調節していることがわかっている。試しにショウジョウバエのオス胚における遺伝子量補償複合体の形成を妨げたところ、スピロプラズマ感染オス胚におけるアポトーシスが抑制された。さらにショウジョウバエのメス胚において、遺伝子量補償複合体を強制的に発現させたところ、スピロプラズマ感染によりメス胚も死ぬようになった。
つまりスピロプラズマは、遺伝子量補償複合体が結合したオスのX染色体を認識してDNA損傷を起こし、胚発生の過程でp53経路を介した細胞死をオスに特異的に誘導している。その結果としてオス卵がすべて死亡し、メス卵のみが正常に発生する。
■今後の予定
 今回スピロプラズマによるオス殺しのしくみを解明したが、スピロプラズマが遺伝子量補償複合体の結合したX染色体を認識してDNA損傷を起こす具体的な分子機構は未解明である。DNAや染色体に結合性のある毒素やエフェクター分子、標的構造依存性のDNA分解酵素などが候補として考えられるが、スピロプラズマのゲノム解析、スピロプラズマ感染ショウジョウバエの代謝産物解析などから、その分子実体の解明に取り組んでいく。
 有用昆虫はオスとメスで産業応用的な価値が異なるものが少なくない。たとえば寄生バチ類は天敵農薬として広く利用されるが、害虫の体内に産卵して殺す能力をもつのはメスだけなので、メスを選択的に生産できると都合がよい。本研究の成果を応用することにより、昆虫を雌雄別に生産できる技術開発につながることが期待され、そのような観点からの研究も展開していく。



穴瀬博一

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