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2019年4月16日 (火)

生物は祖先に由来しないレトロウィルスによる外来遺伝子が組み込まれており、それには精子も関与している?

○遺伝子の水平伝播
 人間のDNAの一部は我々の祖先に由来しない、”外来”遺伝子が組み込まれている。この発見は、動物の進化が先祖から受け継がれる遺伝子のみに依存するという従来の見方を一変させる。これら異種の遺伝子が取り込まれることは「遺伝子の水平伝播」と呼ばれている。
 人間の遺伝子にはイントロン(介在塩基)がある。塩基に組み込まれていながら全くタンパク質合成のために働かない遺伝子である。そしてレトロウイルスの一種が持つ遺伝子と全く同じ配列が一部のイントロンに存在するという事実が判明した。
これはレトロウイルスは、生物に感染するとその生物のDNAの中に自らの遺伝子を送り込む(逆転写)という特徴を持っているからである。
 
他の生物のDNAのなかに自分の遺伝子を送り込むためには逆転写酵素(自分の遺伝子を他の遺伝子に組み込む酵素)が不可欠であり、主にRNAがその特徴を有している。
 
 単細胞生物においては、耐性菌の出現などの例に見られる微生物の急速な進化を説明すると考えられている。また霊長類の外来遺伝子については50個までがウイルスに由来していた。更に菌類由来の遺伝子も見つかっている。
哺乳類のゲノムには、過去に感染した内在性レトロウイルス遺伝子の断片が多く存在している(全ゲノムの8%)。それらの内在性レトロウイルス遺伝子は哺乳類の胎盤獲得に働いているだけではなく、機能性の高いウイルス遺伝子と順次置き換わることができる。
研究によれば様々な種の哺乳類の胎盤獲得におけるレトロウィルスは起源をそれぞれ異にいるという。

この「遺伝子の水平移動」は、多細胞生物間においても見られる。植物のつくった遺伝子が種の壁を超えて動物に移動した実例もみつかっている。ウミウシの一種は動物なのに葉緑体をもっていて光合成ができる。このウミウシはもともと海藻が持っていたDNA自分の中に組み込んだ。また動物がかつて獲得した目のもととなる遺伝子は、最初に植物がつくり、それが動物に水平伝播したと考えられている。
共生関係にある多細胞動物と細菌は遺伝子の水平伝搬が広く見られることがわかって来た。原核生物が内部共生してミトコンドリアが進化したように、細菌が多細胞動物と内部共生を行っている例も数多く見つかっている。そして、 細菌によっては生殖細胞を好んで宿主にする細菌がある。これらにより、生殖細胞への侵入を通じて遺伝子が水平転移したのではないかと考えられる。

○精子の中心体も水平転移を媒介している
親の形質にはないものが子供に現れる…昔の人々は、この不思議な現象を先夫遺伝(テレゴニー)によるものと考えた。これは、ある雌が以前ある雄と交わり、その後その雌と別の雄との間に生んだ子に、前の雄の特徴が遺伝する、という説、理論。つまり未亡人や再婚した女性の子は先の夫の性質を帯びる、という考え。19世紀後半までは広く信じられてきたが迷信として退けられてきた。
しかしハエでは、テレゴニーに似た現象が起きることがわかっている。実験では身体サイズの大小の差がはっきりつく2グループのオスのハエを選んで用意し、メスのハエとの交尾を記録した。すると例えば異なるオスと2回の交尾の後に2回目で受胎した場合、驚くことに孵った子どもは最初に交尾したオスのボディサイズに近くなることが判明したのだ。

人間においても類似の事例が報告されている。胎児のDNAが妊娠によって母親の胎内に残る事が証明された。また胎児のDNAが脳関門を通過し、母親の脳内に残る事が珍しくない事も明らかにされた。同じ年には以前の妊娠で母親の体に入った胎児のDNAが年下の兄弟の中にも入る事を指摘された。
 
上記の事実はテレゴニーを説明できる分子生物学的メカニズムが提唱されている。]そのメカニズムとは精子による女性生殖器内の体細胞への侵入、妊娠による胎児の細胞を経由したDNAの結合、精子から放出されたDNAの母体体細胞への取り込み、母体血中に存在する胎児のDNAによる影響等である。

特に注目されるのが精子の関与である。通常精子は卵子にたどり着いて受精し、減数分裂を繰り返してそれが赤ん坊になる。
そしてその細胞分裂の司令塔的役割を果たしているのが精子の「中心体」という部分である。中心体は、RNAとタンパク質の複合体である、RNP(リボ核酸タンパク質)という物質で構成されている。水平伝播する遺伝子の提供元に細胞が挙げられていると言う事は、当然生殖細胞からの遺伝子の水平伝播も起こり得るという事だ。
今の通説では受精できなかった精子は膣内に吸収され、たんぱく質として膣内で吸収されるだけということになっている。もし逆転酵素を有するRNAが精子に含まれていたとすれば、RNAは水に溶けやすい性質を持っているという生物学的事実との相乗効果で、膣内に無造作にばらまかれた一億匹の精子たちのRNAは単に膣内で吸収されて死ぬのではなく、ウイルスのように膣内に溶け込んで遺伝子を女性のDNAに逆転写酵素で組み込むことが出来るのではないか。
 
海外の研究論文によると、精子にはRNAの逆転写能力がある。それだけでなく精子には体細胞に侵入する能力まであると言う。哺乳類の胎盤の形成にはレトロウイルスが関与しているし、精子の性質はこれまで考えられていた以上にウイルスに近い。
 それもその筈でDNAの中にはレトロウイルスが潜んでいる。生物とはウイルスの「上位互換」であり、精子にもウイルスと同様にDNAを水平伝播する能力が備わっているのである。

 

 

 

北村浩司

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