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2019年7月15日 (月)

淡水魚と海水魚が共存できる好適環境水

適環境水とは、淡水にわずかな濃度の電解質を加えてできる、淡水魚と海水魚ともに生育できる不思議な水。例えば、海水に含まれるのは約60の成分だが、好適環境水は、ナトリウム、カリウム、カルシウムという必須の3成分だけを、濃度を薄くして作る。塩分濃度だけに注目すると海水の約4分の1。

この中で、マグロ、アジなどの海水魚と、金魚などの淡水魚が共存でき、その水で水耕栽培の小松菜が育つ。そこでは、魚の成長も早く、臭みもなく味もよいものが育つ。

その上、魚のストレスの指標値も海水飼育の場合の40%程度と低い。また、海水の塩分濃度が高すぎるため、海水魚は鰓で浸透圧を調整しているが、好適環境水では、その調整なしで生きていることが分かった。このような好適環境水中でのストレス低減が、成長の早さの原因と考えられている。

また、この発見は養殖する場所を選ばす、山の中でも海の魚が養殖できるというメリットがあり、高齢化対策も含めた過疎地の新しい産業としての可能性がある。

その上、このネットワークが広がれば、海外で養殖し、日本に運んで販売するという、現在の過剰なエネルギー消費(過剰なフードマイレージ)を抑えることもできる。いわば地産地消を海水魚についても可能にすることができる。

もう一点は、『深海は真水?!(346641)』とも絡み、深海が真水や塩分濃度の低い好適環境水であるとしたら、魚類の進化史も見直す必要があるということになる。

まず、好適環境水に現在の魚類も適応できているということは、進化の初期に獲得した機能は、好適環境水と同じ水の組成を外圧として適応したものであり、その機能を基盤に様々な機能が、その後の外圧変化の中で塗り重ねられたと考えられる。

そして、調査は必要だが、4億5千万年前の原始海水は淡水でも海水でもなく、塩分濃度が薄く、その中で多くの生物が生存していたという説がある。そうであれば、従来の塩分の濃い海水に適応した魚類⇒腎機能を強化して淡水に適応した魚類へという進化の前に、

①原始の好適環境水に適応した魚類から

    ↓↓    ↓↓
    ↓↓    ①’⇒好適環境水適応のままの深海適応した魚類
  
 ↓↓ 
    ②⇒高塩分の海水に鰓機能を強化し適応した魚類
          ↓↓
         
②’⇒腎機能を強化し淡水に適応した魚類
 
 
の①①'と②②’の二つの進化系列があり、今でも深海魚はストレスの少ない深海の好適環境水の中で生きているため、食料も酸素少なく、光も届かない海底で生きていけること、そして、深海魚は高塩分の表層海水中では生きられないこと、などが考えられるのではないか?

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陸上漁業の可能性~魔法の水・好適環境水を追う~(リンク)より引用

私が着目したのは、4億5千万年前の原始海水でした。当時は淡水も海水もなく、原始海水は今より非常に塩分濃度が薄く、その中で多くの生物が暮らしていたと考えられています。

それをヒントに、魚にとって必要な成分は何かを調べました。現在の海水は約60成分の元素で構成されていますが、消去法によって徐々に海水の成分をスリム化していきました。すると、最終的に残ったのは本当にわずかな成分で、我々はその水で魚を飼育することに成功したんです。飼育実験を重ねていくと、好適環境水の中で育てたほうが、海水と比べて魚が大きくなり、成長も早いことがわかりました(図①)。

 さらに、試験を繰り返す中で、海水で育てた魚には魚病が発生し全滅することが何度もありました。しかし、好適環境水のほうは病気が発生しなかったのです。この魚病が発生しない点が、好適環境水の大きな特徴だと思います。
(中略)
 研究の社会的背景として、とくに養殖漁業は、閉鎖された湾内において高密度で魚を育てますので、病気が一度発生してしまうと病原体が海域全体に広がり、魚が大量に死んでしまうという問題があります。その際には、抗生物質という薬を魚の餌に混ぜて病気を防いでいます。
 
さらに漁業が養殖に傾向してしまった背景としては、1977年に200海里漁業水域(排他的経済水域)が設けられて、漁場が縮小せざるをえなくなったことも影響していると思います。また、漁業者はより生産性を向上させるため、高密度に養殖を行うこととなり、結果、残り餌による海底のヘドロ化と水質の悪化につながり、ますます魚病のリスクは高まりました。今や海は安全なものといえません。ところが好適環境水だと魚病の危険性が低く、「海上の養殖」とくらべ「陸上の養殖」のほうがメリットが大きいと考えたのです。

 海は漁業権などの制約が多く、新しい技術、新しい会社が参入しにくいのです。海水をくむのにも許可がいるんですよ。だから我々は海と別れを告げて山に注目しています。山では水資源は豊富ですし、土地も安く場所によっては温泉水がとれるところもあります。

 最大のメリットは、安心・安全な産地のはっきりした魚を生産することができる。しかも、一つは魚のブランド化がはかれるんです。例えば、「那須マダイ」や「那須トラフグ」のように、そこの清らかな水を使って生産が可能になるわけです。今では考えられない地域のブランドで、魚の商品化が可能になるのではないかと考えています。
(中略)
好適環境水での陸上養殖は、水温の維持に大量なエネルギーを使います。石炭、重油などを使用すれば二酸化炭素が多く排出され地球温暖化につながります。そこで、今は日本の地熱に注目しています。世界中でもまれな火山国ですから、その地熱を使わない手はない。好適環境水を実用化するためには、エネルギーコストをいかに低く抑えていくかが重要になります。
(中略) 
また、食料輸送の観点からも二酸化炭素を出さない工夫が重要です。サバを例にすると、日本でとれたサバが東南アジアのタイに行き、タイで缶詰に加工されてまた日本に帰ってきます。人件費を安くするためにこのようなことが行われています。みなさんは大変なエネルギーの無駄遣いと思いませんか。

 

 

 

本田真吾

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