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2019年7月25日 (木)

深海熱水系は「天然の発電所」~電気生態系が存在するかも知れない

沖縄トラフの深海熱水噴出域において電気化学的な現場測定を行った結果、深海熱水噴出域の海底面で発電現象が自然発生していることを明らかになったそうです。(リンク

以前は、地球上の生物はすべて、太陽の光エネルギーを利用して有機物をつくる植物を一次生産者とする「光合成生態系」に属していると、考えられていましたが、1977年、地球内部から湧き出す海水に含まれる硫化水素などの化学物質のエネルギーを利用して有機物をつくる微生物がが深海で発見され「化学合成生態系」の存在が明らかになりました。そして今回、深海の熱水噴出孔周辺で、地球内部の化学エネルギーと熱エネルギーから変換される電気エネルギーを利用した、第三の生態系である「電気合成生態系」が存在する可能性がか浮かび上がってきました。


 物質は原子からできていて、金属の原子は自由に動ける電子を多数持っています。その電子が流れることで電流が発生して、電気が起きます。たとえば電解液に浸した電極に豆電球をつなぐと、導線にたくさんの電子が流れて電球が光ります。

近年、その電子の流れが起きやすい条件が深海熱水噴出域にそろっていることがわかってきました。熱水は硫化水素など電子を渡しやすい物質が多く、海水は酸素など電子を受け取りやすい物質を多く含みます。さらに、深海熱水噴出域でできる円柱状のチムニーや周辺の海底は熱水成分が析出した硫化鉱物などでできていて、電気をよく通す性質があります。

現在、深海熱水噴出域の主な一次生産者は「化学合成生物」と考えられています。熱水に含まれる硫化水素などの化学物質を微生物が利用して有機物を作り、その有機物を生物が摂取するという生態系です。その化学合成生物の生息範囲は、熱水の漂う範囲に限られていました。

一方で近年、電気を食べて有機物を合成する電気合成生物の存在が明らかになりつつあります。今回明らかになった深海熱水噴出域での発電現象は、そこに電気合成生物が生息する可能性もあることを示し、発電は広範囲にわたるため、電気合成生物の量は莫大で、その電気合成生物を基盤にした生態系が存在するかも知れません。熱水噴出孔は地球で最初の生命の誕生した場所といわれています。その生命の誕生には電気反応が関係した可能性があり、この研究はその生命の誕生の解明を紐解く重要な手掛かりとばることが期待されます。

 

 

 

斎藤幸雄

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