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2019年8月 7日 (水)

1週間で進化の系統を再現する「胎児の世界」が示す人間の可能性①

1週間で進化の系統を再現する「胎児の世界」が示す人間の可能性
リンク)より転載

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■自分の祖先は魚類や爬虫類だったことを思い起こさないと──インフォメーションとインテリジェンス《その4》

(前略)

さて、生物進化の長い歴史が重層的に埋め込まれているのは、脳だけではない。ヒトを含むすべての動物のからだには、30億年前にこの地球で生命が誕生して以来の進化の歴史が「生命記憶」として埋め込まれ受け継がれていると、三木成夫『胎児の世界』(中公新書、83年刊)は述べている。

●固体発生は系統発生を繰り返す

地質年代で言う始生代に多細胞動物の進化が始まり、原生代の海に原初の無脊椎動物が現れるが、それはホヤのようなもので、体軸は垂直で上に向かって口を開けた腸が尾の部分で海底に着地しているほとんど植物に近い姿をしている。

ところがそれが、波に揺られて口を開けて食物を待つだけでは飽き足らなくなり、横倒しになって海底から離れ、獲物に向かって泳ぎ寄っていくようになり、4億8000万年前の古生代シルリア紀に今のヤツメウナギのような最初の脊椎動物が誕生する。それが1億年かけて鰭と顎をもつ魚類に進化しさらにその一部は古生代終わり近くに両生類に変わる。次の中生代は恐竜≒爬虫類の時代で、その終わりに哺乳類が一挙主役に躍り出て新生代を迎えた……。
という、魚類→両生類→爬虫類→哺乳類という系統発生の進化史の概略は誰でも知っているけれども、その痕跡が実は、我々1人1人が母親の胎内に宿ってすぐに成長し始めて10カ月後に誕生するまでの胎児の個体発生の過程に、ものの見事に再現されているという驚天動地の事実を説いたのが三木前掲書である。「胎児は、受胎の日から指折り数えて30日を過ぎてから僅か1週間で、あの1億年を費やした脊椎動物の上陸誌を夢のごとくに再現する」。


受胎32日目、ということは母親が月経が来ないので妊娠したのかと気づく頃であるけれども、その時の胎児はアズキ大で、正面から見た顔は鰓(えら)を持つ魚である。2日後の34日目になると鼻や唇の形成が始まり、これが魚類から両生類への過渡なのだろう。さらに36日目には真横を向いていた瞳が正面を向くようになると共に、鼻が1つにまとまり、その上に脳が発達して前頭葉が顔にのしかかってくる。

38日目には鼻と両眼が真横に並び、その下の口もほぼ完成して、獅子舞の獅子頭そっくりの原始哺乳類の域に達する。そして40日目となると、これはもうヒトそのものである。

三木は「あとがき」で、この胎児の世界を公開することに躊躇いがあったと述懐している。「やはり人間社会には『見てはならぬもの』があろう。母胎の世界はその最も厳粛なものの1つである。……やはりそれは、永遠の神秘のかなたにそっとしまっておくというのが、洋の東西を超えた人情の常ではなかろうか」。と言いながら「しかし」と思い直して本書を上梓したのは「ユダヤ・キリスト教の人類至上主義(ヒューマニズム)に象徴される、あの根強い人間精神の存在……そうしてさらに、同じくいわゆる『左脳』の所産である自然科学が、ここでいう〔母なる海の〕『おもかげ』──直観の世界の排除にひたすら努め、そうした機械論に明け暮れてきたこと」への憂慮のためである。

古代の海がそのまま母親の羊水となり、その中で脊椎動物5億年の進化史がわずか1週間で再現されることを通じてしかヒトが生まれてこないことを知ることが、人間観・文明論の出発点でなければならない。

(その2へ続く)

 

 

 

紀伊谷高那

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